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» 2017年05月03日 06時00分 公開

映像技術が切り拓く“まだ見ぬ世界”――麻倉怜士の「miptv2017」リポート2017(後編) (4/5)

[天野透,ITmedia]

麻倉氏:番組としては「コズミックフロント」で、積極的にVRを作っているそうですよ。ドームシアターの映像を作る「オリハルコンテクノロジーズ」というベンチャー企業があるのですが、ここと提携してプラネタリウム用映像を作るというプロジェクトを2016年に開始したようです。オリハルコンはオーロラを高解像度で撮るという、高解像度の達人で、ソニーの「α7s」を四方と天頂に向けて5台配置し、全天撮影をしています。動画は1台4Kで、5台なので20Kになりますが、かぶっている部分は切り取るので、実画素数は15Kというわけです。

――切り捨てた画素数だけでフルHD超えですよ、凄い次元の話だ……

麻倉氏:以前からいっていますが、VRをやるなら最低でも8Kは必要です。ここは最終的にプラネタリウムでの全天投影を視野に入れているため、さらに高解像度が必要となるのです。

 活用の場はテレビ、Web、イベント、「PSVR」の4つ。まずテレビ番組の活用ですが、宇宙空間で一点だけを見つめていると、まったく別の方向で何かが起こります。だったらはじめから全天撮っておけは、何かあった方向の切り出しが可能じゃないかという発想です。

――流星群なんかはかなり大雑把な方向しか予測できないですから、できるだけ広い範囲を眺めるというのは星見の鉄則ですね。

NHKのコズミックフロントはVRの実験コンテンツでもある。全天球撮影のスペシャリストである、オリハルコンテクノロジーズ映像制作部「SCALE Factory」の糸谷覚氏を筆頭に大宇宙の全天球撮影に挑む

麻倉氏:次はNHKのWebでVRコンテンツのストリーミングです。これならばタブレットで見てもいいし、ゴーグルを使えば全天映像になります。イベントで使用というのは「忍たま乱太郎 宇宙大冒険」が渋谷のドームシアターで上映されるとの話です。そして最後がPSVRでVR専門コンテンツとして販売するというものです。将来は老人ホームでの設置や、旅行会社の体感コンテンツを見込んでいるそうですよ。

――老人ホームにVRとは、これまた凄いところに目をつけましたねぇ。その発想はなかった

麻倉氏:今取り組んでいるのは、世界各地での「ブラックホール一斉観察」だそうで、NHKはこれに8K隊とVR隊を送り込みます。それにしても、やはり宇宙モノは全天撮影と親和度が高いですね。宇宙モノ、VR、プラネタリウムがNHKの3本柱で、美味しいところを番組制作に活用するという作戦です。大掛かりなイベントも良いですが、PSVRでユーザーが体験できるのも良いところです。

 このようにVRの影が放送にもひたひたと迫ってきています。通常放送でVRはなかなか難しいと思いますが、OTTならば可能です。タブレットで見るもヨシ、ゴーグルで見るもヨシ、ですね。

――そういえばiPad用アプリに「Star Walk」という全天の星空を見渡せる人気コンテンツがありますが、アレのような感じならばタブレットで手軽に全天球映像を見渡せそうです

NHK教育の長寿コンテンツ「忍たま乱太郎」がプラネタリウム投影番組に。PSVRではVR専門コンテンツの販売もされている

麻倉氏:最後は8Kへの期待です。コンテンツは「ANTARCTICA」という南極プロジェクトで、NHKの科学班が2017年8月の放送を目指して鋭意製作中です。この番組は「RED HELIUM」という小型カメラが出てきたおかげで、カメラマン3人とディレクター1人という小規模クルーでの撮影が可能になったという点が大きなトピックですね。

――先月は江ノ電で8K撮影を敢行したという話題でしたが、今度はさらに小規模になりましたね。8K撮影がどんどんカジュアルになっていっています

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