9月16日に発売を控えた「iPhone 7/7 Plus」。IP67の防水/防塵(じん)性能、イヤフォンジャックの廃止、FeliCaの搭載、ホームボタンのTaptic Engine化など、多くの点で従来機から変更があった。その中でも私が注目しているのは、iPhone 7 Plusのデュアルカメラだ。広角カメラと望遠カメラを1つずつ載せた構成はユニークで興味深いが、公式サイトの説明を読んで「ある違和感」を覚えた。
上記画像には「2倍光学ズーム」と表記されているが、カメラが好きな人なら「光学ズーム」という説明に疑問符がつくのではないだろうか。
iPhone 7 Plusのデュアルカメラは、発表イベントでのフィル・シラーの発言によると広角側が35mmフィルム換算で28mm、望遠側がその2倍となる56mm相当のレンズという説明だった。つまり、2つの単焦点レンズをシーンに応じて使い分けるということだ。
一方、通常のカメラでは1本のレンズ内にある構成レンズの間隔を前後させることで、広角端から望遠端まで光学的に無段階な焦点距離の変化を可能にしている。これができるレンズをズームレンズといい、焦点距離が変化しないレンズを単焦点レンズという。例えば、コンパクトデジタルカメラで「光学20倍ズーム」といえば、広角端が35mmフィルム換算28mm相当から、望遠端560mm相当まで無段階に変えられる性能のことをいう。
こういったカメラの知識を前提にiPhone 7 Plusのデュアルレンズカメラを見てみると、「2つの単焦点レンズが載っているだけなのだから、広角側28mmと望遠側56mmの間の焦点距離は光学的には埋められない」ということに気付く。無段階な焦点距離の変化を「光学n倍ズーム」と一般的に呼ぶことから考えて、2つの焦点距離しか撮影できないカメラを「光学ズーム」と呼称するのは従来のカメラユーザーからすると「それは違うよ!」と言いたくなるのだ。
もっとも、無段階ではない光学ズームもあることにはある。「ステップズーム」と呼ばれるもので、ズームレンズをカメラのソフトウェアが決めた焦点距離に順に合わせていく形式のズームだ。例えば、28mm→35mm→50mm→85mmなど、単焦点レンズで慣れ親しんだ焦点距離に簡単に合わせることができる。iPhone 7 Plusのデュアルカメラも、28mm→56mmと2つの焦点距離間をステップするのだから、「光学2倍ステップズーム」という表記がより正しいと、カメラオタクの端くれである筆者は考える。
だが、「光学2倍ステップズーム」と書いた場合「ステップってなんやねん」と思う方も多いことだろう。より短い言葉で表現するのがキャッチコピーなので、正しさばかりを追い求めるとかえって多くのユーザーにとって分かりにくくなることもある。「2倍光学ズーム」は、正確さよりも分かりやすさをAppleが重視した結果の産物かもしれない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR