「こういった細かなニーズに対して、繊維からシャツ、電子製品、ソフトウェアまで、すべてをワンストップで手がけることができるのは世界でも弊社だけです。現状はこれがワンストップではなく、バラバラに作ろうとするから、それぞれのメーカーの折り合いが合わなかったり、うまく融合したサービスにまで漕ぎ着けるものができにくいんだと思います。なんとなく使いづらいというか、ニーズに合わないウェアラブル製品ができ上がってしまう理由はそこにあります。われわれはこれらを一気通貫で各ニーズに合わせて供給することもできれば、例えば繊維だけ欲しい、トランスミッターとアプリだけ欲しいというような他社の要望にもスムーズに応えることができます。これこそが全てを自社生産するミツフジならではの強みなのです」(三寺氏)
シリコンバレーもあるIoT先進国アメリカの銀メッキ繊維メーカーでさえも、実はそこまではできていないのが実情だ。彼らは現状、あくまでも糸を売る繊維メーカーとして、大手スポーツ用品メーカーなどに糸を卸続けるだけで、それ以上の動きはしていないという。
「アメリカの繊維メーカーでさえ、まだ1社でやらないとウェアラブルIoTはうまくいかないということに気づいていないんです。だからこそ世界にも打って出るチャンス。日本市場でも同じで、弊社の銀メッキ繊維『AGPOSS』に対し、唯一のライバルだと思っていた大手繊維メーカーと素材があるのですが、そこが別の企業と組んで開発することを表明しました。後から市場の歴史を振り返った際、今がウェアラブルIoT市場で戦う上での勝負の分かれ目になると確信しています」(三寺氏)
多くのIT市場は、例えばApple、Google、Amazonのような“一強”の市場が形成されがちで、ウェアラブルIoT市場もおそらくこの先、1つの企業が膨大なデータを集めて市場を牽引していく図式になるだろうと三寺氏は予想する。ミツフジも当然その一強を目指すにあたり、さらにもう1つ、大事な武器があると三寺氏。それは一体何か?
「こういったウェアラブル製品は自分から前向きな気持ちで着たいというものではなく、目の前の課題や問題を解決するために着させられるというユニフォームビジネスなんです。普通に健康だと思っている人は絶対に着ませんから。だから、B to B主導でビジネス展開していかないと絶対にうまくいきません。ミツフジにはこれまで繊維市場というB to Bビジネスで戦ってきた強固な営業部隊がいて、そのあたりも強く理解していることも強みの1つだと自負しています」(三寺氏)
日本の大手電機メーカーが軒並み調子を崩し、海外の企業やサービスに国内の市場を侵食されている日本。そんな中、ミツフジはウェアラブルIoTの分野で世界を席巻できるのだろうか? そんな問いに対し、三寺氏は力強く答えてくれた。
「2025年が大きなターゲットになります。それはミツフジ創業70年の年ですが、一方で団塊の世代が後期高齢者となる時期です。多くの人々が介護施設などに入ることができず、認知症の症状があっても社会で暮らさざるを得なくなるでしょう。そんな中、着衣型ウェアラブルデバイスのhamonは、なくてはならないインフラ的存在となることに間違いありません。さらに日本以外の先進国でも高齢化は大きな社会問題になるでしょう。1976年に日本で作られたVHSが世界を席巻したように、着衣型ウェアラブルデバイスhamonがウェアラブルIoTの世界標準を作ります」(三寺氏)
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