万能秘書はどのサービス?――「Siri」「しゃべってコンシェル」「音声アシスト」を徹底比較(3/3 ページ)
iPhoneの「Siri」が登場して以来、自然な言葉で質問や命令ができる音声認識アシスタントに注目が集まっている。Siri以上との評判も高いドコモの「しゃべってコンシェル」、ヤフーの「音声アシスト」を加え、3サービスについて利用方法や機能を比較してみた。
いろんな質問をしてみた
最後に、いろいろな質問や会話をして、どの程度対応してくれるのかを調べてみた。「スマートフォンって何?」「スカイツリーの高さを教えて」「世界で一番高いビルは?」「10日後は何曜日?」「去年プロ野球で優勝したチームは?」「ドコモの社長の名前は?」など、さまざまなタイプの質問をした。
しゃべってコンシェルは、Wikipediaなどから引用したデータをダイレクトに表示した。ただし、「世界で一番高いビル」の質問の答えがニューヨークのパークロウビルと答えるなど間違いや、「10日後は何曜日?」という質問をエリアガイドで調べてしまうこともあった。それでも、比較的幅広い質問に対応でき、返答も安定感があった。
音声アシストもかなり健闘しているが、質問を理解できないと、「うまくお答えできません」となってしまったり、なぜかYahoo!ファイナンスで確認できると答えることがあった。ただ、「10日後は何曜日?」という質問に日付、曜日、六曜まできっちり返答するなど、ユニークな能力も持っている。なお、Siriはこの手の質問に直接返答することはなく、常にWeb検索を勧めてきた。
この他に、「あなたは誰ですか?」「結婚してください」「眠いです」といったような“おしゃべり”もしてみた。この種のやり取りではSiriの気の利いた受け応えが話題になったが、他の2サービスも負けずになかなか面白い返答をしてくれている。強いていえば、しゃべってコンシェルが一番真面目な印象だ。
一例をあげると、「結婚してください」という発言に対し、Siriは「まあすてき」と言いながら「なにかほかにお手伝いできることはありませんか?」とクールな対応。しゃべってコンシェルには「プロポーズの練習ですね」と、サラッと流されてしまった。音声アシストは「あなたにはもっといい人がいると思います!」と、気遣いを見せつつもきっぱり拒否。これ以外の受け応えも用意されていて、しばらく遊んで楽しめた。
以上、3つの音声認識アシスタントサービスを試してみたが、それぞれに得手不得手のジャンルがある。3サービスの傾向をまとめてみよう。
Siriは自ら「バーチャルアシスタントです」と言うように、スケジュールを組んだりメールを口述筆記して送ったりするのが得意な“アメリカ人秘書”といったところ。日本事情に弱いのでWeb検索に頼るところがあり、日本語もたどたどしいが、iPhoneの内蔵アプリとの連携はスムースで素晴らしい。気分転換のおしゃべりにも付き合ってくれて、言葉はたどたどしくても、慣れてくるとそれが好ましく感じられるようになる。日本での生活に慣れてくれば知識も増え、乗り換え案内やエリアガイドもできるようになって、さらに優秀な秘書に成長してくれそうだ。
しゃべってコンシェルは幅広い知識を持つ“物知り秘書”だ。日本生まれ、日本育ちで日本事情には当然強く、天気予報や乗換案内、エリアガイドが得意。メールの作成やスケジュール管理もそつなくこなすが、仕事の範囲をわきまえて、最後の送信や登録はユーザーに任せてくれる。幅広い知識を活用していろんな質問に答えてくれるが、インターネットで調べたものなので、たまに間違いがあるのはご愛嬌か。3サービスの中ではもっとも安定感を感じた万能秘書だが、さらにパワーアップしそうな予感も。そのうち給料アップを要求されるかもしれない。
音声アシストは、なんといっても乗り換え案内に強い“鉄道マニア秘書”。経由駅を変えた場合のルートを素早く調べて教えてくれるのに感心した。さまざまな質問にも対応してくれるが、知識の幅広さではしゃべってコンシェルにやや劣る印象だ。ただ、分からないことを「ごめんなさい」と素直に認め、「がんばります」と非常に前向きなので、こちらはそう厳しくは怒れない。しかも、Yahoo!JAPANという大物がバックでサポートしているので、急成長も期待できそうだ。
3サービスとも自然な言葉を理解する賢い音声認識機能を備えているが、うまく反応してくれない場合は、こちらも質問や命令の言葉を変えると、きちんと対応してくれる場合があった。例えば「◯◯は?」と聞くとWeb検索をうながされるが、「◯◯を教えて」と言うと直接教えてくれる、ということもあった。質問や命令の意図をはっきりさせると、しっかり反応してくれる可能性が高い。
これらのサービスは、使えば使うほどにサービス側が学習し、データベースが改善されていく。各サービスの得意なジャンルは、「普段使って便利だと思うところ」まで至っていると感じた。これからさらに賢く進化し、将来はSFの中の秘書ロボット――まさに“アンドロイド”のようになってくれることを期待したい。
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