3つ目は、「研究会」と言われる勉強会が、多く存在していることである。
棋士たちは、基本的には勝負の世界のライバル同士。勝つために、進化していく定跡や誰がどう指したという情報を仕入れ、研究を重ねた上で次回の対局に備える。本来であれば、いつか対局するかもしれない相手に手の内は見せたくないはず。そう考えれば、研究会など成立しないと思うのだが、実際にはかなり盛んに行われている。
これは恐らく、目の前の勝ち負けより、「強くなる」ことを目的にしているからではないかと思う。自分の知識を隠したまま目の前の相手に勝利するよりも、研究会で披露してみんなにもんでもらい、切磋琢磨する方が、自分の将来にとって良いと考えているのではないかと想像する。
会社は何も言っていないのに、何人かが集まって、テーマを持って勉強を続けている。仕事上の成功や失敗を共有して、そこから何か学ぼうとする人たちのグループがいくつもある。こんな会社があったらすばらしい。しかしながら現状では、会社が用意した研修を社員に無理やり受けさせているとか、上司に言われて初めてみんなで仕事上の経験を披露・共有するといった組織が圧倒的に多い。
それは目的や向上心の差で、「勝負の世界と企業組織とは違う」と言われそうだが、そうは言わずに、自主的に学ぶ、インフォーマルなグループができてくるための仕掛けを検討してみてはどうかと思う。(川口雅裕)
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