スマホを充電、さらに子機にもなる Bluetooth+バッテリーで目指した究極の2台目PHS:開発陣に聞く「ENERUS WX03S」(2/2 ページ)
SIIの「ENERUS WX03S」は、容量1700mAhのモバイルバッテリーにもなるPHS。さらにスマホとBluetooth接続することで、通話用の子機としても利用できる。ウィルコムとSIIにその開発経緯を聞いた。
バッテリー+ルーターという可能性は?
―― 非常に多機能なモバイルバッテリーでもあるENERUSですが、さらにPORTUSのモバイルルーター機能を追加することはできるのでしょうか。スマホとPHSとバッテリー、さらにモバイルルーターという4台持ちのユーザーは助かると思います。
山本氏 全部まとめてもいいのでは? という意見は(SII)社内でも出ました。ただPORTUSとENERUSは製品コンセプトが違いますので、無理に1台にすることは見送っています。
島田氏 ウィルコムとしても、PORTUSは通話+データ通信、ENERUSは通話+Bluetooth+バッテリーとラインアップ上のすみ分けを図っています。我々(ウィルコム)も「1台にまとまれば便利」と考えましたが、現在の商品構成を崩してまで行う必要はないと結論づけました。
―― 「電話機として認識してもらえるサイズにとどめた」ということですが、デザインもストレート形状でケータイらしさにあふれていると思います。ボディデザインも“電話らしさ”を意識されたのでしょうか。
山本氏 ENERUSは想定ユーザーの年齢や性別を問わない性質の商品ですので、カラーバリエーションとボディデザインもオールターゲットであることを意識しました。ケータイとしての使いやすさを重視し、ディスプレイはPHSとしては大型の2.4インチ液晶を採用して、ダイヤルキーはフレームレスキーでキートップの数字や文字も大きく見やすくしています。
―― 初めて見たとき、形状といいサイズといい、ちょっと懐かしい感じがしました。モバイルバッテリーとして使わなくても、バッテリーがよく持つユニバーサル端末でもあるわけですね。
山本氏 ユーザーからはダイヤルキーが使いやすいという声が多く寄せられていますし、40歳以上のユーザーからも高い評価を受けています。
―― カラーバリエーションの「エメラルド」は、ケータイとしてはちょっと珍しい色ですね。
島田氏 オールターゲットという方針でしたので、サンプル調査は男女の幅広い年齢を対象に数百人単位で行っています。スマホとの組み合わせを狙うなら、ベーシックなホワイトとブラックがあればいいのですが、そこはあえて違うカラーも欲しいですから。そのエメラルドをプロモーションカラーに設定しています。
山本氏 製品のカラーは4色ですが、企画段階ではもっととがったカラー候補もありました。紫とか、ブラックとゴールドとか、ピンクとか……。
―― そういえばPORTUSのブラックも、ピンクの差し色が入った大胆な色使いでしたね。現在はPORTUSとSOCIUSが発売中ですが、どちらもENERUSと併売していくのでしょうか。
島田氏 ENERUSとPORTUSは今後も併売していきます。一方のSOCIUSも当面は販売しますが、2台目向きというコンセプトがENERUSと同じですので、徐々に(販売を)絞っていくつもりです。
―― Bluetooth連携が可能なPHSは京セラも製品化していますが、ウィルコムとしてもラインアップを強化していくのでしょうか。
島田氏 そのつもりです。
Bluetoothの親機モードも搭載 音質にもこだわった
―― PHSとしてのENERUSについてですが、電話機としてSOCIUSやPORTUSから進化した部分はありますか。
武藤氏 音源用のチップを高性能なものに変更して、従来より通話音質の向上を図っています。さらにDSPも使って、雑音除去などの処理を行っています。これはBluetooth利用時も効果がありますので、スマホの子機として使う場合も音質が上がっています。
―― 音源チップのグレードを上げたというのは、何か開発段階で音質への影響があったためでしょうか。例えばバッテリー機能が追加されたことでノイズが増えたなどです。
山本氏 そうした影響はなかったですね。PHSといえばもともと通話音質が良いと評価されていますので、そこをさらにアップしようと考えました。
―― Bluetooth機能はどのように進化したのでしょうか。
三井氏 Bluetoothの対応プロファイルが増えています。SOCIUSはハンズフリー通話用のプロファイルHSP/HFPと、アドレス帳を転送するPBAPに対応していました。ENERUSはこれらに加え、スマホのミュージックプレーヤーをコントロールできるようA2DP/AVRCPを追加しています。またより多くの端末とアドレス帳の交換ができるようOPPにも対応させています。
―― A2DP/AVRCPはスマホ内の音楽を聴くために対応したわけですか。
武藤氏 そうです。SOCIUSならスマホをかばんに入れていても手元のPHSで通話できましたが、iPhoneで音楽を聴きたいときは結局iPhoneを操作しなくてはならない。そこでENERUSにはBluetoothのミュージックコントロール機能を搭載しました。これならスマホをかばんに入れたまま、音楽再生も通話もPHS経由で行えます。
三井氏 ENERUSとiPhone 4S以降を組み合わせた場合、SiriもENERUSから呼び出すことができます。Androidでもボイスコマンド機能を搭載した端末なら、ENERUSから音声で操作できます。
ファイル転送のプロファイルについてですが、PBAPで転送するとスマホのアドレス帳がPHSにそっくりコピーされます。かたやOPPですと、1件だけコピーするとか、またPHSからスマホへの逆方向への転送も行えます。OPPをサポートするスマホが多いのもポイントでした。
―― ENERUSからSiriを呼び出せるのはちょっとすごいですね。PHSはビジネスユーザーも多いですが、スマホのボイスコマンド対応というと車載利用をイメージします。
武藤氏 実はケータイとしてカーナビへの連携を求める声もありました。Bluetoothの親機モードを追加したのはそのためです。
島田氏 スマホはかばんにいれたまま、手にしたPHSでいろいろな操作を行いたい。Bluetooth関連の機能強化はそうしたニーズに応えるために(SIIへ)お願いしています。
―― Bluetoothとスマホの連携といえば、受信したメールを表示する腕時計や専用の小型端末などがあります。SOCIUSやENERUSもアップデートでそうした機能に対応したりしないのでしょうか?
島田氏 やっぱりそう思いますよねぇ、話していてちょっとイヤな流れだなとは感じていたのですが(笑)。現在の機種を含め、今後どういった対応ができるのか、SIIさんと検討していきたいと思います。スマホと一緒に持ち歩く相棒として、より最適な存在とは何かを追求していきたい。そのためにBluetoothでなにができるかを、みんなで考えているところです。
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