米国債の債務不履行が世界恐慌を招きかねない理由:藤田正美の時事日想(2/2 ページ)
米国の累積債務額が17兆5000億ドル(およそ1750兆円)に達し、債務上限額を引き上げないと国債の償還ができなくなる恐れが出てきた。米国債のデフォルトを避ける手段とは?
共和党が“人質”にしたのは、米国版国民皆保険制度
いかに頑迷な共和党(というより党内「派閥」のティーパーティー運動と言ったほうがいいかもしれないが)でも、世界を再び金融不安に陥れたという「汚名」は受け入れがたいだろう。しかも、そもそも共和党が2014年度予算や債務上限額引き上げで突っ張っているのはいわゆる「オバマケア」(医療保険改革法)なのだが、この実施を延期しようというのには正当性がない。
医療保険改革は、4000万人とも言われる「無保険者」をなくして、事実上の国民皆保険を実現しようとするものだ。国民に補助金を出したり、罰則を科して医療保険に入らせようとするこの法律は、個人の自由を侵害するとして違憲とする判例もあったが、結局は連邦最高裁で違憲ではないとの判断が下った。議会で賛成多数で成立し、大統領も署名し、連邦最高裁で違憲ではないという決定が下った法律を実行するのは当然の話だ。
これを連邦議会下院で多数派を握る共和党が1年実施を遅らせるために、連邦予算や政府の債務上限引き上げを「人質」に取ったという形である。もしこうしたことが許されるなら、上院ないし下院で野党が過半数を握れば、重要法案を人質にして自分たちの意思を押し通すことが可能になるということだ。日本でも、参院で予算関連法案の通過を妨害して首相の首を取った政党があった。取られても当然と思える首相ではあったが、あのやり方はフェアではない。同じように、米共和党のやり方はフェアではない。
オバマ大統領が誕生して、これまで2回の国政選挙があった。2010年の中間選挙、そして2012年の大統領選挙である。確かにオバマ大統領はこの間、支持率を落としてきた。それでも大統領として再選されたし、共和党も上院は過半数を握ることができなかった。多数派が横暴になるのは避けられないところもあるが、少数派が横暴になるのは、民主主義を殺すことでもある。
速やかに2014年予算案を通し、債務上限を引き上げる。それが大統領継承権第3位の下院議長ジョン・ベイナー氏の責務である。
関連記事
- 米国の予算審議が滞り、世界景気の腰を折る
米国の2014年度予算の審議が進まず、17年ぶりに連邦政府の一部機能が閉鎖されるという異常事態に陥っている。もう1つ、債務上限枠の引き上げ問題もあり、世界経済はワシントンの動向を注視している。 - バーナンキ議長の後任はやっぱりバーナンキ? 米中央銀行総裁人事の行方
金融超緩和政策を取るFRBのバーナンキ議長が2014年1月に2期8年の任期満了を迎える。ポスト・バーナンキは誰になるのか? 候補者の名前は多く上がれども、バーナンキ続投の目も捨てきれない。 - 金融緩和、振り上げた拳をどう下ろす?
振り上げた拳は下ろさなければならない。それは誰しも分かっていることだが、残念なことにそれが実感として分かるのは、下ろすときになってからだ。 - 動き出す消費増税と社会保障改革、安倍首相が歩むいばらの道
予想どおり自公の圧勝で終わった参議院選挙。ねじれが解消したとはいえ、安倍首相の前にはどれも一筋縄ではいかない問題が山積している。 - ユーロ圏の銀行に経営破たんのきざし
欧州の銀行のPBRは1を割っている。割安というよりも投資家が怖くて手を出せないともいえる。日本の銀行がバブルがはじけて以来、不良債権処理が大変だったのと同じ状況だ。 - 藤田正美の時事日想バックナンバー
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.