最先端だから面白い――日本メーカーのB to B関連展示振り返り:2015 CES(2/2 ページ)
今回のCESで印象的だったのは、日本の家電メーカーがコンシューマー向け製品から一歩引いた位置に立ち、特定業界向けのB to Bにシフトしたこと。ここでは、そのB to Bの視点から今年の展示を振り返ってみたい。
スマートデバイス連携を念頭に置いた車載/機内エンターテイメントシステムに注目
車載システムという意味では、2013年末〜2014年初頭にかけて話題となった「Apple CarPlay」と「Android Auto」が記憶に新しい。スマートフォンと車載オーディオを連携させる仕組みで、少しずつではあるが対応車種が増えている。パナソニックのブースでは両プラットフォームに対応した機器が展示され、デモが行われていた。ただ車載側のシステムでは両者にハードウェア的な違いはなく、ソフトウェアの切り替えで対応しているということで、各メーカーの対応しだいではあるが、車の接続先となるスマートフォンが特定プラットフォームに縛られるということはないようだ。興味深いのは、スマートOSがテレビにコンテンツ制御のためのプラットフォームとして進出したように、車載を含むさまざまな分野で活躍の場を広げていることだ。
その典型が飛行機の機内エンターテイメントシステムだろう。以前まではビジネスクラス以外のシートでは共有スクリーンによる映画上映や音楽配信が中心だった機内エンターテイメントだが、ここ10年ほどは各シートにパーソナルスクリーンが設置され、オンデマンドで好きなタイミングで映画等のコンテンツを楽しむことが可能になった。だがユーザー側のデバイス利用環境もここ数年で大きく変化しており、従来まではPCや携帯メディアプレイヤー中心だったものが、スマートフォンやタブレットの登場でコンテンツを大量に入れて持ち運び、どこでも再生可能となった。そのためパーソナルスクリーンを使わずに自分でコンテンツを持ち歩いて楽しむユーザーが増えている。こうしたニーズを踏まえて機内インターネット接続サービスを提供するGogoでは、飛行機に搭載したサーバからWi-Fi経由で各自が持つスマートデバイスで直接コンテンツをオンデマンド再生できる仕組みを提供し、「わざわざ高いコストをかけてパーソナルスクリーンを導入する必要はない」というセールストークを展開していたりする。逆にこうしたトレンドを受け、機内エンターテイメントシステムとスマートデバイスとの連携を強化する方向性を打ち出したのが今回の展示の興味深いところだ。
パナソニックは機内エンターテイメントシステムでは大手で、Linuxをベースにしたシステムを多くの航空会社に導入している。機材の不調でエンターテイメントシステムの再起動画面でLinuxのコンソールが表示されるのを、筆者は何度も目撃していたりする。今回紹介されていたのは、パーソナルスクリーンそのものを比較的大型のディスプレイを備えたAndroidタブレットにしてしまい、中央のサーバからのストリーミング配信なしでも独立動作できる環境を作っている。ただし各シートに配置されたタブレットではストレージ容量に限界があるため、実際には大量の映画ライブラリはサーバにある2Tバイトのストレージに保存され、そこからストリーミングでオンデマンド配信される形になる。
それ以外にも、手持ちのスマートデバイスのストレージを参照して座席の大画面液晶でコンテンツを楽しむことも可能だ。座席にはシートトップのAndroidタブレットとの接続や充電が可能なUSBポートのほか、手持ちのスマートフォンやタブレットを立てかけておくためのホルダーも用意され、デバイス連携が念頭に置かれている。機内エンターテイメントシステムのユーザーインタフェースもAndroidそのものなため、これらデバイスに馴染みのあるユーザーであれば戸惑うこともないだろう。
このほかB to B向け展示としては、「スマートダウンライト」の展示が興味深い。ダイニングテーブルを照らすライトにイメージセンサーとプロジェクターの機能を加え、テーブル状に配置されたオブジェクトやその動きに合わせて投影する画像を変化させるという仕組みだ。例えばレストランでメニューを広げれば、それに応じたメニューの写真が表示され、テーブルクロスを広げてワイングラスを載せると、田園風景が広がるといった具合だ。おそらくはレストラン以外のプレゼンテーションや接客用途にも活用できると思われ、こちらもやはり来年以降の応用展示が楽しみだといえる。
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