麻倉氏:それは会場に居たクリエイター達も同じ様子で、表現としてのVR番組をどう作るか、そもそも360度の撮影をどうやるのか、最終的にヘッドセットで見た時の映像をどうコンテンツ化するかということを模索していました。多かったのは“スクリプテッドVR”という、一般的なテレビ番組のように脚本が用意されているものです。これまでVR映像にはニュースがあり、事件現場の中心から全貌が見られるという点を推していました。これをドキュメンタリー化したものもままあります。
一方、今年見たのはフィクション、つまりVRのドラマです。1つの流れに沿って物語を紡ぐという作品をVRでどのように表現するかということを、さまざまな制作会社が試していました。miptvはいつもテレビの平面映像の枠に囲まれたフレーミングの中でのコンテンツ流通に止まらない新しいコンテンツの作り方を模索しており、私たちにワクワクするような視点を与えてくれます。3Dや4K、HDRなどもこの文脈に沿ったものなのです。
VRでまず紹介したいのはフランスのClubbing TVです。4Kで紹介したInsight TVのように、ここもターゲティングを明確にしています。ここは「Clubbing」「C4K 360」という2ラインを持っていて、Clubbingは従来型の4Kチャンネル、C4K 360はVR向け全方位コンテンツを4K制作しています。
同社CEOのStephane Schweitzer氏は、「3年ほど前に4Kを知った。まずは技術やワークフローを検討、技術的には問題なかったが、当時はまだ機材が高かった。どこも持っていないプレミアムコンテンツを4Kで作る。ターゲットはミレニアルで、コンテンツはエクストリームスポーツ、ゲームプレイ、ファッション、コンサート、ライフスタイルだ」と語っています。
――方向性としてもInsight TVと似通っていますね
麻倉氏:ところがここは「HDRは規格が収束、統一されるまで手を出すのはやめておこう。でもVRは面白そう。表現そのものが新しいので、いっそ新しいチャンネルを作ってしまおう」と、選択と集中をかなり意図的にやっています。C4Kラインでは、同じミレニアルでも、若年向けに大規模コンサートや一晩中ダンスミュージックを流すRAVEパーティーなどで、なぜそのようなコンテンツを手がけるのか聞いたところ、「ユーザーは過激なものでないと見てくれない」という至極真っ当な答えが返ってきました。
ここの特徴は同じ番組をテレビ向けとVR向けにそれぞれ配信するということ。テレビは一般的なものですが、VRのVODを同時配信することで、フレーミングと360度が同時に見られます。VRは刺激が強い分だけ疲れやすく、画質的にも360度が4Kで足りるか疑問です。なので同時配信はなかなか面白いアイデアといえますね。
麻倉氏:ここからは再びNHKの話題です。実はNHKもVRに注力していて、しかも15KのVRを作っているそうです。
――じ、15K? 一体なんの番組でどんな作り方をしているんですか?
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