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九州最西端の地 交通安全を祈願し続ける発明家 金山さん(1/3 ページ)

» 2016年11月02日 06時00分 公開
[金原みわITmedia]

 かつて「交通戦争」と呼ばれた1970年代から比べて、日本の交通事故は減少傾向にある。しかしいくら減ったといえど、なかなかその数がゼロになるわけではない。ではどうすれば良いか。独自の視点で交通安全に一念発起した男がいた。

 「1個作ったら次は何作ろうかと、毎日暇がない。1個作ったら、もう1個と作る。壊れちまったら、また作る」

 そう話すのは、このド派手なモニュメントの作者・金山さんである。

連載「孤高のD.I.Y.」

世の中には、作らずにはいられない人たちがいる。役に立つとか評判になるとかを超越して、“自作”せずにはいられない人たちが。そんな人たち自身と、彼らが作ったものを、ライターの金原みわさんが追いかけます。

金原みわ

珍スポトラベラー。全国の珍しい人・物・場所を巡り、レポートを行う。都築響一氏主催メルマガ『ROADSIDER’s weekly』、関西情報誌『MeetsRegional』、ウェブメディア『ジモコロ』にて連載中。著書『さいはて紀行』(シカク出版)発売中。

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 ここは九州西北端の長崎平戸。周囲を美しい海に囲まれた平戸は、古くはオランダやポルトガルとの貿易港として栄えた。今でも当時の名残で、キリシタン文化が至るところに残っている。

 観光地としても人気があり、平戸島は閑静な風景とは裏腹に交通量が多いように見える。そんな平戸で、どうして金山さんは、この不思議な人形達を作り続けるのだろうか。

――作り出したきっかけは?

 「交通安全のために作ったのが目的っちゅうか。この辺は事故が多かったからね。最初の方につくったのは、この“犬のおまわりさん”かな」

自転車に乗った犬のおまわりさん

 「この“ネズミちゃん”も結構最初の方に作ったよ。なかなか、かわいい顔してるでしょう」

金山さんの世界を通した“ネズミちゃん”

――どうですか、交通安全への効果は?

 「それがねえ、これを置きだしてから、この交差点では事故がないんだよ」

――すごい!

 なんともいえない愛らしい見た目の交通安全モニュメント達。確かに何も知らずにここを通る人は「えっ、ちょっと、あれ何?」とスピードを落としてしまうこと間違いないだろう。その効果も、しっかりと反映されているようだった。

――目を引くものばかりですもんね。こうやってみると、交通安全と書かれていない人形もあるようなのですが?

 「こんな風にいろいろ作っていたら、島の人から要望があってね、港に飾る用に作ってって。これも祭りの時に港で飾ったのを、持って帰ってきたの。ほらなんていったっけ、これ……」

皆知ってるアレだ

――メカメカしくて非常にリアルなアレですね! これの素材は鉄ですか?

 「いやいや、そんないいもの使わないよ。ほとんど買ったものはない。全部もらいもんとか、拾いもんとか。みんな持ってくるのよ。なんか作れんかね〜って」

 「できるだけお金かけないようにってね。プラスチックの容器をつかってたりかな。これなんか、ほら、あの海で浮いているブイ。あれが捨てられてたのを拾ってきたの」

アレが
こうなるのかー

 「特にこっちの、この足の部分はね、自分でもよく考えたと思う。なにを使ってると思う?」

――うーん、つるっとした素材で……分からないな。

 金山さんは不敵に笑ってこう言った。

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