先進国にとっての労働は「暇つぶし」なのか小飼弾×松井博、どこへ行く? 帝国化していく企業(3)(3/4 ページ)

» 2013年06月24日 00時00分 公開
[野本響子,Business Media 誠]

餓死するほど貧乏で、国が買えるほど金持ち

松井:今の世の中は結局のところ「娯楽社会」で、みんな単純に働きたいから働いてて、本当になくて困るものを生産している人って少ない。ちょっと前まではiPhoneがなくても普通に生きていましたよね。

 いま生産しているほとんどのモノって娯楽でしかない。面白おかしく生きる社会というか、暇つぶしですよね。

小飼:暇つぶしの一環として、“社畜ゲーム”に加わるという感じですよね。社畜でも戦士でもいいけれど、ゲーム感覚でないと付き合いきれない。

松井:アップルを辞めて思ったのは「仕事って遊びなんだ」ということ。当時はリアリティを持っていたのに、辞めてみると「ああいうことを本当にやってたんだ、オレって」と思う。

 僕はものすごく働いていたのですが、それで何を得ているかというと、ほかの人とほとんど変わらない。友だちでバスの運転手がいますが、彼の息子もiPhoneを持っているし、クルマも持っている。「あれ? 何も差がないじゃないか」と。

 彼と僕の何が違うかというと、多少家が広いとか多少クルマがいいとか、その程度なんですよ。自己満足的にポルシェに乗るか、それともカローラで済ませるか、といった違いはあってもやれることにはなんら差がない。

 結局のところ、“ゲットリッチゲーム”をやってただけという気がしますね。「オレはこんなに稼いだぞ」って。ゲームのスコアがお金だって感じです。「生きる」って暇つぶしの感覚に近い……だったらなるべく面白い遊びをやろうと。

小飼:でも「それでいいじゃん」って言うためには、いまだに世界に残っている貧困問題は解決しておきたいですよね。そうでないとやっぱりゲームをするときに、後ろめたいし、後ろ指さされるでしょう? 貧困を撲滅するゲームというのはとっととクリアしておきたい。

松井:そうですよね。本当の貧困は、きっちりクリアしなければいけません。

会社で働くというのはどういうことなのか。“社畜ゲーム”に参加するようなもの!? (写真はイメージです)

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