期待したとおり、リコーイメージング初のフルサイズデジタル一眼レフ「PENTAX K-1」(以下K-1)は質実剛健と斬新さが同居したすごく面白いカメラであった。格闘技はしないんだけど、手にしてみると小ぶりな割にずしりと重く筋肉質でがっしりしてて、なるほど強そうである。
防塵防滴耐寒仕様で、頑丈かつ質実剛健なPENTAXブランドにふさわしいデジタル一眼レフなのだ。
でも同時に「ちょっと変」(≒「かなり個性的」)な斬新機構も満載である。思い付いても普通はやらんだろ、的アイデアが各所にあり、それもまたPENTAXらしさなのだ。
どちらから紹介しようか――。やっぱり“変”な方からだよな、というわけでクネクネ動いたり光ったりする新機構から見ていこう。
ちょっとごろんとしたボディーのK-1。基本的にはPENTAXのハイエンド機をベースにフルサイズ化し、個性的な機能を追加したカメラだ。深すぎないグリップは手に馴染むし剛性感もしっかりしているし、前面と背面にダイヤル、さらに右肩にもダイヤルがあってファインダーをのぞいた状態で必要なコントロールがさっとできる。
ボディー自体は高さも幅も抑えられており、フルサイズとしては非常にコンパクトだ。でも重さはそれなりにある。「ずっしり感」という表現が合う。
ファインダーは当然視野率100%で見栄えはいい。
さすが伝統的な一眼レフなのであるが、普通じゃないのは背面のモニターだ。
動くのである。クネクネと動くのである。上下にチルトしたり横に開いて回転するバリアングル式は珍しくないが、くねくね動くモニターは初めて見た。撮影時にモニターがこんな風になるのだ。
具体的には「上へのチルト」+「4本のステー」の2つの機構が組み合わさっており、4本のステーはそれぞれ独立して動くので、自由に角度を付けたり回転させたりできるのだ。
ステーで動くのは上下に44度、左右に35度。常にモニターが光軸から離れないため、構図を決めやすいのがいい。縦位置で撮るときも35度動けばハイアングルやローアングルも使いやすい。
写真で見た方が分かりやすいだろう。
クネクネである。角度を大きく変えることはできないが、実用性はすごく高い。単にクネクネして面白いだけじゃないのだ。繰り返しになるが、モニターを動かしても光軸がずれなくて撮りやすい。
でも本当の狙いは、三脚利用時の利便性じゃないかと思う。
最適な構図でセッティングしたとき、カメラの位置が低かろうが高かろうが、モニターが動けば無理な姿勢でファインダーをのぞかなくていい(特にマクロ撮影時)。屋外ではモニターが光って見づらいときも、角度を自由に変えることでそれを防ぐことができるし、三脚を自分の正面に立てられない苛酷な場所での撮影にも対応できる。
さらにボタン1つでモニターの明るさを2段階上げられる。晴天時の対応だ。一眼レフでも三脚利用時はライブビューが便利なのである。
もう1つK-1が考えているのは夜間の利用。星空や夜景などを撮るときだ。
夜間は背面モニターがまぶしくてその光が邪魔になることも多い。そんなときのために、モニタの明るさを2段階落とすこともできるし、フレキシブル機構を使って、光が周りの迷惑にならない方向へモニターを向けることもできる。
ただ、ライブビュー撮影のAF性能はというと、PENTAXの一眼レフは昔からそれほど得意じゃない。
顔検出はミラーレス機などに比べるといまひとつ粘りに欠けるし、AF速度もAF用モーターを内蔵するレンズならまだいいが、ボディー内モーターでAF駆動するレンズ(まだ多いのだ)だと遅く感じる。
普段はファインダーで、三脚でじっくり撮るときやアングルに凝りたいときはライブビューで、と使い分けるのがいいだろう。ライブビューでの撮影がメインという人はミラーレス機が(一眼レフがいいという人はキヤノンの「デュアルピクセルAF」対応機の方が)ライブビュー時の動作が軽快なのでよいかと思う。
夜間撮影を念頭においた面白い機能として触れておきたいのが、操作部アシストライト。真っ暗な場所で星空を撮るときなどは、もう真っ暗なので操作系はよく見えないし、レンズ交換もしづらいし、メディア交換もしづらいしと懐中電灯は必須である。
でもK-1なら大丈夫。光るから。暗闇でもこんな風に。
まあ、暗闇での撮影や夜景撮影をしない人には単なるギミックだけど(ちなみにデフォルトではオフ)、星空や工場夜景を撮る人にはうれしい機能な気がする。
星空に関しては、GPSと手ブレ補正機構を利用してセンサーを動かすことで天体の追尾撮影にも対応している(アストロトレーサー)。マニアックな機能である。
(モデル:長澤佑香/オスカープロモーション)
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