プロジェクターや完全ワイヤレスイヤフォンも――ソニーモバイルが「Xperia」のスマートプロダクトを広げる理由(4/4 ページ)
Xperiaがめざす「スマホを超えるスマートプロダクト」とは
今回のインタビューで、伊藤氏と近藤氏にXperiaスマートプロダクトのビジョンをうかがい、あらためて昨年の発表時期よりもさまざまな部分がより明確になってきたことが伝わってきた。“ボイスインタラクション”という切り口から、新しいコミュニケーションのインタフェースを作ることにチャレンジしたXperia Earのローンチが国内でも成功を遂げたことが自信につながっているからだと思う。
そしてXperia Earは、発売後もソフトウェアアップデートを繰り返しながら進化を続けている。直近ではコンパニオンアプリに新機能が加わり、より広範なスマホアプリの読み上げに対応したほか、届いているEメールの中から読み上げるメールだけにフィルターをかけることもできるようになる。また本機の大きな特徴的である「ヘッドジェスチャー機能」で行える操作も増える。そしてMWCではIPベースのグループ通話機能「Anytime Talk」の追加が検討されていることも明らかになった。
ソニーモバイルのXperiaスマートプロダクトの開発チーム内では、ある担当者がソフトとハードの開発をかけ持つこともよくあるのだという。アプリの進化を別途促しておくことで、これから発売するハードウェアに横展開もできることが強みになると近藤氏は捉えている。「形にとらわれないスマートプロダクトを開発していく中で、何かを“やり続ける”ことで見えてくるものにもしっかりと目を向けていきたい」というのが近藤氏の持論だ。
いまスマート家電と呼ばれる製品の中ではさまざまな企業、サービス同士がパートナーシップを組んで次世代の共通プラットフォームを模索する動きもある。Xperiaシリーズのスマートプロダクトはどのような構えで、製品同士の“コネクティビティ”に道筋を付けていくのだろうか。伊藤氏は、「今はまだできるだけ汎用性の高いプラットフォームの中で、ユーザーにとって本当に便利で、生活にフィットする使い方を提案していくべき」であると強調している。そのためにXperia TouchではAndroid OSの汎用性を優先しながら、Google Playストアで誰もが入手できるアプリの使い勝手を、インタフェースを革新することで高めていくという手法を選択したわけだ。
その戦略が奏功して、Xperia Touchによる新たなアプリ体験に着目するパートナーの輪も広がりつつあるようだ。スペインの大手百貨店「El Corte Ingles」はモバイル端末向けに公開しているオンラインショッピングのアプリが、Xperia Touchによる大画面とタッチ操作に結びつくことで、買い物の利便性が格段に高まると非常にポジティブな評価を与えているという。
また欧州では、例えば「エンターテインメントディスプレイ付きの冷蔵庫」のようにインターネットにつながるスマート家電が徐々に増えてきたことで、家族が集まる家の中心をリビングルームからキッチンにも広げようという動きが活性化している。ドイツのシステムキッチンの大手メーカーであるノルテは、国内で開催されたキッチン専門の見本市にXperia Touchと一緒に同社の製品を紹介したところ、省コストで手軽にスマートキッチンを実現できる最良のソリューションとして脚光を浴びたという。
昨今のスマート家電は一見すると便利なように見えて、実は操作性や使い勝手の練り上げがまだまだ不十分に感じら得るものも少なくない。まずはユーザーインタフェースやハードの作り込みを妥協せずに突き詰めた上で、奇をてらうことなく安心して使える商品を丁寧に作るという思想はソニーというブランドのDNAに深く根付いている。Xperiaスマートプロダクトは、これからも真摯(しんし)なモノ作りを続けていくことによって広がっていくのかもしれない。
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