通信速度、サポート、消費者保護――「モバイルフォーラム2017」で語られたMVNOの課題(2/2 ページ)
MVNOのキーパーソンが集結する「モバイルフォーラム2017」が開催。MVNOの現状や課題について講演、ディスカッションを行った。普及期を迎えたMVNOにはどんな課題が残っているのか?
縛り”の少なさを生かした革新を
問題点の解消は当然のこととして、MVNOがさらに成長するためには何が必要になるのだろうか。
三菱総合研究所 社会ICT事業本部 主席研究員の西角直樹氏は「普及拡大期を意識した戦略の変化が求められる」と提言する。「MVNOはこれまで、料金が高いといったMNOの問題を解消してサービスを提供してきたが、MNOが追随したらそのメリットがなくなる」(同氏)。そこで今後はMNOと対等な、深いレベルでの競争や、周波数帯や自前設備といった“縛り”の少なさを生かしたイノベーションが必要になると訴える。
e-SIMがMVNOの可能性を広げる
そのイノベーションの1つとして、西角氏は組み込み型の「e-SIM(embedded SIM)」にも着目。e-SIMは1枚のSIMカードを組み込むだけで通信キャリアやMVNOを遠隔で切り替えられるので、自動販売機や建設機械などの通信機能を内蔵したM2M機器でニーズが高い。また海外でのデータ通信も手軽に利用可能になる。e-SIMは、IIJが2017年度にサービス提供を予定している「フルMVNO」の動きにも関連する。
一方でe-SIMには「(SIMを入れ替えず簡単にキャリアを変更できるので)価格低下の圧力が高まる」といった課題があることも指摘した。実際、e-SIMに関して最もポジティブな反応が少なかったのはMNOだった――という海外での調査結果もある。
ブランドを愛してくれるお客さんを獲得すべき
石川氏はサブブランドやMNO系MVNOに格安市場を奪われてしまう可能性は大いにあるとし、その中で生き残るには「知恵で勝つ必要がある」と訴える。「大手は小回りが効かず、サポートはMNOと一緒で、そのしわ寄せが電話やSNS対応に現れている。コミュニティーサイトも同様で、閑古鳥が鳴いているところもある」(同氏)
キャンペーンで月額料金を期間限定で割り引くMVNOも多いが、キャンペーンで獲得したユーザーが「真の客なのか」と石川氏は疑問を呈する。「安いところに満足する人は優良顧客ではないので、MVNOに流れるのは問題ないという話をキャリアの方としたことがある。しっかりお金を払ってくれる、ブランドを愛してくれる、長く使ってくれるお客さんを獲得するのが重要」(石川氏)
関連記事
MVNOはキャリアメールを提供できるのか
「MVNOにはキャリアメールがないから乗り換えられない」という方が多くいます。MVNOはキャリアメールを提供できないのでしょうか。そもそも「キャリアメール」とは一体何なのでしょうか?データ通信やテザリングができない――au回線のMVNOサービスで起きている問題
au回線を使ったMVNOサービス(格安SIM)が使えない、テザリングができない、速度が出ない……といった問題に直面したことのある人は多いのでは? その詳細と原因をIIJが解説する。IIJ、2017年度に“フルMVNO”サービスを提供――今までと何が変わる?
8月29日、NTTドコモがIIJの加入者管理機能「HLR/HSS」の連携を承認した。IIJは国内初の「フルMVNO」となり、2017年度下期に商用サービスの開始を目指す。フルMVNOになることで、どんなサービスを提供できるようになるのか?2016年の格安SIMを振り返る&2017年への期待
2016年は格安SIMが伸びた1年だった。大手企業の参入や、かけ放題、カウントフリー、コミコミプランなどが目立った。2017年への期待もまとめたい。SIMロックの解除期間が短縮 一括は「支払い確認後」、割賦は「約100日以下」に
総務省が「モバイルサービスの提供条件・端末に関する指針」を策定。SIMロック解除の期間を、現在の180日から改正。スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドラインも改正した。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.