山口智子さん、Jリーグ選手協会、京急百貨店――この3つに共通するものは?郷好文の“うふふ”マーケティング(2/2 ページ)

» 2009年06月18日 07時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]
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フォレストックは低コストで

 フォレストック認定とは、日本林業経営者協会が2009年2月から開始した「生物多様性が豊かな森林ごとにCO2吸収量を算定・認定し、CO2吸収量を購入した個人/事業者に認定証を発行する制度」。認定林の森林管理の費用として、1トン当たり1000円(年間)を購入者が負担する仕組みだ。1ヘクタール当たりの管理費用は1万円になるが、これは欧州排出権市場でのCDM(クリーン開発メカニズム)取引価格の2分の1。一括購入して販売商品ごとに分割することでも認定証は発行できる。今年の京急百貨店のキャンペーン“楽eco”では、宮城県刈田郡の森林を対象にしている。

ネクタイを1本購入すると、CO2排出量6キロ削減に協力できる

 京急百貨店の6階紳士服売場のネクタイコーナー。並んでいるのは、25ブランド3000本のネクタイ。ラルフローレンでも無名ブランドでも、1本購入すると6キロのCO2吸収量をオフセット、「森林のCO2吸収認定書」ももらえる。1トン分オフセットするのに1000円の負担なので、ネクタイ1本で6キロ分オフセットということは楽ecoのコストは6円ということになる。販売価格は変更せず、京急百貨店が負担するという。

 もちろん社内での認定書や販促物制作の費用、関係者の人件費はかかる。提携先(株式会社エコノス=カーボンオフセットのプロバイダー)との費用もあるかもしれない。それでもトータルで大したコストではないだろうから、仕入れ先には負担を求めていないという。定番商品での低コスト販促ということにもなっているのだ。プレスリリースの「販売目標500本(前年368本)」と、スーパー正直な数値にも好感が持てる。

現場からのエコ意識が根付く

 京急百貨店では父の日のネクタイだけではなく、お中元でもカーボンオフセットを行う。2008年はスーパードライと日清オイリオのギフト4品目だけだったが、2009年はキリン一番搾り、カゴメフルーツジュースも加えた7品目で展開。さらに多くの売場で「エコ商品ポイントプレゼントキャンペーン」を開催。エコマーク付き商品が各階にあることで、「各売場の品揃え担当者にエコが浸透してきたのが収穫」と広報担当の宮崎史康マネージャーは話す。

 今後の展開にもスジが通る。横浜市水道局の「水源エコプロジェクト(W-eco・p、ウィコップ)」と連携して、横浜市の水源である山梨県道志村の森林10ヘクタールを5年間整備する協定を結んだ。この水源の森林の整備「やまなしの森づくり」のカーボンオフセットを2010年の楽ecoから導入する。遠い地の森林管理よりも、横浜市民が納得しやすいだろう。森林には命名権もあり、「●●の森」の名称は一般公募。記念の植樹式には15組30人の親子を招待する予定だ。

ecoの現実と光明

 近頃のエコはお上頼みとお得感だけ。せっかくの景気回復にケチは付けたくないが、「エコカー減税、エコポイントなら買う」という日本人のエコ意識の現実はサムい。

 京都議定書の温暖化ガス削減目標は6%、そのうち3.8%は森林で吸収することが求められており、戦中戦後に植えた杉・ヒノキの人工林の伐採と管理で実行する予定。フォレストック認定もその1つの手段だ。ところが売れば赤字の国産材、山林主は管理費さえ惜しむ。しかも国産材を扱う施工会社もごくわずか。こんな実情を解決できないお上の政策もサムい。

 だが京急百貨店の取り組みを見れば光明はある。現場からの提案、日々の品揃えでの展開、低コストでの実施、地域のエコと連携。1店舗でできることを全国に広げる。2008年にも“楽eco”を行っていたのだが、その反響が大きくて同業者とおぼしき人がコツを聞くためかしつこく長電話してきたそうだ(笑)。堂々と真似て、全国の百貨店でやればいいと思う。心のフトコロの深さこそがエコ成功のポイントなのだから。

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