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格安スマホへの対抗、タスクフォースの影響は?――ドコモ吉澤社長が語る

NTTドコモが2016年度第3四半期の決算を発表。増収増益で業績は好調だが、格安スマホやタスクフォースへの影響はどれだけあるのか? 吉澤社長が語った。

 NTTドコモが1月27日、2016年度第3四半期の決算を発表。売り上げと営業利益ともに増収増益となり、業績は好調に推移している。携帯電話契約数は7359万となり、前年同期比で6%増。「カケホーダイ&パケあえる」の契約数は3520万で、前年同期比で1.3倍増。「ドコモ光」の契約数は1月14日に300万を突破し、前年同期比で2.7倍増となった。


NTTドコモの吉澤和弘社長

増収増益となった第3四半期

 新たな施策として、月額1700円の「カケホーダイライト」に、月額3500円(月2GB)の「データSパック」を組み合わせられるようにした(関連記事)。これにより、月額4900円からドコモのスマホが利用可能になる。NTTドコモの吉澤和弘社長は「Sパックの契約者もかなりいる。いろいろなシミュレーションをしているが、(カケホーダイライトと組み合わせる人は)かなりの数になると思う」と見通しを語った。

 吉澤氏は2016年度に力を入れた施策の1つとして既存ユーザーへの還元強化を挙げる。長期ユーザー向けには「ずっとドコモ割」を拡充して「更新ありがとうポイント」を付与する。データ通信のヘビーユーザー向けには「ウルトラパック」「ウルトラシェアパック」を提供。若年層には「ドコモの学割」を提供。こうした還元に充てた額は通年で1500億円規模となった。

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1500億円をかけて既存ユーザーへ還元した

 LTEネットワークについては、キャリアアグリゲーションの継続やMIMO・QAM拡張など、5G通信を見据えた高度化を推進し、LTE基地局は2016年12月末で15万4300局にまで拡大。うち(下り最大225Mbps以上の)「PREMIUM 4G」に対応する基地局は4万9400局に及ぶ。

 高度化技術の取り組みが功を奏し、総務省のガイドラインに基づいて2016年10月~12月に計測した実効速度は、2015年よりも高速化した。箱ひげ図の中央値は下りが118Mbpsで1.7倍、上りが23Mbpsで1.1倍となった。

 コンテンツや金融サービスを含む「スマートライフ領域」の営業利益も堅調に伸びている。dマーケットの契約数は1561万、あんしんパックの契約数は1666万に上る。dカードの契約数は1731万で、dカードGOLDの契約数は2016年12月28日に200万を突破した。「iPhone 7を使っている人のdカード加入率は上がっており、Apple Pay利用者も増えている」(吉澤氏)とのことで、iPhone 7とApple Payが金融サービスの利用増に大きく貢献したようだ。

 そのiPhone 7は「(ジェットブラックの出荷不足で)最初は伸び悩んだが、iPhone 6と6sを上回る(販売)数になった」とのこと。

格安スマホにも対抗

 ドコモの契約数には(ドコモ回線を使った)MVNO、M2Mのモジュール、スマートフォンとタブレットが含まれるが、「モジュールとMVNOの増加率の方がスマホやタブレットよりも高い」(吉澤氏)という。

 そのMVNOや格安スマホの分野では、KDDIが「UQ mobile」、ソフトバンクが「Y!mobile」のサブブランドを強化しているが、ドコモでは「サブブランドを作るつもりはない」と吉澤氏。「MVNOやY!mobileの影響は大きくなっているが、2016年2~3月以降は横ばい。フィーチャーフォンからスマートフォンに替える方には『はじめてスマホ割』のキャンペーンを行っている。Sパック(のカケホーダイライト適用)も1つの対抗策」と話し、ドコモにとどまってもらうための施策で対抗していく構えを見せた。

タスクフォースの影響

 総務省のタスクフォースで実質0円が禁止になった件については、毎月の利用料金から割り引く「月々サポート」の額を減らしたことで、24カ月で約300億円、2016年度で100億円強の影響があり、利益増につながったという。「ガイドライン上で規制される対象はMNP。ポートインしてくるお客さんに対して0円にしてはいけないということだが、その(MNPの)数はそれほどたくさんあるわけではない。(端末の)価格がすごく高くなったわけではない」(吉澤氏)

 吉澤氏は「タスクフォースの影響が販売数にすごく効いているとは感じない」との見解。2016年度第3四半期の端末販売台数は669万台で、前年同期の648万4000台をむしろ上回っている。「事業者間での過度な価格競争は鎮静化しており、MNPの数は減っているが、それに伴って解約も減少している。2Q以降は買い替え需要もあった」(同氏)。一方で第3四半期の端末売り上げは2061億6000万円で、前年同期の2409億5900万円から約14%減少しているが、これは「MONO」をはじめ、安価なモデルが増えたことが影響していそうだ。

 「MONOのような、ベーシックな機能を持ちながら、手軽な料金で利用できる端末は、もう少し増やしていく」と吉澤氏。さらに、低価格モデル向けのとセットプランの提供も「考えられる」とし、2017年は、ドコモ端末をさらに安く運用できる施策が増えるかもしれない。

 総務省が改正した端末購入補助のガイドラインでは、2017年6月1日以降に発売される端末の実質価格は、2年前の同型機種の下取り価格以上が目安となった。吉澤氏は「どう対応するかは検討しているところだが、しっかりとルールに従って対応していく。下取りの価格をどう決めるかは、もう少し検討したい」コメント。2016年よりも端末価格の締め付けが厳しくなったことで、販売台数や売り上げに何らかの影響が出そうだ。

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