関東エリアでの特別募集住宅10月期抽選会は10月1日、新宿アイランドタワー16階の一室で行われた。会場が開くのは10時からなのだが、筆者が着いた9時半ごろにはすでに10人ほどが並んでいて驚く。信心深くない傾向にある若い男性が多いかと筆者は想像していたが、予想に反して、並んでいた人には60歳ぐらいの高齢者が多かった。
10時になると会場が開く。部屋はテニスコートほどの大きさで、手前に数台並べられた長机に申込書や特別募集住宅一覧が置かれている。その奥にパイプ椅子が100脚ほどあり、さらに奥へ進むと抽選手続きを行う机がある。長机で申込書を記入し、担当者に渡して、パイプ椅子に座って待つという流れだ。
とりあえず長机に座り、資料を見ると14戸の特別募集住宅が紹介されていた。「2007年度は毎月10戸から60戸程度だった」(UR都市機構)ことからすると、今回の物件数は少ないほうだろう。
最も家賃の高い物件は東京都・晴海の3LDKで月24万7400円(割引後は月12万3700円)、安い物件は東京都・小平市の1DKで月4万8600円(割引後は月2万4300円)と価格帯は幅広い。場所も広尾や晴海といった都心の物件から世田谷、千葉県・船橋までそろっている(残念ながら秋葉原近辺の物件はなかった)。先住者の死因は病死が最も多いことから、高度経済成長期に建てられたいわゆるニュータウンの物件が多くなるという。
参加者の様子を眺めていると、すぐに申込書を書き始める人がほとんど。前月の25日過ぎにはどんな物件が抽選会に出されるか分かるため、各営業センターを訪れたり、電話で確認したりして、どの物件に申し込むか事前に決めている人が多いようだ。
申込書の提出期限である10時半が近付くにつれて、じょじょに参加者は増えてくる。平日ということからか、仕事を抜けだしてきたような雰囲気のスーツ姿の男性数人がギリギリになって駆け込んできた。
10時半に締め切った時の最終的な参加者数は45人(付き添いだけで申し込んでいない人もいた)。男女比率は6対4程度、若い女性が数人おり、外国人も参加していた。
14戸の物件に45人が申し込むなら、単純に考えると倍率は3倍を超える。しかし実際は、すべての物件に応募があるわけではなく、一部の物件に希望がかたよった。今回の最高倍率は金町駅前2DK(月7万7500円→月3万8750円)の物件で11倍。申し込みを受け付けると、逐次ホワイトボードに希望者の番号が記され、競争率が分かるようになっているため、提出を遅らせて競争率が高い物件を避けるというテクニックを使うことも可能だ。抽選は縁日で使うようなガラガラ回して数字を書いた球を出す抽選機で行う。低倍率の物件から抽選していき、15分ほどで抽選会は終了した。
契約手続きを終えた20代の女性に「特別募集住宅の話はどこで聞いたのですか?」と聞いてみた。すると「地元の営業センターで『安い物件ありませんか』と尋ねたら、特別募集住宅というものがあると教えてもらったのです。実は今住んでいる団地もそうなんですよ」という。特別募集住宅に住んでみた感想を尋ねると、「もちろん幽霊とかは出ないですし、特に変わったことは起こりません。デメリットは友達が家に来る時、若干引くぐらいのことですかね」と笑って答えてくれた。
抽選会で希望者が出なかった特別募集住宅はアイランドタワー2階にある営業センターで改めて一覧を掲示して、借り手を募集する。抽選に外れた参加者たちが帰り際、ほかの物件を探している姿が見られた。一覧が掲示されるのは新宿の営業センターだけだが、依頼すればどの営業所でも一覧を取り寄せてくれる。
公営住宅ではUR都市機構のほかにも、都営住宅がWebサイトで事故物件の入居者を募集している。こちらは家賃半額の割引期間が3年間になるなど条件がUR都市機構とは多少異なっており、物件の数も少ない。同様の募集は各都道府県で行っており、Webサイトで物件一覧を見ることができるところもある(宮城県営住宅)。
さて、日にちを見れば分かるように、ここまでは1カ月前の話。そろそろUR都市機構では11月期の特別募集住宅抽選会も行われる(11月期の抽選会は11月4日)。「あこがれのアキバに月6万円で住める」とワクワクしていた筆者だが、御徒町の業者からはいまだ音沙汰がない。もしかすると、体のいい断わり文句だったのではないかとも、この頃思いつつある。もし連絡が来れば、後日談も掲載したい。
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