インターネットの中心は“モバイル”と”アジア”に──ソフトバンク 2009年3月期決算(2/2 ページ)
ソフトバンクが4月30日、2009年3月期の連結決算を発表。売上高は微減したものの営業利益は過去最高を更新。フリーキャッシュフローは対前年度比で3500億円近くも増加し、黒字に。この勢いで、2012年3月期には純有利子負債半減、2015年3月期には純有利子負債をゼロにする。
LTEへの投資は複数年に分散、HSPA+を経由して展開
純有利子負債がなくなるまで、大規模な設備投資をしないと明言したことで、次世代インフラへの移行がどれくらいのペースで進むかは気になるところだが、孫氏は「LTEには積極的に取り組んでいく」と明言した。LTEへの投資は、2~3年以内くらいに始まる見通しだという。
「LTEへの投資は1000億円規模を想定しているが、LTEへの投資はある日突然始めて、1年でドンとやるものではない。ネットワークは、端末が行き渡って初めて意味のあるものになる。端末もネットワークも徐々に広がっていくので、複数年に分散して投資していく。その点では、今の設備投資額と同じくらいのレベルで推移できると見ている。設備投資額が今後減るのは、実はテクノロジーとは関係ないところの、鉄塔にかかる金額が減るからだ。ハイテク機器は実は安くて、お金がかかるのは鉄塔の建設。鉄塔の設置がひととおり終わったので、あとは機器のアップデートや追加などで対応していける。だから設備投資のピークは過ぎたと言った」(孫氏)
ちなみにネットワークの技術は、一足飛びにLTEへ行くのではなく、HSPA+のような進化の道を1歩1歩たどる方針だ。孫氏は「私は世界の携帯電話事業者のCEOの中でも、特に投資効率を重視している経営者の1人だと思っている。技術者の視点で、他社に先駆けて新しい技術を導入したりすると、3倍くらい余分にお金がかかってしまったりするので、いち早く手がけることはしない。FOMAの二の舞も演じたくはない。また、テクノロジーの流れを見誤って、戦略で失敗すると、リカバーするのにものすごい時間と労力が必要になる。だから技術の流れは注意深く見守っている。効率よくマイグレーションできる筋道ができているので、それに沿った形で進めていく」と話した。
光ファイバーを必要とする人は、インターネットの利用シーンで遅れている人
ケータイのインターネットマシン化、そしてインターネットのモバイルインターネット化が進むと声高に話した孫氏は、iPhoneを導入してからというもの、ライフスタイルが大きく変化したことを改めて強調した。
「iPhoneを使うようになってから、インターネットの利用頻度が3倍から5倍くらいに高まった。一方で、PCを使ってインターネットにアクセスする頻度は10分の1くらいになった。iPhoneを使っていると、光ファイバーって、どれくらい必要なのかと思うことがある。光を一生懸命使わないといけない人は、インターネットの利用シーンで遅れている人なのではないかと思う。最先端を行っている人は、iPhoneのようなケータイでインターネットを使っている。iPhoneを使う前は、家に帰って1時間や2時間PCの前に座っていろいろなことをしていたが、iPhoneを使うようになってからは、寝る前の5分未満しかPCを使わなくなった。PCを使ってインターネットを見ないといけないことほど遅れたインターネットの使い方はないと思えるほど、利用シーンは変わってきている」(孫氏)
そんな利用シーンの変化から、孫氏は「光ファイバーはそれほど必要とされないのではないか」との考えに至ることもあるという。
「もちろん、Wi-Fiがあれば高速で快適にiPhoneが使えるので、Wi-Fiはあったほうがいいと考えているが、iPhoneに光回線はいらない。Wi-Fiなら、ADSLでも十分。大きな設備投資をして、どんどん減益になって、フリーキャッシュフローを減らして、人々があまり必要としないかもしれないものに投資することは、時代の読み方としていかがなものか。すべてのケータイはiPhone化していくことを考えると、人々の光に対する見方は、1年後や3年後にはだいぶ変わっているかもしれない」(孫氏)
もちろん、光ファイバーが不要だとは孫氏も思っていない。ハイビジョン動画を送ったり、大容量のファイル転送に使ったりと、光が役立つシーンがあることは認識している。またメタル回線も、長い目で見れば光の方がメンテナンス費用などが安くなる日も来るだろうから、日本のインフラとして、物理線をメタルから光に変え、安く提供するという時代は来るかもしれないと見る。しかし、ソフトバンクは「モバイルインターネットの高速化」に未来を見ている。
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