スマホがより便利に、楽しく――「Snapdragon 820」で追加された新機能
CPUやGPUの性能アップがクローズアップされている「Snapdragon 820」だが、新たに追加された機能も多い。北京でのイベントで見てきたデモの内容を中心に、“820でできること”を紹介しよう。
Qualcommが開発したモバイル向けの新世代プロセッサ「Snapdragon 820」は、CPUやGPUなどの性能が大きく向上したことに加え、スマートフォンでできることが大きく拡張されている。ここでは、Qualcommが12月11日に北京で開催したベンチマークイベントでのデモとともに、Snapdragon 820で搭載可能になる新機能を紹介したい。
充電周りの機能で注目したいのが、Qualcommが以前から開発してきたワイヤレス充電技術の「WiPower」だ。専用のパッドに置くだけで、複数のデバイスを充電できる。デバイスが充電パッドに直接触れている必要はなく、充電範囲内、例えばガラス越しなどでも充電が可能だ。さらに、金属のデバイスでもワイヤレス充電は可能になるという。なお、WiPowerはSnapdragon 820に特化した機能ではなく、Snapdragon 810でも利用できる。
Snapdragon 820では、急速充電の次世代規格である「Quick Charge 3.0」にも対応する。Quick Charge 3.0では、バッテリー残量ゼロの状態から、約35分で80%までの充電が可能になり、従来よりも充電が4倍速くなるという。USB Type-A、Micro USB、USB Type-Cがサポートする。
「X12 LTEモデム」を統合することで、LTEの通信速度は下り最大600Mbps/上り最大150Mbpsまで高速化されるが、家庭内のWi-Fiネットワークでも、さらなる高速化が可能になる。Snapdragon 820では、60GHz帯を使って無線LAN通信を行う「IEEE802.11ad」に対応し、モバイルでも2~3Gbpsの超高速通信が可能になる。
Qualcommは、2.4GHz帯、5GHz帯、60GHz帯でのトライバンドによるWi-Fi通信で約2.6Gbpsの速度を実現したことを紹介。これは、複数の端末に複数の信号を同時に送信する「MU-MIMO(マルチユーザーMIMO)」での通信速度(デモでは165Mbps)と比べても、はるかに高い数字だった。Qualcomm担当者によると、日本では11adでの通信は、2016年後半には可能になるという。
60GHz帯は高周波数帯のため、部屋の中でも障害物があると電波が減衰してしまい、その際は5GHz帯に切り替わったりするが、ルーターから端末まで障害物がないところでは、60GHzでの高速通信が可能になる。
オーディオ面では、専用アンプ「WSA8815」を搭載したことで、2つのフロントスピーカーからサラウンド効果を体験できる。端末の正面に立つと、ゲームや動画などを迫力のサウンドをで楽しめる。リルタイムに音量を制御することで、同アンプはスピーカーを保護する役割も担っている。
グラフィックの描画を担う「Adreno 530 GPU」により、ディスプレイの表示能力も向上している。例えば、太陽光で明るい屋外にいるときでも、ディスプレイの輝度を上げなくても視認性を確保できる。リアルタイムで画像を分析することで、床に窓が反射している様子や影が映っている様子を再現でき、より本物に近い表示が可能になる。また、ハイダイナミックレンジを確保することで、暗い場所で黒つぶれをしているようなところも鮮明に表示できる。
カメラは画素数が最大2500万にまで向上するほか、画像処理も進化。「Hexagon 680 DSP(デジタルシグナルプロセッサ)」の新たな画像処理技術により、リアルタイムでノイズ低減をするほか、暗所で黒くつぶれてしまっているところも鮮明に表示できる。Hexagon 680 DSPは、従来よりも10倍の電力効率が図られており、高度な画像処理をしても、発熱が起きたり急激にバッテリーが減ったりすることはなさそうだ。なお、メーカーが独自の画像処理技術を搭載していることも多いので、Qualcommのものを採用するかはメーカーに委ねられる。
セキュリティ面では、「スマートプロテクト」と呼ばれる技術で、プロセッサレベルでマルウェア(有害なアプリ)を検知できるようになる。あらかじめ定義した“おかしな挙動”が起きると、ネットワークに接続していない状態でも検知できる。
「Sense ID」と呼ばれる指紋センサーの搭載も可能になる。指紋の検知には超音波を使っており、従来のホームボタンや電源キーなどボディの外側ではなく、本体の内部にセンサーを設置できるようになる。例えばディスプレイの内側にセンサーを置けば、画面に触れるだけで認証できる。金属、ガラス、プラスチックといった、いずれの素材越しからも認証は行える。さらに、手がぬれていたり汚れていたりしても、認証は可能とのこと。現在、指紋センサーはボディの裏側に搭載しているスマホが多く、外観上も目立っているが、Sense IDのおかげで、端末のデザインを損なうことなくセンサーを搭載できそうだ。
「Zeroth」と呼ばれる機械学習のプラットフォームを活用した画像認識も注目機能の1つだ。画像から読み取れる「食べ物」「外」「空」「人間」などのシーン(情報)を認識することで、画像を自動でソートしてくれる。プロセッサ側が処理をするので、端末がネットワークに接続していなくてもシーン認識は可能だ。フォトビュワーは別途開発が必要になるが、タグ付けが自動で行われるのはありがたい。
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