かつて「交通戦争」と呼ばれた1970年代から比べて、日本の交通事故は減少傾向にある。しかしいくら減ったといえど、なかなかその数がゼロになるわけではない。ではどうすれば良いか。独自の視点で交通安全に一念発起した男がいた。
「1個作ったら次は何作ろうかと、毎日暇がない。1個作ったら、もう1個と作る。壊れちまったら、また作る」
そう話すのは、このド派手なモニュメントの作者・金山さんである。
世の中には、作らずにはいられない人たちがいる。役に立つとか評判になるとかを超越して、“自作”せずにはいられない人たちが。そんな人たち自身と、彼らが作ったものを、ライターの金原みわさんが追いかけます。
珍スポトラベラー。全国の珍しい人・物・場所を巡り、レポートを行う。都築響一氏主催メルマガ『ROADSIDER’s weekly』、関西情報誌『MeetsRegional』、ウェブメディア『ジモコロ』にて連載中。著書『さいはて紀行』(シカク出版)発売中。
ここは九州西北端の長崎平戸。周囲を美しい海に囲まれた平戸は、古くはオランダやポルトガルとの貿易港として栄えた。今でも当時の名残で、キリシタン文化が至るところに残っている。
観光地としても人気があり、平戸島は閑静な風景とは裏腹に交通量が多いように見える。そんな平戸で、どうして金山さんは、この不思議な人形達を作り続けるのだろうか。
――作り出したきっかけは?
「交通安全のために作ったのが目的っちゅうか。この辺は事故が多かったからね。最初の方につくったのは、この“犬のおまわりさん”かな」
「この“ネズミちゃん”も結構最初の方に作ったよ。なかなか、かわいい顔してるでしょう」
――どうですか、交通安全への効果は?
「それがねえ、これを置きだしてから、この交差点では事故がないんだよ」
――すごい!
なんともいえない愛らしい見た目の交通安全モニュメント達。確かに何も知らずにここを通る人は「えっ、ちょっと、あれ何?」とスピードを落としてしまうこと間違いないだろう。その効果も、しっかりと反映されているようだった。
――目を引くものばかりですもんね。こうやってみると、交通安全と書かれていない人形もあるようなのですが?
「こんな風にいろいろ作っていたら、島の人から要望があってね、港に飾る用に作ってって。これも祭りの時に港で飾ったのを、持って帰ってきたの。ほらなんていったっけ、これ……」
――メカメカしくて非常にリアルなアレですね! これの素材は鉄ですか?
「いやいや、そんないいもの使わないよ。ほとんど買ったものはない。全部もらいもんとか、拾いもんとか。みんな持ってくるのよ。なんか作れんかね〜って」
「できるだけお金かけないようにってね。プラスチックの容器をつかってたりかな。これなんか、ほら、あの海で浮いているブイ。あれが捨てられてたのを拾ってきたの」
「特にこっちの、この足の部分はね、自分でもよく考えたと思う。なにを使ってると思う?」
――うーん、つるっとした素材で……分からないな。
金山さんは不敵に笑ってこう言った。
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