私たちの行動は何に支配されるのか?――『影響力の武器』(2/2 ページ)

» 2010年10月12日 08時00分 公開
[泉本行志,INSIGHT NOW!]
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好意 (liking)

 人は自分が好意を感じている知人に対してイエスという傾向があることを利用するもの。

 この「好意」に影響を与える要因として、「身体的魅力」と「類似性」とがある。「身体的魅力」はハロー効果を生じさせ、「見た目の良さ」が、才能や親切さや知性など、ほかの特性への評価も高める傾向があるというもの。「類似性」は、自分と似た人に好意を感じ、そのような人の要求に対してはイエスという傾向が強いというもので、例えば、セールスマンなどは、自分とクライアントの経歴や趣味が似ていることを強調したりすることも、この心理を利用しようとするものである。

権威 (authority)

 権威あるものからの要求に対しては、服従しなければという潜在的な心理的圧力を利用しようとするもの。これは、必ずしもその権威の実体がなくとも、権威があるように見せかけるもの、例えばシンボル(肩書き、服装、装飾物)に反応してしまう傾向があることを利用している。

 人はある分野の権威に見える人の言うことなどを盲目的に受け入れてしまう傾向があり、「有名な先生の言うことだから、間違いはないだろう」とか、「プロの間でも愛用されている商品だから絶対にいい」と思うのもこの心理が適用されている。

希少性 (scarcity)

 人は機会を失いかけると、その機会をより価値あるものとみなす傾向があり、この心理を利用するもの。

 その原理を利益のために使う技術として、「数量の限定」「最終期限」などがよく使われる戦術。今だけ限定商品などは、まさにこの心理を利用した販促活動。その希少性の原理が最も働く条件は、新たに希少なものになった時で、すでに制限があるものより、新たに制限にあった時に、また、他人と競って求めている時、最も価値が高く感じられる。 

 『影響力の武器』では紹介されている事例や行動心理学の実験内容がとても面白く、食い入るように読んでしまった。ちまたでよく出版されている、営業・マーケティング、交渉術のノウハウ本で紹介されている心理学的手法の多くは、本書がベースになっているのではないかと思う。

 本書で説明されている承諾誘導の「引き金」を知り、相手からの承諾を得るためのヒントを学ぶとともに、捏造(ねつぞう)されたインチキな「引き金」に対抗するためにも、何度も読み返えす価値ある1冊である。(泉本行志)

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