インタビュー

端末購入補助とSIMロック解除のルールが変わる――総務省に聞く“新ガイドライン”の狙い(3/3 ページ)

端末購入補助とSIMロック解除のガイドラインが1月10日に改正された。新ガイドラインはどのような目的で策定され、また今回の改正にはどのような意図があるのか。総務省の担当者を直撃した。

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SIMロック解除のルールを改正した理由

―― 次にSIMロック解除に関して伺っていきます。今回、解除を可能にするまでの期間を短縮した理由を教えてください。


新ガイドラインでは、MVNO向けのSIMロックも無しになる。現在、au VoLTEとソフトバンクのMVNO SIMを利用するには、端末のSIMロック解除が必須だったが、これが不要になる

内藤氏 SIMロックは事業者側の都合でかけているものです。そもそも、端末は制約なく使えるのが望ましいというのがわれわれのスタンスですが、債権保全のためにかけてもいいということになっていました。そのため、「必要最小限」という期間を改正前のガイドラインで定めています。必要最小限の期間は事業者側が定め、おおむね6カ月程度になっていましたが、それが合理的かどうかを検証したのがフォローアップ会合になります。

 債権保全の観点では、割賦払いの場合は必要なのかもしれませんが、端末を詐取する人は初回から踏み倒してしまうという話もあります。であれば、初回の支払いを確認できれば、その段階でSIMロックは解除できるはずです。その確認ができるまでの期間が100日程度ということで、そこまで短縮しました。また、一括払いの人は、全て支払いを済ませているわけで、詐取のリスクは消滅します。利用者の利便性と債権保全のバランスを考えても、すぐに解除できないのは利用者には理解されないのではないでしょうか。

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―― SIMロックを解除しても、周波数が一部合っていなかったり、アプリケーションレイヤーで特定キャリア向けの仕様が残っていたりする場合があります。ここについては、どうお考えでしょうか。

内藤氏 テザリング等はフォローアップ会合でも挙がっていました。こういったものは、SIMロック解除に伴い、機能制限がなくなるように取り組んでくださいという努力義務規定を、改定前のガイドラインから置いています。ガイドライン適用後の端末は、各事業者がメーカーと取り組みをしたことで、おおむね使えないケースは減ってきています。ただしVoLTEなど、一部が使いにくいなどは残っています。

 対応周波数の件は、チップやアンテナの関係でどうしても制約があるのは事実です。あるネットワークのキャリアで販売された端末は、そのネットワークで機能を発揮するというのは、現実的にどうしても残ってしまいます。ただ、こちらに関しては、(特定の周波数で)技術基準適合証明をとっていないものがあったので、改正以降は、他の会社のネットワークで使えるようにしました。音声やインターネット接続など、最低限の動作は確保されるようになっています。

 これをキャリアアグリゲーションなどまで広げると、コストも上がってしまいます。あるネットワークに向けて作られた端末は、そのネットワークで使うことは前提にしつつも、乗り換えた場合でも最低限は使えるということです。

―― 同じネットワークを使うMVNOに対するSIMロックも、新ガイドラインでは禁止されました。

内藤氏 端末と関係なく、キャリアを選べるようにしたかったからです。割賦の支払いが終わった時、簡単に乗り換えができ、料金負担が少なくなる。SIMロックは、あくまで事業者側の都合でかけているものですからね。

 ただ、正直MVNO向けのSIMロックは、予期していなかったもので、ガイドライン後にああいったものが出てきました。これが本当に必要最小限の措置かと考えると、MNOはネットワーク利用制限をかけることもでき、割賦の支払いがなければロックをかけることができます。これはSIMロック以上に強力なロックで、代替の措置がある以上、ガイドライン上許容できないという整理ができました。

 本当はその段階(MVNO向けのSIMロックが出てきた段階)でキレイにできればよかったのですが、事実関係などを調べながら整理する必要がありました。

取材を終えて:端末価格の基準が明確になった

 大ざっぱにいえば、ガイドラインは一部のユーザーに対して支払われていた割引を、みんなで平等に分け合おうというものだ。料金改定については各キャリアに委ねられているため、きちんとそれが還元されているかどうかは、決算などを通じてユーザーも継続的にチェックしていかなければならないだろう。場合によってはMNPで他のキャリアに変えるなど、実際の行動に移す必要もある。その数が増えてこなければ競争も進まず、MNO側も料金を下げたり、縛りを減らしたりといった行動に出ないからだ。

 一方で、「実質0円禁止」という言葉があまりにもインパクトの大きなものであったこともあり、すでに端末の販売台数にもネガティブな影響が出始めている。インタビューでは、機種変更価格はむしろ下がっているとのことで実際に店頭を見ていると、その傾向も確かにある。市場を壊さないためには、キャリアもこうした点をもっと大々的にアピールする必要はありそうだ。

 ガイドラインの改正で、端末価格の“基準”は以前より明確になった。暗中模索の中、下限の探り合いが続いていた2016年のように、突如価格が変わってしまうことはなくなるはずだ。一方で、お話を聞いても、下取り価格を基準にするのが本来の目的に沿ったものなのかは、判断が難しいと感じた。インタビューでも指摘していた通り、端末を安く売るために、意図的に下取り価格を下げる“抜け穴”があるからだ。そうなると、「買い替えた方が得になるのはおかしい」という状況は変わらず、ガイドラインの、もともとの意図である“公平性”が担保されなくなってしまう。

 SIMロックの解除ができない期間を短縮した点は、いちユーザーとして評価できるポイント。特に不可解だった一括払い時の扱いが大きく変わることで、割賦を使わないメリットも出てくる。海外出張などが多いビジネスユーザーなどを中心に、買い方の多様化が進む可能性もあるだろう。同じネットワークを使うMVNOへのSIMロックを禁止した点からも、この件に厳しく臨もうとしている総務省の姿勢が伝わってきた。

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