「ネット動画でもぜいたくな動画体験を」──ヤマハが「ポタフェス2017 東京・秋葉原」(2017年7月15日〜16日)に、製品化を目指す“ある技術”を展示している。
その名は「“聴く”VR」。動画再生機と視聴用のヘッドフォンの間を「音場を創る」機械が仲介する。HMD(ヘッドマウントディスプレイ)で楽しむVR(仮想現実)向けというよりは、従来型のネット動画をよりぜいたくに楽しむための技術だという。
コンセプト的には、チャネル数を増やして臨場感を演出する「サラウンド」技術とそう変わらないようにも見える。何が違うのだろうか。
「この技術は、AVアンプで培った“音場創生技術”をヘッドフォンに応用したものです」ヤマハの担当者が語る。
ヤマハの音場創生技術は、3段の技術から成り立っている。1段目は、音源の方向性を付与して定位させる「音源定位技術」。2段目は、2チャネルのステレオ音源を5チャネルに拡張し、サラウンド化する「チャネル拡張技術」、そして3段目が「“超”多チャネル拡張技術」というもので、これが「従来のサラウンドとは違うところ」だという。
“超”多チャネル拡張技術とは何か。ヤマハがこれまでに測定してきた、コンサートやライブ会場などの音場測定データを用いて、会場の膨大な反射音や音響空間の広がりをエミュレートするものだ。ただ多チャネルにするだけではなく、測定データから音場を再現することで、従来のサラウンドにはない表現を可能にしているということだ。
2段目で疑似的にサラウンド化しているため、もともと5.1チャネルなどサラウンドで収録された動画であれば2段目を飛ばして効果を適用できるそうだ。多チャネル収録の動画でも「“聴く”VR」は楽しめるというが、「特に動画配信サービスの2チャネル動画を、この機械を通して視聴することでぜいたくな動画体験を楽しんでもらえたら」(担当者)と狙いを説明する。
実際に聴いてみよう。機械上部のノブを手動で切り替えることで、アニメ動画やライブ動画、映画などの視聴に最適な音場を表現するプリセットモードを選ぶことができる(展示時点ではアニメーションモードとホームライブモードの2種類)。
驚いたのは、やはりホームライブモードだ。ライブ動画を視聴すると、会場で四方八方から聞こえる反射音を再現していて本当にライブ会場にいるかのように錯覚する。
視聴したユーザーからヤマハが集めている投票では、多くの人が「いいね!」に投票していた。担当者いわく、「“聴く”VR」はまだ製品化が決まっていないため、このアンケート結果を社内に報告して製品化を進めたいとのことだ。目標は2018年中、価格は未定としつつも「多くの方に買っていただける価格を目指したい」(担当者)としている。
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