麻倉氏:2016年11月から12月の撮影(南半球なので夏)で、テーマは唯一南極海でのみ生存している、酸素を生み出すバクテリアです。10億年前から存在するこの原初生物の生態を、南極の海に潜って撮影しました。そういえば8Kの水中撮影というのも画期的な試みです。
会場での上映はソニーの「VPL-VW5000」で、残念ながら4Kにダウンコンバートした映像でした。それでもこれまで見た8Kとの違いが明確に出ています。南極という人類未踏の極地でこのような景色や生命の営みが繰り広げられている、そういった「まだ見ぬ世界」が細部に至るまで描かれていて、非常に感動しました。
科学班プロデューサーの柴崎壮さんは「8Kは巨大な顕微鏡であり、巨大な望遠鏡です。過去には牧野富太郎博士の『植物図鑑』という8K番組で、24時間の花の開花を10秒に縮めました。宇宙の探索も8Kが効果的で、単なる映像を見せる手段に止まらず、新しい発見を見せる手段になります。活用の切り口が大事ですね」と語っていましたが、ここに大きなヒントがあると私は感じました。つまり、4Kでは見えなかった世界を8Kで見せることが大事というわけです。
――顕微鏡的、望遠鏡的使い方ですか。確かにこれは高精細がなせる技で、8Kだからこその価値となりそうです。
麻倉氏:少し話はズレますが、「CeBIT」で記者を対象に8K映像のパブリックビューイングがありました。サグラダファミリアでの演奏会を撮影したもので、音声はスーパーハイビジョンフォーマットの22.2ch収録。これだけの多チャンネルで収録すると、音と映像の同調効果が表れます。聖堂はその構造上、音が上に上がり、光が上から降りて来るという構図で、これによって立体的な音と光のベクトルが一致した総合芸術となります。これが8K時代の舞台芸術映像としてあるのではないかと思うわけです。
麻倉氏:先のVRもそうですが、放送はもちろん、放送外で4Kや8Kをどう活用するかという観点がこれから重要になるでしょう。8Kは今のところ日本だけしかやっていませんが、放送にとどまらず幅広い展開を練ることで、世界で望まれる技術になる可能性を秘めていますね。
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