料金、サービス、端末――新生「ワイモバイル」の戦略を読み解く:石野純也のMobile Eye(7月7日~18日)(2/2 ページ)
8月1日に新キャリア「ワイモバイル」がサービスを開始する。同社はどのような戦略でモバイル事業を展開していくのか? 料金、サービス、端末を中心に読み解いていく。
端末へのサービス統合は「道半ば」、Android以外への進出にも意欲を示す
とはいえ、こうしたサービスを端末と有機的に結び付けられているかというと、「まだ道半ば」(寺尾氏)だ。発表されたスマートフォンは京セラ製の「DIGNO T 302KC」とHuawei製の「STREAM S 302HW」。DIGNO Tには、Yahoo!JAPANの検索ウィジェットなどが置かれたホームアプリ「Y!mobile Home」や各種Yahoo!JAPANのアプリがプリセットされているが、デフォルトではGoogleのサービスが至るところに散りばめられたホームアプリとなる。
STREAM Sについては、Huaweiがグローバルで展開する「Emotion UI」が搭載されており、よりYahoo!JAPAN色が薄い印象を受けた。もちろん、「Y!mobileメール」や「Yahoo!ボックス」といった各種アプリはどちらの端末にもプリインストールされているが、Androidである以上、Googleのサービスからは完全には逃れられない。Y!mobileメールはGmailと競合するし、Yahoo!ボックスもGoogleドライブと性質の同じサービス。どちらをメインで使うかは、ユーザーに委ねられている状態だ。
イー・アクセスとウィルコムが合併し、ワイモバイルが発足すると発表されてからまだ4カ月。その間、買収が白紙撤回されるなどのドタバタもあり、準備にかけられる時間はあまり長くなかった。1~1年半という通常の開発期間を考えると、いくらヤフーがモットーである「爆速」を掲げても、ゼロから企画した端末を発表するのは難しい。これらのスマートフォンはあらかじめイー・アクセスやウィルコムが仕込んでいた端末に、できるところからYahoo!JAPANのサービスを搭載したとみて間違いない。寺尾氏が「道半ば」と述べていたのも、そのためだ。
同様に、端末の対応周波数を見ても、まだ2つの会社が完全に統合仕切れていない印象を強く受ける。
DIGNO Tは、ソフトバンクモバイルの持つ900MHz帯と2GHz帯のW-CDMA、LTEに加え、Wireless City Planningの持つ2.5GHz帯のAXGP(TD-LTE)に対応。ワイモバイルが保有する周波数帯には、一切接続できない。このモデルは旧ウィルコムが展開していた「だれスマ」の「STREAM 201HW」や、旧イー・アクセスの提供していた「Nexus 5(EM01L)」の系譜を受け継いだモデルだといえるだろう。つまり、ソフトバンクモバイルのMVNOとして提供する端末だ。
もう一方のSTREAM Sは、W-CDMAが900MHz帯と1.7GHz帯、2.1GHz帯、LTEが1.7GHz帯に対応するが、PHSには非対応だ。こちらについては、旧イー・アクセスが提供していた「STREAM X(GL07S)」の後継機ということもあり、よりイー・モバイル色の強い端末と言える。「今日発表したものは第1ステップ。第2ステップ、第3ステップと広げていきたい」(ガン氏)と言うだけに、今後、さらなる進化があると考えていい。
W-CDMA | LTE | AXGP | PHS | |
---|---|---|---|---|
DIGNO T | 2GHz帯/900MHz帯 | 2GHz帯/900MHz帯 | 2.5GHz帯 | 非対応 |
STREAM S | 2GHz帯/900MHz帯/1.7GHz帯 | 1.7GHz帯 | 非対応 | 非対応 |
スマートフォンに加えて、PHS端末やPocket WiFiの最新モデルも合計5機種が発表された。これらの端末は「フランス料理でいえば前菜」(ガン氏)と語られ、発表会でも言及は少なかったが、依然として同社の主力商品であることに変わりはない。10月からはPHSも番号ポータビリティの対象になるため、特にこの分野の手を抜くと他社への流出が増加することにもなりかねない。寺尾氏が「新規ユーザーを獲得するチャンスでもある」と述べていたように、音声通話の利用が中心の端末と低価格な料金に魅力を感じているユーザーを取り込む、絶好のタイミングでもある。その意味で、充実したPHS端末は、攻めと同時に守りの側面もある端末ラインアップといえるだろう。
ただ、PHSやPocke WiFiだと、「ヤフーと連携したワイモバイル」という強みは打ち出しにくいのも事実。ガン氏が「PHSやPocket WiFiも、第2ステップとしてヤフーのサービスと連携させていきたい」と述べていたように、これらの端末にもワイモバイルならではの味付けがもっと必要になってくるはずだ。
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