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“魔法使い”が作るイヤフォンはネーミングもマジックだった?(1/2 ページ)

» 2017年07月18日 18時35分 公開
[芹澤隆徳ITmedia]

 Noble Audio(ノーブルオーディオ)というオーディオブランドをご存じだろうか。“Wizard”(ウィザード;魔法使い)の異名を持つ聴覚専門医のJohn Moulton(ジョン・モールトン)博士らが2013年に設立した若いブランドで、専門家としての知見を生かした製品作りが世界中で高く評価されている。

Noble Audioの「KATANA」

 日本では宮地商会M.I.Dが輸入代理店業務を行っていたが、7月1日付けでエミライに移管。既存モデルも新仕様(後述)で店頭に並ぶことになった。「ポタフェス2017 東京・秋葉原」に合わせて来日したジョン・モールトン博士が、会社設立までの経緯や“Wizard”というニックネームの由来、そして同社製品の特徴を語った。

“Wizard”ことJohn Moulton(ジョン・モールトン)博士。1997年に聴覚専門医、2002年に聴覚学の博士号を取得したオーディオロジストだ

 モールトン博士が“Wizard”と呼ばれ始めたのは、会社設立前の2008年頃。当時、タイにある補聴器会社のラボで働いてい博士は、暇を見つけては補聴器やイヤフォンを自作し、その写真を米国最大のヘッドフォンコミュニティ「Head-Fi」に投稿していた。「きれいなものができてHead-Fiに投稿したら、その造形的な美しさから『あなたはWizard(魔法使い)だ』と話題になった。そこから“Wizard”というニックネームが定着したんだ」(モールトン博士)

音質のマジック

 2013年10月、カリフォルニアのサンタバーバラでブラナン・メイソン氏と一緒にNoble Audioを立ち上げる。以来、数々のカスタムIEMやイヤフォンを送り出し、外観だけではなく、音質面でも話題になる。このうちユニバーサルタイプは、モニター用途に適した「Reference family」(リファレンス・ファミリー)と音楽性重視の「Musical family」(ミュージカル・ファミリー)の2ライン計7モデルをラインアップしている。

 「なぜ2つのラインを作ったかといえば、私自身があるときは“音楽”を聞きたくなり、またそうではないときもあるからだ」とモールトン博士。楽曲を正確に再現することが目的のリファレンスシリーズに対し、独自の音楽性を加味したミュージカルファミリーは、そのときの気分や用途に合わせて使い分けられる。では、それぞれの製品はどう違うのか。

 「例えばKATANAは音質重視傾向の人のために開発したリファレンス、TRIDENTは音楽を聞きたいときに使う。K10はリファレンスとミュージカルの中間を狙ったもので、強いキャラクター性は持っていない」。なお、K10は同社の旧旗艦モデルで、現在は後継機の「KAISER ENCORE」が販売されている。

「KAISER ENCORE」はKATANAとK10の中間に位置するという

ネーミングのマジック

 Wizardのセンスは、ネーミングにも発揮されていた。例えば「KATANA」は大方の予想通り日本刀の意味で、「洗練された、確実な切れ味をイメージした」という。「刀の職人にはかなりの経験と技術を持っている。私自身、芸術家肌だと思っているので強く意識している」(同氏)

「KATANA」はReference familyのフラグシップ。カスタムBAドライバー「Noble Driver」を片側9基搭載

 同様に武器の名前を持つものに「TRIDENT」(トライデント:三つまたのほこ)があるが、こちらは片側3つのバランスド・アーマチュア型ドライバーを搭載したモデルだ。このように、ドライバー数やハウジングのデザイン、音質傾向が製品名に合わせてあるケースも多い。

「TRIDENT」は最低域と最高域の押し出し感を重視したモデル。ポピュラー音楽やヒップホップなど現代楽曲と相性が良いという。BAドライバーを片側3基搭載

 ユニークなのは、博士が好きな映画が由来になっている製品が複数存在することだ。

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