そのブランドにいくら払っている?――紙袋から考えた“ブランド力”:現役東大生・森田徹の今週も“かしこいフリ”(3/3 ページ)
同じ品質の製品であっても、ブランド付きの製品にはついつい高い値段を払ってしまうもの。ノーブランド製品以上の価格で買わせてしまうブランド力が強いのはどの企業なのだろうか。電機メーカーを例にして比較してみた。
電機メーカーのブランド力
ここでは1999年から2003年の財務データを用いて、PDの計算で原価をかける前のデータ(売上原価に対するブランドの超過収益率×ブランド起因率)を計算してみよう。比較するのは、東芝、松下電器産業、キヤノン、シャープ、日立製作所、ソニー、三菱電機、日本電気、松下電工、富士通の10社である。
計算すると、以下のグラフのような結果となった。
ソニーのブランド力が低いのが意外な感じだが、超過収益率自体はキヤノンに次ぐ第2位。広告費が低く、独特のデザインや技術力、あるいはプレイステーションなどの独自の製品といったブランド以外の要素が高い超過収益率に寄与しているのだろう。
こうして簡易的な指標を出してみるだけでも、製品を買う時に我々が具体的に何に対して対価を支払っているかが如実に分かって面白い。このケースだと、電化製品の場合は、ブランドに対して払っているコストは高くて原価の2%程度ということになる。有り体に言えば、「日本の電化製品が高い」と感じるなら、たいていは過剰な人件費や過剰な品質に対して対価を支払っていると考えればいいことになる。
恐らく高級ファッション業界で同様の数値を計算すると、驚くような値が出るはずなのだが……。LVMHの決算にセグメント別の詳細な収益が載っていないのは何とも悔しい限りである。
ちなみにLVMHのファッション&レザーグッズ部門の営業利益率は30.8%である。営業利益率が悪いワインやら香水やらを入れても全体の原価率は36.23%なので、ファッション部門だけで見ると相当低い原価率(=高い超過収益率)になっているだろう。ユニクロの原価率49.8%(2009年第3四半期)やユナイテッドアローズの原価率48.6%(2008年度末)より圧倒的に低いので、恐るべきブランド力と言ったところか。
ところで、このモデルではブランド力はあくまで比率で原価に加算されるので、ブランドロゴが付いていても原価の安い紙袋ならその効果は小さい。だから、市場に流通させれば数百円の紙袋でも、女性にとってのブランド力(あるいはブランド価値)は皮のバッグと大して変わらないということなのだろうか。
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