入社したてのころの「こんな仕事がしてみたい」という思いは大切にしてもいいものですが、それは本当の「やりたい仕事」「自分が成すべき仕事」ではないかもしれません。表面的な部分を見て、憧れているだけというパターンも多いからです。
3年、5年、10年と働いて、選択肢を呼び寄せながら自分を発展させていく。その過程で見えてくる「やりたい仕事」が本質と言えます。はっきり言ってしまえば、20代は希望する仕事ができないことに対して、焦らなくていいのです。私自身も、今でこそ教育関連の仕事をしていますが、30代半ばになるまで、自分が教育の道で食っている、ましてや、それを天職と感じているなどとは夢にも思いませんでした。
米・コロンビア大学で哲学を教えるジョシュア・ハルバースタムは、著書『仕事と幸福そして人生について』の中でこう書いています。
私たちは仕事によって、望むものを手に入れるのではなく、
仕事をしていくなかで、何を望むべきかを学んでいく。
仕事は正解がない問いに対する、自分なりの答えづくりだと考えています。正解がないというのは、逆に言えば、どんな環境の中でも正解は作り出せるとも言えます。ここで言う“正解”とは、仕事をうまくやることにとどまりません。
仕事に自分の味わいを醸し出すこと。仕事に没頭できる意味を付与すること。そして最後に「ああ、人生いろいろあったけど、結局、自分はこの仕事と巡り会うことが必然だったのだ」と振り返られること。これが自分なりの正解をつくり出す戦いに勝利した証です。
何はともあれ、長く遠い職業人生が始まりました。当面は仕事に振り回されるばかりで大変かもしれません。しかし仕事は、学びの機会であり、成長の機会であり、人とつながる機会であり、社会に貢献できる機会でもあります。それらの機会を、給料をもらいながら体験できるのですから、こんないいことはありません。
どのみち、仕事は“しんどい”ものです。ですが、そこを「しんどいけど面白い」「厳しいけど充実している」に持って行けるかが大事です。そのために、ここでお話ししたことが役に立てば幸いです。(村山昇)
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