シャッター機構を搭載してないから。その方がコストもかからないし、薄く作れる。
そもそもイメージセンサー自体がシャッターとしての機能を持ってるからシャッター機構がなくても写真は撮れるのである。
これを「電子シャッター」といい、従来のシャッターは「メカシャッター」と呼ぶ。
だったら、メカシャッターなんていらないんじゃね? 電子シャッターだけでいいんじゃね?
確かに電子シャッターはコストダウンになるし、メカ部分がないので高速化しやすいし、音もしない。
そうならないのは大きな欠点を2つ持っているからだ。
ひとつは「ローリングシャッター歪み」と呼ばれる現象。
CMOSセンサーの電子シャッターは「1画面分」一度にデータを得るのではなく、一番上のラインと一番下のラインでちょっとタイムラグがある。
だから高速に動く被写体を撮るとこんなことになる。
電子シャッターだとタイムラグのせいで斜めになってるのが分かるかと思う。
もうひとつ、これもタイムラグに起因するのだが、室内の照明で高速シャッターで撮影するとフリッカーが映り込んでしまうことがある。
分かりやすいのが蛍光灯。蛍光灯はずっと点灯しているのではなく、細かく明滅している。
メカシャッターで撮るときは光が当たる瞬間をコントロールしてるからいいのだが、電子シャッターを使ってその明滅より遙かに高速なシャッターで撮るとだとタイムラグのせいで明るさが均一にならないことがあるのだ。
まあ室内で1/500秒や1/1000秒で撮ることはあまりないし、光源の機種によって出ないものもあるけど、参考までに。
LED電球でも「電球によっては」似たような現象が起きる。
なお、シャッタースピードをそれなりに抑えれば、電子シャッターでも問題ないので念のため。
この手の現象はスマートフォンなら許されても、本職のカメラでは許されないので、メカシャッターを搭載してるのだ。
実際にはスマホだけの話じゃない。
多くのミラーレス一眼が「メカシャッター」と「電子シャッタ−」(製品によっては『サイレントモード』)を併用できるようにしてるし、上の作例もミラーレス一眼で撮ったものだ。
ひとつは無音で撮れること(AF時のモーター音はするけど)。
ひとつはシャッターによる振動がゼロなので手ブレしづらいこと。ミラーレス一眼は一眼レフに比べ、手ブレしづらいのだが、それでもスローシャッター時はシャッターの動きで手ブレしやすくなるのだ。電子シャッターだとほんとにブレを減らせる。
ひとつはシャッタースピードを上げられること。センサーの性能にもよるが、ハイエンド機になるとメカシャッターでは1/8000秒だけど、電子シャッターだと1/32000秒まで速くできるという機種もある。
ひとつは連写速度を上げられること。メカシャッター時は秒10コマだけど、電子シャッターを使うと秒30コマまでいけるとか。
そういう理由でデジタル一眼に電子シャッターは欠かせなくなってるのだ。
昔に比べるとセンサーの読み出し速度も速くなり(特にソニーが積極的)、歪みも軽減されてきており、その傾向はまだ続くだろう。
メカシャッターと電子シャッターを選べるカメラを使うときは両者を有効に使い分けたい。
個人的には、メインカメラをミラーレス一眼に移行したおかげで、たまに一眼レフを使うときは手ブレにやたら気を使うようになっております(気を抜くと手ブレしちゃう)。
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