ジョジョ、透明、IGZO、ひと目惚れ――差別化が難しい中で“スゴ味”を感じたスマホたち:ITmediaスタッフが選ぶ、2012年の“注目ケータイ&トピック”(編集部田中編)(2/2 ページ)
2012年は数多くのスマートフォンが登場した一方で、スマートフォンの差別化の難しさも感じさせられた。そんな中で筆者にとって特に印象の強かったモデルをピックアップしてみた。
デザインと質感が秀逸だった「Xperia NX SO-02D」
続いて印象に残ったのが、ドコモの「Xperia NX SO-02D」(ソニーモバイルコミュニケーションズ製)だ。似たようなデザインのスマホが発売されていく中、透明素材「Floating Prism」を用いたXperia NXのデザインは非常に斬新で、Floating Prismの中を優しく照らすLEDも美しかった。
ソニーモバイルは毎年デザインコンセプトを変えており、2012年は「アイコニックアイデンティティ」をコンセプトにしている。カタカナだと分かりにくいが、一目見てソニーモバイルの製品と分かるデザインのことだ。Xperia NXの透明素材は派生モデルを除いてほかの機種では見られず、まさにアイデンティティのあるデザインと言える。透明素材自体に何か機能があるわけでもないし、「透明にしたから何なんだ」という声もあるだろう。それでも、一目見て「おっ!」と思わせる何かがあるのは、個人的にはとても重要だと思う。アンテナを透明に見えるようにするなど技術的な難易度も高く、「他社がまったく同じことをやろうとしたら、2年かかる」――と、取材中に開発陣が生き生きと話していたのが印象的だった。
Xperia NXでもう1つ際立っていたのは“質感”だ。スマホの質感はマットかグロスがほとんど。Xperia NXのWhiteの質感は、どちらかというとマットなものだが、ほかの機種でよく触れるマットとはまたひと味違う。マットなのに、ツルツル、すべすべ、なめらか――言葉にするのが難しいが、直感的に思い浮かんだのがこんな感想だ。開発陣の「彫刻のような美しいたたずまいを見せたかった」という言葉が特に印象に残っており、スマートフォンは、ある種の“作品”であるとも思えてくる。
汚れの付きにくい特殊な塗装を施しているのも特筆すべき点だ。Whiteなので汚れが目立ちやすいが、Xperia NXでは、指でさっとこするだけでたいていの汚れは落ちてしまう。スマホは長く使うだけあり、キレイに保てるのは嬉しい。また素材や塗装が安っぽいと、使うモチベーションが下がってしまうが、質感に惚れ込んだXperia NXは、意味もなく握ったり手をスベスベさせたりしていた(端から見ると危ない人に見られそうだが)。こういうカタログやスペックで図れないところが、ますます重要になってくるのではないかと思う。
このように、Xperia NXは見た目と質感が秀逸なモデルだった。ソニーモバイルは2012年半ばから後半にかけて、「Xperia GX SO-04D」や「Xperia AX SO-01E」など、Xperia arcのアークフォルムを継承させたモデルを多く投入した。持ち心地はNXよりもGXやAXの方が優れていると感じるが、正直なところ新鮮味は薄かった。NXはLTEやFeliCaに対応しないなど機能は物足りないが、ベスト・オブ・デザインを選ぶなら断然NXだ。2013年はさらに新しいデザインテーマを打ち出してくると思うが、arcやNXのような「おお!」と思える新機軸を期待したい。
「IGZO」がバッテリー問題の救世主に?――「AQUOS PHONE ZETA SH-02E」
“新技術”で差別化を図ったのがドコモの「AQUOS PHONE ZETA SH-02E」(シャープ製)だ。何といっても「IGZO」を搭載したことが大きい。バックライトの透過率が向上して表示が明るくなるだけでなく、静止画表示中の画像更新を従来の60分の1に抑えて、省エネ性能が向上している。筆者はSH-02Eをじっくり使っていないので、実際のところはまだ何とも言えないが、「確かにバッテリーが持つ」という声はよく聞かれる。複数のモデルで静止画を表示させ続けたところ、SH-02Eが断トツで持ったという調査結果も見られた(今後レビュー記事であらためて検証する予定)。
スマホのバッテリー問題は一朝一夕に解決できるものではない。物理的に大容量のバッテリーを搭載する方法もあるが、端末サイズが大きくなってしまうのがデメリットだし、ソフトウェアやネットワーク側で制御するにも限界がある。IGZOを搭載したSH-02Eは、そんなバッテリー問題を解決するエポックメイキングな製品と言っても大げさではないだろう。静止画表示中の消費電力を抑える……と言われてもピンと来ないかもしれないが、要は画面の表示内容がまったく動いていないとき。スマホをアクティブに使っていると効果は薄そうに思えるが、一瞬でも画面が止まると更新回数が60分の1に減るので、例えばWebサイトを閲覧しているとき、スクロールをちょっと止めたときなどで小刻みに更新を減らし、それが積み重なると、かなりの省電力を期待できそうだ。
“ひと目惚れ”の名をほしいままにした「HTC J butterfly HTL21」
「ひとめ惚れの予感です。気持ちよすぎるHTC」というキャッチコピーでおなじみの「HTC J butterfly HTL21」。発表直後から多くの注目を集め、12月9日発売ながら、「スマートフォン・オブ・ザ・イヤー2012」では「iPhone 5」など並み居る強豪を抑えて1位に輝いた。筆者はKDDIの発表会場で実物を見る前、紙資料でスペックを見た時点ですでにひと目惚れしてしまい、冬モデルで買うならこれだと即決した。
もちろんスペックだけではない。KDDIの田中社長は発表会でこのキャッチコピーに触れ、「あまりよく分からないけど……(笑)」と話して会場を笑わせていたが、あらためて考えると、非常に的を射たコピーだと思う。ディスプレイ面にラウンドのかかったボディはフルHD液晶と相まって美しく、板のように薄いので持ち心地も良い。Xperia NXでも触れたが、この「わけもなく触ってみたくなる」ボディが製品への愛着につながるのだ。動作やバッテリーの持ちも安定しており、使っていても“気持ちいい”。長く愛用できるモデルになりそうだ。
スペック面でのトピックはフルHDディスプレイだが、ブラウジングやSNSを利用する分にはあまり恩恵は感じない。テキストの見やすさはパッと見だとHD液晶と大差なく、ブラウジングやSNSだけならHD液晶でも十分だと思う。一方、写真を見ると違いは明らか。料理の写真などは実物が飛び出してくるように見える。カメラを活用するモチベーションも上がりそうだ。2013年にはフルHDディスプレイ搭載機はさらに増えることが予想されるが、HTC J butterflyではいち早く最新のスペックを取り入れ、デザイン・機能を含めてトータルで完成度の高いモデルに仕上げたことを評価したい。
スペックでの差別化が難しくなりつつある今、スペックだけでは図れない「+α」がますます重要になってくる。ジョジョスマホの“コラボ”、Xperia NXの“新機軸のデザイン”、SH-02Eの“IGZO技術”、HTC J butterflyの“持ち心地”は、この+αを具現化したものと言える。2013年は、どんな+αを見せてくれるのか、楽しみにしたい。
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