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いずれソニー製品と連携する? 電力会社が提供するIoTサービス「TEPCOスマートホーム」の勝算(1/3 ページ)

» 2017年08月28日 12時40分 公開
[山本敦ITmedia]

 東京電力エナジーパートナーは、IoT(Internet of Things)を活用したスマートホームのサービス「TEPCOスマートホーム」の提供を8月7日に開始した。電力会社がスマートホームを提供する理由は何か。そしてどのような特徴があるのだろうか。サービスの立ち上げに携わった、同社商品企画開発室の竹村和純氏に詳しい話を聞いた。

東京電力エナジーパートナー 商品開発室 インキュベーションラボグループ マネージャーの竹村和純氏

電力からスマートホームまでワンストップのサービスを家庭に届ける

 「TEPCOスマートホーム」は、インターネットとIoTデバイスを活用した「おうちの安心プラン」「遠くても安心プラン」という2つの見守り系サービスをメニューに加えてスタートした。どちらのサービスともに専用のスマホアプリを使い、離れた場所に暮らす家族の様子を見守る機能を中心に据えている。中でも「おうちの安心プラン」はソニーモバイルコミュニケーションズと共同開発したスマートホームハブやセンサー機器などのハードウェアに、シンプルな操作性を追求したアプリを組み合わせることで楽しく使えるよう体験にも工夫を凝らしている。

8月7日から申込み受付を開始した「TEPCOスマートホーム」は「おうちの安心プラン」「遠くても安心プラン」の2本立てのサービスを構える

 月額利用料金は「おうちの安心プラン」が3280円(税別)、「遠くても安心プラン」が2980円(税別)。東京電力との電気契約がなくても、全国どこに住んでいても、誰もが申し込める。受付は東京電力エナジーパートナーのホームページなどで行われている。

 TEPCOスマートホームのサービスが企画された背景には、2016年4月から始まった「電力自由化」との関連があると竹村氏は語る。「電気を販売する小売り事業者としては、自由化の後も長くユーザーに満足を感じていただくために、値段が安いことのほかにも付加価値を作る必要があると考えました。将来に一定規模の広がりが想定でき、多くの方々に必要とされるものを検討してきた結果、IoTに着目しました。IoTデバイスはインターネットにつなぐための通信機能のほかに、動力となる電気を必要とします。電力会社によるサービスとの親和性も高いと捉えています」

 これまでに「家」という単位に向けて電力を供給してきた同社のサービスは、スマートホームを提供するビジネスモデルにもマッチングが高いと竹村氏は説く。以前に当連載で通信事業者であるKDDIが手がけるスマートホームのサービス「au HOME」を紹介したが、携帯電話やスマートフォンなど個人単位での顧客リーチに強い通信事業者に対し、「家」を基準に電気からスマートホームまでのワンストップサービスを構築して、提供できることが東京電力エナジーパートナーの強みであると竹村氏は強調する。

通信やコンシューマー向けサービスに強いソニーモバイルとタッグを組んだ

 TEPCOスマートホームの一翼を担う「おうちの安心プラン」は、スマホからIoTデバイスにまでXperiaシリーズを展開するソニーモバイルとの共同開発によって生まれたサービスだ。

「おうちの安心プラン」はソニーモバイルコミュニケーションズと共同で開発。記者発表会には東京電力エナジーパートナーの川崎敏寛社長(左)とソニーモバイルコミュニケーションズの十時裕樹社長兼CEO(右)が登壇して、パートナーシップのスタートに向けて固い握手を交わした

 契約ユーザーはソニーモバイルが開発したハード機器を宅内に設置して、カバンやキーホルダーなどの持ち物に装着するデバイスに組み合わせて様々なサービスが使える。例えば家の窓やドアに「マルチセンサー」を設置しておけば、留守中に開閉された時にすぐスマホに通知が飛んでくる。子どもの持ち物にスマートタグを着けておけば、帰宅・外出のタイミングを知らせてくれる。昨今のIoTデバイスとしてはそれほど珍しくない、いわゆる“見守り系”のサービスを提供するラインアップだが、それぞれの機能と操作性をシンプルにまとめて、ユーザーフレンドリーなアプリケーションとして仕立てたところにソニーモバイルのノウハウを見つけることができる。

 東京電力エナジーパートナーが、パートナーにソニーモバイルを選んだ理由については、竹村氏が次のように説明している。

 「様々なパートナーと協業を検討してきましたが、ソニーモバイルが通信の分野で培ってきた個人のお客様向けの端末やサービスに関連する豊富な経験と、家庭を単位とするお客様と密接につながってきた当社のノウハウが良いかたちで結びつくと考えました。いまスマートホームの周辺を見渡せば、色々なことを実現できる技術や製品が存在していますが、これからスマートホームを大きく普及させる起爆剤になるものは、ユーザーをワクワクさせるエンターテインメント的な要素だと思っています。その点でも様々な経験値と広い視野を持つソニーモバイルが最良のパートナーであると期待しています」(竹村氏)

 今回「おうちの安心プラン」については両社が協力して立ち上げる形となったが、今後はサービスの輪の中に様々なパートナーを迎えながら、ユーザーが使えるデバイスやサービスを増やす用意があると竹村氏は語っている。TEPCOスマートホームに新しく追加されるプランについては他のパートナーと一緒に企画・制作するものも出てくるに違いない。

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