「著作権者を尊重するNO.1映像配信プラットフォームを目指す」――Yahoo!動画+GyaOの行方は(3/3 ページ)

» 2009年04月08日 02時30分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]
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ヤフーの井上社長

――統合後は広告モデルと課金モデルのどちらが中心になるのでしょうか?

井上 我々はプラットフォームという考え方をしているので、有料のモデルと広告で無料でやるモデルは両方残します。「どのビジネスモデルで動画を配信するのか」という判断は、コンテンツをお持ちの権利者の皆さんがコンテンツごとに「どういう形なら配信するよ」「こういう形でビジネスにしたい」というお考えに基本的には従います。

 そのためプラットフォームとしては、「すべて(の要望)に対応できるような用意をしておく」というのが基本的な考え方です。ですから、例えば「8割は広告モデルで2割は課金モデルにしたい」といった、こちら側からの目論見というのは特にありません。

――プラットフォームの開放に関して、どういった具体的なイメージを持たれていますか?

井上 その辺についてはまだよく考えていません。ただ、動画を主目的としているサイトだけではなく、「いろんなコンテンツなりサービスの一部に動画のコンテンツを使いたい」というニーズが世の中にはいっぱいあるのではないかと思っています。

 我々としてはこれで「ほぼ最大規模の動画配信のプラットフォームが作れる」ということで、動画配信のプラットフォームをそれぞれのサービス会社さんが自前で作られるよりは、規模の経済で「うちのプラットフォームを使って配信する方が、早いし、安いし、課金の仕組みも揃っている、広告を入れる仕組みも揃っている」ということで広くお使いいただくことを、オープン化の流れの中で目指していくといいのではないかと思っています。

――GyaO NEXTは今後どういった形になっていくのでしょうか?

宇野 GyaO NEXTはセットトップ※型のVOD(ビデオオンデマンド)サービスということで、現在提供しているGyaOの(無料の動画配信)サービスと別のものと考えています。現在のビジネスモデルとはまったく違う、月額固定の有料型サービスということもありまして、引き続きUSENとしてユーザーの拡大に向けて進めていきたいと思っています。「将来的に(ヤフーと)一緒に何か出来るか、とご相談させていただく時が来るかな」とは想定していますが、いったんは別の事業としてUSENとしてやっていきます。

※セットトップ……家庭用のテレビに接続して、双方向通信を実現するための端末。
GyaO NEXT

GyaOが黒字化できなかった理由は?

――GyaO事業はずっと赤字だったと思うのですが、この事業で結局利益が出なかった要因をどう分析されていますか?

宇野 理由は1つではないと思っています。GyaOは広告モデルのサービスだったのですが、「広告商品として十分な完成度に至っていなかった」、また、広告を販売する部分についても、「クライアントさんに十分に商品価値を理解していただくのに時間がかかってしまった」という面があると思っています。

 一方、コンテンツの部分では、我々はコンテンツホルダーさんと正規の契約をして、それなりのコストがかかる中で運営しています。その中で、想定していなかったことに、著作権が保護されないようなサイトがもろもろ出てきてしまいました。そうすると、当然ながらそこのコスト構造の差が出てきてしまいます。「こういう部分が未整備な時代の中でスタートしたことも大きな要因であったのではないか」と考えております。これからは、これら(著作権が尊重される仕組み)は世の中的にも整備されていくと思っていますし、統合会社がより強い力を持ってそれらを解消していけるではないかと考えています。

――GyaOはずっと赤字だったということでしたが提携後、動画配信サービスの黒字化はいつくらいにできるとお考えですか?

井上 先ほどからGyaOさんばかり赤字と言われていますが、うちも大きな声では言えませんが、動画だけに限ると実はもうかっているとは言いがたい状況です。両社の統合によりコスト削減することで、早い時期に黒字化させたいと思います。

――動画投稿サイトへの見方と、これからの展望について教えてください。

井上 動画投稿サイトについては、その存在そのものがまずいと思っているわけではありません。元々、動画投稿サイトでは、違法な投稿を期待していたのではなく、「自分で撮ったビデオなどをみんなで共有する」というような使い方を基本的には想定していたのではないかと思います。そういう使い方ならば、問題ないのではないかと思います。

 しかし例えば、「テレビの番組をそのまま録画して投稿してしまう」「DVDをコピーして投稿してしまう」といった使い方が普及してしまうと、「コンテンツを作る人たちに収益が分配されないために、コンテンツが次々と作られていかなくなるのではないか」と懸念しています。

 「そういう違法な投稿については、より厳しく対処するべきだ」と思っているのと同時に、そういう違法な動画が投稿されてしまう原因の1つに、(GyaOやYahoo!動画のように)きちんと権利処理した動画配信サービスに十分にコンテンツが集まらず、利用者もまだ育っていないという状況も1つあるのではないかと思っています。

 権利者がきちんとインターネットでもビジネスができる場を提供し、きれいな画質でオンタイムにコンテンツを見られるようにすれば、「違法な動画の投稿をする必要はなくなるし、違法な動画を見る理由もなくなっていくのではないか」と期待しています。

会見後に握手をする両社長
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