着衣型ウェアラブルデバイスの世界標準を目指す!――老舗繊維メーカーの新たな挑戦(1/3 ページ)
“ミツフジ”という社名を知っている人は少ないかもしれない。しかし、この先、日本はおろか世界のウェアラブルIoT市場を席巻するかもしれない繊維メーカーだとしたらどうだろうか?
ミツフジは、西陣織職人であった創業者が1956年に立ち上げた老舗繊維メーカーだ。主に織物加工や製造を手がけ、1992年からは抗菌タイプの銀メッキ繊維も開発、製造している。
しかし、現在のミツフジは単なる繊維メーカーではない。きっかけは世界中のメーカーがこぞってIoTに本腰を入れ始めたこと。それまで抗菌を目的として使われていた銀メッキ繊維だったが、時代の流れでもう1つの特徴、つまり“導電性能”に注目が集まった。同社は2013年に着衣型ウェアラブルデバイス「hamon」の製造に乗り出す。
そもそもメッキ繊維とはどのようなものなのか。ミツフジの三寺歩社長に聞いた。「われわれの銀メッキ繊維は、ナイロンの糸に特殊な薬剤を使うことで作られる無電解メッキ。銀で完全にコーティングした糸のことをいいます。銀自体が皮膚に対する刺激が他の金属と比べても小さいことは一般的に知られており、国内でも銀に対する規制がないなど安全性も高い素材です。その特徴は表面抵抗が10Ω未満と小さく、比重も1.4~1.6と非常に軽いこと。軽量で柔らかい繊維製品に仕上げることができます」(三寺氏)
同社の銀メッキ繊維は質が高く、宇宙飛行士の下着素材として採用されている。元々はシールド材や抗菌材として高い評価を受けていたわけだが、今回注目されたのは導電性能の高さだ。ミツフジと他社製の銀メッキ繊維では何が違うのか。
「導電性能の高さを示す大きな特徴として、“均一に電気抵抗が出せること”が挙げられます。当社の銀メッキ繊維は表面全体がメッキされているのに対して、他社の練り込み技術では、表面に銀が点在しているだけで、その違いは一目瞭然(りょうぜん)なんです」(三寺氏)
2013年頃から多くの問い合わせが入るようになった。それは“導電性繊維”とWeb検索をしたメーカーの人たちが、とりあえず「銀メッキ繊維のサンプルをください」と依頼してきたからだ。しかも、社名を見ると繊維メーカーではない。大手電機メーカーなどの問い合わせが多かったという。
「ほとんどが“××研究所”といったメーカーの研究施設からの問い合わせだったんです。実際に訪問して話を聞いてみると、『ウェアラブルに利用したい』という返答ばかりでした」(三寺氏)
それまで繊維市場を中心にサプライヤーとしてビジネスを展開していた同社は、自分たちの銀メッキ繊維が大きな優位性を持っていることに気づいていなかった。だが、元々質の高い繊維であったことはもちろん、それらサンプルを提供した多くの電機メーカーが他社製品と比較した上で、ミツフジの銀メッキ繊維を採用したいと言ってくる。こうした経験を重ねるうち、自分たちの銀メッキ繊維が将来のビジネスを拡大する大きな武器になると確信したという。
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モノ雑誌で白物家電を約10年担当し、メーカーからの信頼も厚いフリーランスライター、滝田勝紀(たきたまさき)氏が最新家電のスゴイ技術を紹介するインタビュー連載。
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