デザイン×技術力=“ココチノヨイ アカリ”郷好文の“うふふ”マーケティング(2/2 ページ)

» 2008年10月02日 19時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]
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きっかけはLEDランプとサイクロン掃除機

 そもそもは2005年、デザイナー村田智明さんのデザインブランド「メタフィス」に、デザイン家電参入を企画していたシルバー精工が参加したことから始まった。メタフィスではブランドコンセプトに共感したパートナー企業が参画し、家電やオフィス用品、文具などを製造・販売する。そこで生まれたのがLEDランプ「hono」とコードレスサイクロン掃除機「uzu(ウズ)」だった。

LEDランプ「hono」(左)、コードレスサイクロン掃除機「uzu(ウズ)」(右)

 それまでのシルバー精工の商品開発は1台数十万円以上もする業務用製品がメイン。ネットやショップで売るB2C商品を開発した経験は乏しかった。慣れないデザインを扱うため、工場は苦労の連続。何とか乗り越えて販売にこぎつけたが、課題があった。

 それはメタフィスが村田智明さんのブランドであり、シルバー精工のブランドではないことだ。製造だけの黒子では企業変革はできない。自前のブランド作りが必要だと痛感した。

イベントで隣のブースになったことがきっかけ

 次のきっかけは2005年秋の100%デザイン東京。シルバー精工のブースの隣で、「n.o.l.」がデザイン商品を展示していた。n.o.l.は三菱電機から独立したデザイナー・ユニット。そこにシラスさん、佐藤さんがいた。シルバー精工のマーケティング担当者がn.o.l.のコンセプトに共感したことから、共同商品の開発が始まった。

 最初のテーマとなったのはシュレッダー。しかし当初、工場には“デザイナーアレルギー”がまん延していた。「またデザイナーがややこしい注文を出してくる」と白い眼が並んでいたのだ。シュレッダーと言えば「何十万円もする四角くて重いもの」というB2B製品の常識も邪魔をした。それを打ち壊していくためには、スケッチでプレゼンをするだけではダメだった。

 「製品のモックアップ(模型)だけで50個は作りましたね」とシラスさんは笑って語る。モックアップといっても、どこかに発注するわけではない。発泡スチロールで柱を作り、のり巻きのようにくるくるケント紙で巻いて、絶妙な太さとなるよう何度も自作した。最終製品と同じモデルを作らないと工場には分かってもらえないからだ。カーブのR、色、手触りだけでなく、想定重量のおもりを入れて重量感までこだわった。

シュレッダー「conof. CS56D」

 その姿勢に次第に工場の技術者たちも引き付けられていった。スタイリッシュなシュレッダーの試作品をオフィス機器展「OFMEX」で展示すると、来場者の反応がすこぶる良かった。それを目の当たりにして、技術者の意識が変わった。

 「ここの部位のヒケ(へこみ)が納得できない」。製品化の際の加工精度でデザイナーがOKを出しても、工場側がクレームを付ける。中国の製造拠点の担当者は、滞在予定を大幅に延ばし年末年始返上で張り付き、2007年3月に販売を開始した。

開発の源流にダイソンあり

 color(n.o.l.から法人化)のデザイナー2人がメーカー(三菱電機)出身だったことは、工場の現場を理解する上で大きな利点となった。conof.ブランドでは、製品開発だけでなく、ブランドマネジメントからウェブデザイン、パンフレット制作、POP制作まで、2人が一貫して担当している。

CU62DでボツになったPOP。「取られてなくなる」からだが惜しい

 conof.ブランドには、意外な製品の血も流れている。それは、ダイソンのサイクロン掃除機。「奇人」「変人」と言われ、世界中の会社が製造を断ったサイクロン掃除機。実はシルバー精工が初めて製造を受託した。1989年に発売した「Gフォース型サイクロン掃除機」がそれ。

 「ダイソン掃除機の製造をずっとやっていれば……」はタラレバ。でも、この異色の商品を認める決断があったからこそ、uzuやconof.に取り組めたという面はあるだろう。革新的なデザインと機能性の融合。心地よい灯り(あかり)が会社にともった。

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