SIMロック解除の条件緩和、端末の実質価格に新基準――改正ガイドラインの影響は?:石野純也のMobile Eye(11月7日〜11月18日)(1/3 ページ)
11月18日、総務省がSIMロック解除とスマートフォン端末購入補助についての改正ガイドラインを公開し、意見を募集する。SIMロック解除は条件が緩和され、端末の実質価格には新たな基準が設けられる見通し。業界に与える影響を考えた。
「SIMロック解除に関するガイドライン」と、4月に施行された「スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」の2つが統合され、内容も改正される見込みだ。現在、総務省ではパブリックコメントを受け付けており、1月にも新たなルールが適用される。ガイドライン改正の根拠となっているのが、「フォローアップ会合」と呼ばれる有識者会議だ。
ここでは、ガイドラインの厳格化を求める意見や、SIMロック解除の猶予期間を短縮する意見が相次いで出された。今回は、ガイドラインを読み解いていくとともに、改正ガイドラインが業界に与える影響を考察した。
端末の実質価格は“中古の下取り価格”が基準に
フォローアップ会合では、実質0円禁止のガイドラインに抜け穴があることが問題視された。第1回の会合でヒアリングされたドコモの取締役常務執行役員 大松澤清博氏は、期間限定の販売奨励金や高額なプランへの加入を条件とした販売奨励金を挙げ、「ガイドラインの抜け道はふさぐべき」と主張している。
一方で、端末購入補助がどの程度なら「適正」と見なされるのかは、議論が分かれたポイントだ。実際、ドコモはiPhone SEの発売時に、実質価格(税込)を0円から648円に変更している。これは、総務省から「待った」がかかったからだ。現状では、648円という価格設定が暗黙のうちにセーフと見なされているが、明文化された決まりは存在しない。
結果として、ガイドライン施行後も、実質価格ではハイエンド端末とミッドレンジ端末の差が、わずかな金額にとどまっていた。フォローアップ会合では、ソフトバンクがこの点を指摘。同社の常務執行役員、徳永順二氏は「廉価な端末の普及を図るのは、消費者にとって便があるが、現時点では普及が進んでいない」と語っている。
確かに、iPhone 7のような最新のハイエンドモデルが、実質1万円程度の値づけでは、ミッドレンジやローエンドモデルとの差が出しづらい。2年間でトータル1万円程度の負担であれば、ハイエンドモデルを選ぶという心理が働くはずだ。割引額に一定のキャップが設けられれば、「中スペックの端末のウェイトが高まり、消費者の便益になる」(徳永氏)。同様にドコモの大松澤氏も、「実質負担額の安い端末、高い端末を調達価格に応じて改善していくと、価格的すみ分けも進んでいく」という見通しを語った。
キャリアや有識者からの指摘を受け、改正ガイドライン案では、端末価格の目安として次のような記載が加わっている。
「事業者は、スマートフォンを購入する利用者には、端末を購入しない利用者との間で著しい不公平を生じないよう、端末の調達費用及び関連下取り等価格に照らし、合理的な額の負担を求めることが適当である」(原文ママ)
価格の基準に、突如下取り価格が挙げられているが、これもフォローアップ会合で構成員から出た提案に基づいている。基準となるのは、2年前の同じシリーズの端末。つまり、iPhone 7であれば、iPhone 6の下取り価格が、実質価格の下限ということになる。理屈としては、型落ち端末の下取り価格を最新の端末が下回るのは不自然なため、ここを目安にするというわけだ。仮に、このガイドラインを現在の販売価格や下取り価格に当てはめてみると、iPhone 7の場合、1万7000円〜2万5000円程度(税込)が適正と見なされることになる。
逆に、ガイドラインの改正で規制が緩和された部分もある。フィーチャーフォンからスマートフォンへの買い替えや、3G端末からLTE端末への買い替えといったように、技術的なマイグレーション(移行)を含むケースが、それだ。フォローアップ会合では、ソフトバンクの徳永氏が「本来は行き過ぎた端末値引きの規制だったが、新規、MNPの規制になっているのではないか」と指摘。「マイグレーションはご考慮いただきたい」として、過度な規制の緩和を訴えた。
結果として、改正ガイドライン案には、以下のようなただし書きが明記されることになった。
「ただし、事業者は、端末の販売状況等を踏まえて在庫の端末の円滑な販売を図ることが必要な場合、携帯電話の通信方式の変更若しくは周波数帯の移行を伴う場合又は廉価端末の場合には、スマートフォンの価格に相当するような行き過ぎた額とならない範囲で、端末購入補助を行うことができる」(原文ママ)
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