Mobile:NEWS 2002年12月17日 10:13 PM 更新

“次世代携帯”の最新状況はどうなっている?

国内3社の第3世代携帯電話(3G)サービスが、ついに勢揃いする。これからの10年を担う役者はそろったわけだが、今年から来年の状況はどうなのだろうか。「FOMA」「CDMA2000 1x」、そして「Vodafone Global Standard」の最新状況をまとめてみたい

 J-フォンが第3世代携帯電話サービス(3G)のスタートを決定したことで、国内3キャリアの3Gが出そろった。各キャリアが“3Gへの本格移行が始まる”としている2004年はすぐにやってくる。では、その助走段階といえる2003年は、どんな状況でやってこようとしているのか。

 まずは3社の3Gサービスの概要をまとめておこう。“3Gサービス”自体は、けっこう曖昧な概念で、(1)固定網なみの音質(2)144Kbps以上のデータ通信(3)国際ローミングの3点が基本条件(用語)。ITU:International Telecommunication Union(国際電気通信連合)が、3Gを名乗れるいくつかの通信方式を勧告しており、そのうちの2つが、ドコモ/J-フォンが採用する「W-CDMA」とKDDIの「CDMA2000 1x」となる。

キャリア通信方式利用周波数帯通信速度
ドコモW-CDMA2GHz帯384Kbps
J-フォンW-CDMA2GHz帯384Kbps
KDDICDMA2000 1x800MHz帯144Kbps
CDMA2000 1x EV-DO800M/2GHz帯平均600Kbps(データのみ)
当初2GHz帯の利用が予定されていた3Gだが、800MHz帯の利用が可能になったり、144Kbpsでも3Gを名乗れるようになったりと紆余曲折があった。CDMA2000 1xを一部で2.5Gと呼ぶことがあるのは、そんな事情による

 国内3キャリアは早晩3Gへの移行を予定しているが、スケジュールは各社大きく違う。

スタートは早かったが伸び悩むドコモ

 最初にサービスを開始したのはドコモ(2001年9月の記事参照)。「FOMA」ブランドで2001年10月からサービスを開始し、早くも1年が過ぎた。しかし、当初予定していた契約者獲得目標には全く手が届かず、先日、2003年3月末時点の目標を32万契約に大きく下方修正したばかり(12月12日の記事参照)。それでも2002年11月末時点の契約者は14万9000に過ぎず、残り4カ月で倍増させる計画だ。

 そのための武器となるのが、待受時間を大幅に伸ばした3つの新端末(12月10日の記事参照)。FOMAが伸び悩んだ原因は、(1)バッテリーのもちが悪い(2)サービスエリアが不十分(3)端末ラインアップの不足 にあるといわれていた(2月8日の記事参照)。新端末では待受時間を180時間レベルまで高めると共に、サービスエリアも2003年3月で人口カバー率90%を達成。2003年には、機能面でも現在の主力である「50xシリーズ」を追い抜く予定だ(12月10日の記事参照)。

 ただし国際ローミングについては、あくまでW-CDMA方式にこだわる。欧州各キャリアはW-CDMA方式に移行する予定だが、スケジュールは遅延を繰り返しており、ドコモの国際ローミングもそのスケジュールに合わせる形になる。

順調に契約者数伸ばすKDDI

 ドコモに続いて3Gサービスを開始したのがKDDIだ。2002年4月にCDMA2000 1x方式でサービスを始め(3月11日の記事参照)、8カ月が経過した現在、既に400万契約に達した(12月9日の記事参照)。KDDIでは、1300万を数える契約者数のうち、2003年3月末には700万契約を3Gに置き換える計画。既に“3G端末しか出さない”予定で、順調に移行を進めている。

 もっとも他社の3GとKDDIの3Gでは、スタート時からエリア面で大きな違いがあった。2GHz帯という新しい帯域でサービスを始めたドコモ/J-フォンに対し、KDDIは従来と同じ800Mz帯でスタート。CDMA2000 1x方式は、従来のcdmaOneと互換性があり、開始当初から音声および64Kbpsのデータ通信については全国エリアで利用できた。CDMA2000 1xという通信方式も韓国では2000年末から商用サービスが始まっており(2001年7月の記事参照)、手探り状態でスタートしたドコモのFOMAとは状況が異なる。3Gが順調なのも当然の結果、KDDIの思惑通りだ。

 次のマイルストーンは、2003年春に予定している「CDMA2000 1x EV-DO」の導入になるだろう(7月19日の記事参照)。EV-DOはデータに特化した通信方式で、W-CDMAやCDMA2000 1xに比べて通信コストが安価であり、最大2Mbps、平均600Kbpsと高速なことが特徴(2001年7月の記事参照)。他社が3Gで出遅れる中、今度は“安価で高速なデータ通信”をウリにさらなる飛躍を目指す(11月19日の記事参照)。

 国際ローミングに関しては、cdmaOneを導入済みの北米を中心に既にローミングを行っており、特定の端末のみだが利用可能だ。

“ひっそりと”サービス開始するJ-フォン

 これまで延期を繰り返してきたJ-フォンも(4月24日の記事参照)、この12月20日からW-CDMA方式による3Gサービスを開始する予定だ(12月3日の記事参照)。しかし、通信の基礎部分の開発に手間取り、サービス内容は現行の「写メール端末」におよばない。2003年夏以降までは、メールもWeb閲覧もできないなど、一般に受け入れられる端末ではない。そうした事情もあって、サービス開始もかなりひっそりと行われるもようだ。

 ただし3Gへの注力は怠らない。2003年8月には、人口カバー率95.4%を目指し、「現行の端末と同等のサービスエリア」までもっていく予定だ。向こう1年の契約者数目標は100万をうたっているが、これがどうなるかは来年夏以降の端末とサービスにかかっている。

 国際ローミングだけは、J-フォンの3Gが積極的な部分だ。当初からW-CDMAとGSMのデュアルモード端末を用意し、海外のGSM圏で利用できる。海外の事情を簡単に説明すると、事実上の世界標準がGSM方式で、日本を除くほぼすべての国で利用できる。それに次ぐのが北米を中心とするcdmaOne方式だが、欧州では採用国が少なくローミング地域は限定される。GSM陣営はパケット通信対応のGPRS方式を経由してW-CDMA方式に向かうことが見込まれているが、移行時期は先送りを繰り返されている。

いずれは3G……。しかし

 2004年から2005年を目処に、いずれは主流は3Gへ向かう──。各通信キャリアはずっと、そう説明してきた(2001年4月の記事参照)。しかし2002年も終わりに近づくにつれて、特にW-CDMA陣営では当初の勢いがなくなってきている。

 ドコモではFOMAへの移行状況について「当初に比べると後ろにスライドした」(津田志郎副社長)とコメント。J-フォンのDarryl E. Green社長も2002年当初の意気込みは失われてきている。

 予想以上に盛り上がらない理由の1つは、やはりサービスエリアだろう。いくら人口カバー率90数%といっても、2GHz帯を使うW-CDMA方式の場合、建物の奥や地下など利用できない場所は多い。従来利用していた800M/1.5GHz帯に比べ、2GHz帯という高周波帯は電波の直進性が強く、建物の奥などに浸透しにくいといわれているからだ。また小型基地局の開発も遅れており、地下街などのカバーには時間がかかりそうだ。ドコモが「数値に表れない補強」(津田氏)として、FOMAとPDC(従来方式)を合わせて利用できるデュアルモード端末を開発していることからも、それが分かる。

 2つ目は、W-CDMAの2社では、3Gならではのサービスが見えてこないことだ。ドコモのFOMAにしても、従来できなかった新サービスといえばテレビ電話くらい。この冬の端末からは撮影した動画を送信できる「iモーションメール」に対応するが、受信できるのは新型FOMAとPCに限られ、コミュニケーションツールとしてはプラットフォーム数の不足が懸念される。J-フォンに至っては、テレビ電話以外の“3Gのウリ”となるサービスは発表されていない。

 これら2つの“理由”はKDDIには当てはまらない。ムービー再生可能な端末は60万台以上、動画をメールで送信できる端末も20万台を超えた(12月9日の記事参照)。今後も、動画を3Gの柱として位置づけ、標準的な機能にもっていく考えだ。

 しかし、2004年、2005年という先の状況は見えない。通信方式自体としては、CDMA2000よりもW-CDMAのほうが優れているとされており、KDDIにCDMA2000技術を提供しているQualcommですら「将来的には(世界の趨勢が)W-CDMAに移行する」と話しているからだ。



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[斎藤健二, ITmedia]

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