コラム
» 2009年06月12日 12時00分 公開

映画はこうして作られる――映画プロデューサーの仕事とは(前編)(4/4 ページ)

[堀内彰宏,Business Media 誠]
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製作委員会とは

 製作委員会というのは僕の会社を例に挙げて説明すると、まずGONZOで企画開発をして著作権を作ります。そして、出版社さんやビデオメーカーさんたちと権利の交渉をしながら製作委員会をみんなで作って、出資者を募ります。そして完成した作品をテレビ放送したり、DVDで売ったり、ゲームにしたり、海外に売ったりといろんな形で権利を行使して、資金を回収します。製作委員会では出資するパートナーと、事業をするパートナーがほぼ一緒なのですが、投資する顔と事業する顔は2つに分けるというのが基本的な考え方です。

製作委員会モデル(出典:首相官邸)

 最近いくつか出てきているのが、2ポットの製作委員会という考え方です。下図のように、日本の製作委員会と海外の製作委員会を作って、それぞれ自分のテリトリーで商売をしましょうというやり方です。海外に対してほとんど仕事がしたことがない日本の会社の中には、「海外から入る収入を期待して商売することはできない」というところもあるので、そういう会社は国内の製作委員会の出資だけでやっています。逆に海外の会社には、「日本ではどういう商売になるのか分からないから、海外だけで商売を進めていきたい」ということもあるのでポットを分けるケースがあるのです。

 2つだけではなくて、3ポット、4ポットでやるケースも増えてきています。ハリウッドではスプリットライツという言い方をしているのですが、米国での配給は20世紀フォックスでやるけども、それ以外の地域での配給はドリームワークスでやるというような例があります。1997年の『タイタニック』が好例ですが、1社で300億円の制作費を負担できないので、20世紀フォックスが米国での配給はパラマウントにお願いしてお金を先にもらうというやり方をしていました。

 投資だけではなく、銀行から融資を受けてものを作りましょうというやり方もあります。融資の場合は返済することが大前提になるので、返済できる見込みがある事業であればそういうやり方もありだと思います。

米国のプロデューサーは?

 米国のプロデューサーはどうやっているか? 米国のプロデューサーは自分でリスクをとって会社を作っているので、そのリスクに見合うだけの報酬をもらいたいと考えています。そのためにどうするかというと、著作権を自分が持つ形にするのです。そうすると成功した時に全部自分のものになりますから。

 それでは著作権を自分が持つためにはどうしたらいいかというと、すべての資金を自分で調達することが一番簡単です。しかし、自分の信用力で銀行からお金を借りられる人はそんなにいないですし、やろうとしている事業が商売になるかどうか見極める力は銀行の人たちにないので、簡単には融資してくれません。

 ではどういうスキームがあるかというと、“完成保証”なる「ものができあがったらお金を返してください」というシステムがあります。銀行が融資する際に完成保証という保険が担保としてかけられるのです。

米国の完成保証制度(出典:首相官邸)

 流れを説明すると、プロデューサーはテレビ局や配給会社の人たちに「この原作で、このキャストでこういう映画を作ります。脚本とキャストしか分からないのでどんな出来になるかは分からないのですが、できあがったら最低これだけのお金を払ってください」と交渉します。最初から資金を出したくはないけれど、ブラッド・ピットが主演で、スティーブン・スピルバーグが監督だったら、ある程度は売れるのではないかと思う会社があれば、「映画ができあがったら権利を買いますよ」という内容の契約をします。

 「できあがったら買います」という契約のことをネガティブピックアップと言うのですが、プロデューサーはその契約書を持って銀行に行きます。銀行としては映画が完成するか分からないし、ブラット・ピットが辞めてしまうリスクもあるので保険会社に保険を頼んだ上で融資をするのです。すると保険会社は作品が完成しないと困るので、「スケジュール通りに制作が進んでいるか」「クオリティが守られているか」ということをアシスタントプロデューサーとして毎日現場でチェックをします。こうしてものが完成したら、ネガティブピックアップした配給会社に契約書の金額で買ってもらって、そのお金を銀行の方にそのまま返すのです。

 その段階ではプロデューサーの手元には基本的に何も残りません。しかし、映画が公開されてお金が入ってきたら、作品の権利を持っているプロデューサーにもどんどんお金が入ってくる仕組みになっているので、米国ではみんな独立してプロデューサーをやってお金持ちになっていくのです。米国では銀行にいた人や弁護士、公認会計士がプロデューサーの仕事をしているケースがとても多いです。

 なぜそうした高収入の人がプロデューサーになるのか? 作品を制作する流れの中で、弁護士は契約書のところ、公認会計士は全体のスキームの管理の仕事をするのですが、全体像が見えてくると「こんなおいしい商売はないだろう」とみんな思うのです。「こういうスキームで商売をすると、自分はどれだけ稼げるか」というのは、自分がお手伝いしたプロデューサーを見ていれば大体分かるので、みんな自分の仕事を投げ打ってプロデューサーになるのです。

 僕がギャガに在籍していた時、独立したプロデューサーのところに行って、彼らが作る映画を買うための交渉をすることがよくありました。そんな時に「内田くん、よく来たね。うちにおいでよ」となって彼らの家でパーティすることになると、10年前に1作品だけ当てたというプロデューサーでもビバリーヒルズに500坪くらいの家を持っていて、門から玄関までクルマで5分かかるといった生活をしているので、「みんながプロデューサーになりたいと思う気持ちは分かるなあ」と感じました。

 お金を目的に仕事をしている人がどれだけいるかは分かりませんが、一山当てればそれだけの報酬を稼げるということはある意味面白いことだと思いますし、公平なことだと思います。

 →後編に続く

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