『白夜』というドラマでは、冷戦下の南北朝鮮にロシアが絡み、歴史に翻弄(ほんろう)される北と南の兵士が描かれています。ロシアの北朝鮮への裏切り、北朝鮮の無知から来る無謀さ、南の“米国との癒着と反発”など、歴史の中での民族の多彩な感情が織り込まれています。
「祖国、祖国って言わないで! 私たちの祖国はいったいどこだって言うの?」と主人公の女性は叫びます。彼女の父親は北で生まれた原発開発者で、ロシアに亡命。でも彼女は最後は韓国の国家情報局の男性と恋に落ちる……、最後まで書くのはやめましょう。ドラマとしても見応えがあるので興味のある方はぜひどうぞ。
南北問題を扱った映画はほかにもたくさんあります。『JSA』『二重スパイ』『シュリ』『ブラザーフッド』『シルミド』……、ちきりんはJSAが一番好きです。
これら南北問題映画が最近多いのは、韓国が金大中氏の大統領時代に太陽政策へと転換したためです※。北朝鮮の兵士を“人間的に”描くことは冷戦下ではタブーだったのですが、太陽政策が始まったことによってできるようになったのです。最近の韓国の左化には、こういう映画の影響も大きいのでしょう。
というわけで、恋愛ドラマや人間ドラマを装っていても、事実上、反米映画だったり反日映画だったり、北への皮肉だったりと、韓国のドラマや映画には結構、政治的、社会的なドラマが多いなあと感じます。
思うのは、ドラマで文化や歴史を学ぶのは悪くないということ。台湾や中国のドラマも日本でもっと流れたらいいなと思います。そして、日本のドラマももっとアジアの国で見てもらえたらいいですね。
ちなみに台湾はもちろん中国でも日本のドラマはテレビで流れていますが、韓国ではまだ「地上波で日本のドラマを流すこと」は禁止されています。2005年には竹島(韓国では独島)問題のために、韓国で公開予定だった『火垂るの墓』が取り消しになったこともあります。「日本を戦争の被害者として描いている」というのがその理由です。
残念ですよね。歴史は責めるものではなく、学ぶべきものなのに。
そんじゃーね。
関西出身。バブル最盛期に金融機関で働く。その後、米国の大学院への留学を経て現在は外資系企業に勤務。崩壊前のソビエト連邦などを含め、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から“おちゃらけ社会派”と称してブログを開始。
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