企業はサプライヤの広告に協力すべき?――Dell「信じる道をいこう」キャンペーン(2/2 ページ)

» 2010年10月13日 08時00分 公開
[中ノ森清訓,INSIGHT NOW!]
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大手企業は協力しにくい

 大手企業は、こうしたベンチャー企業や成長企業の貪欲な姿勢に学ぶべきではないか。買い手企業は、もっとサプライヤの広告宣伝に協力した方が良い。

 サプライヤの広告宣伝に協力して、買い手企業が失うものは何だろうか? サプライヤにこびてまで、PRの機会やキャッシュリターンを得ようとすることは浅ましいことだからだろうか。

 だが、実際に広告を見て、そういううがった見方をする人は少ない。日本では金もうけに貪欲であることをさげすむ傾向があるが、ビジネス、商売は金もうけだ。金もうけに貪欲であって格好悪いことなどあるわけがない。金もうけに貪欲であることが格好悪いのは、それが中途半端であったり、倫理無視であったり、法律違反であったりする時だ。自分で使って良いと思ったものを良いと勧めるところのどこにやましいところがあるだろう(人に勧めるほどではないと思う商品・サービスについてはこの限りではない)。

 確かに、そのサプライヤがほかの企業に対してヘマを犯す可能性はある。その点については、協力にあたっては、買い手企業がサプライヤの商品・サービスを保証するものでないことを広告宣伝利用時に明確にすること、それによって他社と問題が生じた時には、広告の即刻差し止め、買い手企業への損害の防止にそのサプライヤをして努めさせること、買い手企業に損害が生じた時には、その賠償をすることなどを協力の条件とすればよい。

 ただ、買い手企業が満足しているサプライヤであれば、こうした問題を起こすことは少ない。すでに、そのサプライヤの実力を買い手企業は評価しているからだ。それで問題がなかったのであれば、この機会を存分に活用することを考えた方が良い。

 サプライヤが買い手企業に協力してもらいたいのは、新聞の全面広告のような大きな話ばかりではない。お客さま事例のパンフレットの作成であったり、自社Webサイトでのインタビュー掲載、会社紹介資料にひと言「私もこの製品を使っています」というような細かい話かもしれない。

 ところが、これはサプライヤにとっては細かい話どころか、大きな話だ。サプライヤにとって、こうした協力が得られる機会はなかなか少ないので、サプライヤからは非常に感謝される。開発案件であれば、これが成功すれば、さらなる広告宣伝の機会が見えているので、それが買い手企業の案件に注力する大きなインセンティブになる。

 サプライヤの広告宣伝に協力することは、買い手企業が思うほど、リスクがあるわけではない。ルールや倫理を守った上で収益を上げることに企業が貪欲であるのは、賞賛こそされさげすまれるものではない。自分が良いと思ったものを良いと他者に勧めてPRの機会を得る、キャッシュベネフィットを得る、サプライヤのモチベーションを高める……、誰もが得をするこんな機会はもっと活用すべきだ。

 買い手企業の評価は、サプライヤにとっては、買い手企業が思っているよりもかなり大きな価値を持っているものだ。買い手企業は、こうした機会をもっと活用した方が良い。(中ノ森清訓)

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