10万円硬貨が13万9710円になっている誠 Weekly Access Top10(2011年8月13日〜8月19日)

» 2011年08月26日 12時00分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

 先週最も読まれた記事は「スマートフォンはなぜ、『速度規制』されるのか」。2位は「“未踏峰”を目指す日産、ゴーン社長に死角はないのか」、3位は「今、日本人の平均年収はめちゃめちゃ増えている」だった。

 時事日想月曜担当の藤田正美さんが「米国債格下げで金利は上昇する? いや、そんなに単純じゃない」「何が世界経済を変調させたのか?」などで毎週のようにお伝えしている世界情勢。

 米国やユーロ圏国家の債務懸念で、米ドルやユーロは信頼を失っている。その受け皿として日本円が買われており、8月19日には対ドルで史上最高値となる1ドル=75円台に突入した。

 そしてその日本円以上に人気を集めているのが金である。過去最高値を更新し続けており、ここ数日はやや下げているものの、田中貴金属工業の小売価格を見ると1グラムあたり4657円(8月26日時点)と、5年前の約2倍、10年前の約4倍の水準となっている。

金価格推移(出典:田中貴金属工業)

 目下の状況に対して、バブルという言葉も出ているのだが、この金価格高騰のために奇妙なことが起こっている。それは純金製記念硬貨の価値である。

 発行者に利益が出るように、記念硬貨は地金の価値より高く額面価格を設定するものなのだが(後述するように近年は少しやり方が変わっているが)、この相場の変動で地金の価値が額面価格を上回っているものが出てきているのだ。貨幣として使うより、貴金属として使った方が高くなっているのである。

 戦後の純金製記念硬貨の額面と現在の地金価格を示した一覧が下の表である(地金価格は1グラムあたり4657円で算出)。

名前 発効年 販売価格(円) 額面価格(円) 重量(グラム) 地金価格(円)
天皇陛下御在位60年記念 1986〜1987 100000 100000 20 93140
天皇陛下御即位記念 1991 100000 100000 30 139710
皇太子殿下御成婚記念 1993 50000 50000 18 83826
長野オリンピック記念 1997 38000 10000 15.6 72649.2
天皇陛下御在位10年記念 1999 41000 10000 20 93140
2002FIFAワールドカップ記念 2002 40000 10000 15.6 72649.2
2005年日本国際博覧会記念 2004 40000 10000 15.6 72649.2
天皇陛下御在位20年記念 2009 80000 10000 20 93140

 天皇陛下御在位60年記念は額面10万円に対して地金価格は9万3140円とやや下回っているのだが、天皇陛下御即位記念は額面10万円に対して地金価格は13万9710円、皇太子殿下御成婚記念は額面5万円に対して地金価格は8万3826円と大幅に上回っているのだ。

 長野オリンピック記念以降の純金製記念硬貨は、額面より高い価格で販売されるようになったのだが、長野オリンピック記念は販売価格3万8000円に対して地金価格は7万2649円、最新の天皇陛下御在位20年記念は販売価格8万円に対して地金価格は9万3140円とこちらでも上回っているのである(ともに額面は1万円)。

 「金価格が値上がりしたら地金として売って、値下がりしたら普通に額面で使えばいいから損しないじゃん!」と思う人もいるかもしれないが、もちろん貨幣を鋳つぶしたり、鋳つぶす目的で収集したりすることは貨幣損傷等取締法で禁止されているので、鋳つぶして地金価格で取引するなどしてもうけることはできない。

 ただ、できないはずなのだが、Yahoo!オークションなどを見ていると、地金価格にある程度連動して、純金製記念硬貨の入札価格が上昇している雰囲気がうかがえるのである。記念切手のように単純にプレミアが付いているだけなのかもしれないが、なかなか発覚しにくいものなので、怪しい組織が純金製記念硬貨を集めて、鋳つぶしていたりもするのかなとも思ったりもする今日この頃である。

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