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え、iPhoneの割引がなくなる!? スマホ「1GB/5000円以下プラン」の注意点

各社が発表した1GB/5000円以下になるスマホ向けの低価格プラン。しかし全ての人がその恩恵にあずかれるわけではないようです。

 NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの大手3キャリアは、1カ月5000円以下を実現するスマートフォン向け料金を相次いで発表した。

 ドコモは3月1日から、auは23日から、ソフトバンクは4月1日から提供する。各社に共通するのは、5分以内の国内通話が定額になる基本料金に小容量のデータ通信料金を組み合わせた点だ。MVNOが提供する格安SIMと比較するとまだまだ高額だが、通話定額が使え、全国のキャリアショップによるサポートを考えると、大手キャリアの低価格プランに期待する人も多いだろう。

 あまりデータ通信を利用しない人にはうれしいはずの低価格プランだが、使い方によっては割高になりかねないため、注意しなければならないことがある。

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 例えば各社の低価格プランは月間データ容量を1GB程度に抑えられているため、まとめ買いに相当する上位プランよりもデータ単価が高い。追加チャージも可能だが、初めから容量の多いプランにしておいたほうが安かったということもある。なによりも、キャリアによって安くなるケースが異なることを覚えておきたい。

ドコモは3人家族なら1人約5000円 auとソフトバンクは端末割引がナシ

 まず、ドコモの新しい低価格プランは家族向けのものだ。3人家族(3回線)で契約すると、月額1万4580円(税込、以下同)で5GBのデータ料金が利用できる。1人あたりのコストは4860円で、データ通信は1人平均1.66GB。データ容量は3人で分け合う形式のため、均等に割り振られるわけではない。誰か1人が3GB使えば、残る1人で2GBを使うことになる。余った場合は繰り越しも可能だ。1人でも契約できるが、複数台のスマホやケータイを持っていないと割高になる。


ドコモの新しい低価格プランは3人家族(3回線)向け

 auとソフトバンクの低価格プランは1人(1回線)から契約でき、月額料金は共に5292円でデータ容量は1GB。ただし余った容量の繰り越しができず、さらに端末代金の割引がないのが痛い。


auの低価格プラン

ソフトバンクの低価格プラン

 例えばauとソフトバンクで「iPhone SE」の16GBを購入し、低価格プランを契約した場合、5万6880円の端末価格が丸々かかる。24回の割賦購入なら支払いは月々2370円で、低価格プランの通信料と合わせると月額7662円だ。さらにユニバーサルサービス料などが別途かかる。


「iPhone SE」

auの「iPhone SE」販売価格

ソフトバンクの「iPhone SE」販売価格

 その点、1つ上のデータ料金を契約した場合は最大4万6080円(月額1920円×24回)の端末割引が受けられ、実質負担額は1万800円(月額450円×24回)と大幅に安くなる。同じ5分定額の基本料で1段階上のデータ料金と組み合わせると、auの場合は月3GB/6696円で低価格プランとの差は+1404円。ソフトバンクは月5GB/7560円で+2268円だ。

 これに割引後の端末価格を加えると、auが7146円(-516円)、ソフトバンクが8010円(+348円)になり、低価格プランのアドバンテージは一気に小さくなる。auに至っては3倍のデータ容量が使えるプランのほうが安く、ソフトバンクもわずか348円の差額でデータ容量が5倍も増えることに。

2社の1GBプランで「iPhone SE」(16GB)を契約した場合の月額費用(税込)
キャリア au ソフトバンク
プラン スーパーカケホ+データ定額1 スーパーカケホ+データ定額3 スマ放題ライト+データ定額パック・小容量(1) スマ放題ライト+データ定額パック・小容量(5) スマ放題+データ定額パック・小 容量(2)
基本料金 1836円 1836円 1836円 1836円 2916円
データ料金 3132円 4536円 3132円 5400円 3780円
ISP料金 324円 324円 324円 324円 324円
端末価格 2370円 2370円 2370円 2370円 2370円
割引 0円 -1920円 0円 -1920円 -1920円
合計 7662円 7146円 7662円 8010円 7470円
内容 5分以内の国内通話定額+1GB 5分以内の国内通話定額+3GB 5分以内の国内通話定額+1GB 5分以内の国内通話定額+5GB 国内通話定額+2GB
2016年3月31日現在

2社の1GBプランで「iPhone SE」(16GB)を契約した場合の月額費用(税込)【画像版】

 もっとややこしいのは、ソフトバンクの場合、国内通話が完全定額になる月額2916円の基本料金にすると、今度は2GB/3780円の安い少容量プランが選択でき、合計が7020円になることだ。割引後の端末価格450円を追加すると月7470円で、ソフトバンクの5分定額+1GB+端末価格よりも192円安い。

 端末割引は一括購入しても24カ月間続くため、2年間の実質負担額で判断すると、低価格プランを積極的に選ぶ理由は少ない。これはiPhoneに限らず、ケータイなどをのぞいたほかの機種でも同様だ。既に端末価格を支払い終わった、あるいは端末割引の適用も終わっている場合なら額面通り安くなる。

 低価格プランに端末割引が適用されない理由を2社に聞いたところ、「端末購入の補助金をあまり受けず、1つの端末長く利用するライトユーザー向けのため」(KDDI)、「端末の買い換えが少なく、データ通信量も少ないユーザー向けのため」(ソフトバンク)との回答だった。端末割引がある状態で既存のプランから低価格プランに変更した場合は割引が打ち切られ、逆に上位プランに変更しても割引が始まることはないという。

 総務省は2015年12月、各社にスマホ料金の値下げと端末販売の適正化を要請。その中で「端末購入補助を受けないライトユーザー向けの低価格料金」を求めており、その方針に従って、端末購入補助(割引)がない低容量のプランを用意した――というのが2社の説明だ。

 ドコモも契約プランによって端末割引の条件を変えているが、2社のようにまったくなくなる分けではない。例えばドコモ版iPhone SEの16GBモデルは一括価格/支払総額が5万7024円で、データMパック(1回線で月5GBまで)/シェアパック10(複数回線で月10GBまで)の中容量プランを選ぶと、2年後の実質価格が1万368円になる。

 一方、小容量のデータSパック(1回線で2GBまで)、シェアパック5(複数回線で5GB)で契約すると端末価格の割引(月々サポート)が縮小。実質価格が1万368円から2万736円に倍増する。それでも支払総額の半額以下でiPhone SEが購入できる。

 ドコモはiPhone SEの割引条件について、「市場環境を踏まえて判断している」と説明。総務省のガイドラインが示す端末購入補助(割引)の是正とは切り離して判断しているようだ。

1GB/5000円プランだけじゃない「?」な新料金

 各社が新料金を用意することになった総務省の要請は、全5回に渡って行われたタスクフォースの会合で、メンバーの有識者と3キャリア、MVNOらが議論した内容がもとになっている。さらにさかのぼれば、安倍首相が携帯電話料金の値下げを検討するよう発言したのが発端だ。

 要請と同時に公表されたガイドラインを元に、各社は1GB/5000円以下の低価格プランだけでなく、実質0円販売や2年契約の更新タイミングの見直し、3年目以降は解約金がかからない“縛りなし”プランなどを打ち出した。

 果たしてこれらは、ユーザーが求める料金の低価格化、そして端末購入や契約の在り方にマッチしているのだろうか。確かに選択肢は増えたが、複雑さが増し、新たな不公平感を生み出しているようにも感じられる。

 そもそも通信事業者はもっと分かりやすい料金にできなかったのか、また見直すことはないのか。きっかけとなった行政のガイドライン、タスクフォースでの議論は実態に沿ったものだったのか。ユーザー目線での再検証を期待したい。

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