スマートフォン普及後をめざし、総合サービス企業化を加速する――NTTドコモ 加藤薫社長に聞く:新春インタビュー(1/3 ページ)
スマートフォンの急速な普及は、日本の携帯電話市場に大きな変化をもたらした。今後はその“後”の市場に対しどう取り組んでいくかが重要になる2013年。新春インタビュー第1弾は、NTTドコモの加藤薫社長に、2013年のドコモの取り組みを聞いた。
スマートフォンの本格普及も進み、プロダクトやサービスの面でさまざまな進化があった2012年。スマートフォン移行の需要獲得を契機とした、各キャリア間の競争が激しさを増したことも記憶に新しい。
NTTドコモに限ってみれば、昨年が「苦しい一年」だったことは否めないだろう。2012年前半にはspモードを中心としたネットワークトラブルに見舞われ、後半はAppleの「iPhone 5」によってMNPでの苦戦・純減に苦しめられた。ドコモのLTEサービス「Xi」の堅調な利用者増や、下り最大100Mbpsでの高速化サービス開始など明るいニュースもあったが、ドコモを取りまく環境は逆風だったといえる。
そして、年が明けて2013年。
スマートフォン普及“後”の市場が見え始めた中で、業界最大手のNTTドコモはどのような舵取りを行うのか。今回は新春特別インタビューとして、NTTドコモ代表取締役社長の加藤薫氏に話を聞く。
「ドコモならではのサービス」を市場競争の争点にする
――(聞き手 : 神尾寿) 2012年を振り返りますと、10月以降の秋冬商戦でドコモがMNPで苦戦しているというのが印象的でした。2013年はまず目下の市場で競争力をどう立て直すかというかが課題になっています。
加藤薫氏(以下加藤氏) 確かに(昨年)10月と11月はMNPで苦戦しました。特に11月はドコモにとって7年ぶりの純減になってしまいました。楽観できる市場環境ではない、と認識しています。しかし、その一方で、12月に我々の新商品が出そろってきまして、そこでの手応えはよいと感じています。(競争力は)回復傾向にある、と感じています。
―― 全体的な競争力の立て直しをどう行うか。この部分での戦略はどのようなものになるのでしょうか。
加藤氏 現状を細かく分析しますと、ドコモの新規純増数の部分は11月・12月と堅調に獲得できていまして、(純新規契約の市場では)売り負けてはいないと考えています。しかし、MNPでの流出が少し多いということで、結果として苦戦しました。ただし、MNPの流出に関しても改善傾向にはなってきています。
端末の機能・性能はずいぶんと上がってきていますから、それがお客様にも理解され始めています。一方で、ドコモのクラウドサービスの準備も整い、(市場に訴求する)地歩が固まってきています。12月には「dショッピング」もスタートし、デジタルコンテンツからリアルサービスまで幅広くドコモのサービスを展開できる下地ができました。ドコモとしては、端末・ネットワーク・クラウドサービスの連携・調和が着実に進んできていますので、ここをきっちりと訴求していくという戦略になります。
―― なるほど。確かにこの冬商戦モデルはAndroidスマートフォンの安定性・完成度も高くなり、一方で、「しゃべってコンシェル」や「dマーケットVIDEOストア」「dマーケットアニメストア」といったドコモ独自のコンテンツ/サービスの魅力も増してきています。
加藤氏 dマーケットVIDEOストアは、すでに330万契約まできました。コンテンツサービスへの取り組みは、なかなかのものだと自負しています。スマートフォン向けのコンテンツやサービスは堅調に伸びていますので、ここは(競争力立て直しの)訴求ポイントになるでしょう。ドコモは今後、総合サービス企業を目指すという方針を打ち出していますが、その進展には手応えを感じています。
―― ドコモのコンテンツ/サービスはかなり充実してきていますが、春商戦に向けて新たな展開などあるのでしょうか。
加藤氏 これは春商戦にターゲットを絞った話ではありませんが、VIDEOストアをはじめとするエンターテインメントコンテンツ、dショッピングなどのリアルサービスときましたので、来春からはヘルスケアへの取り組みを形にしていきます。健康というキーワードを中心に置きながら、新たなサービス展開をしていきます。例えば、「らでぃっしゅぼーやをなぜドコモが買収したのか」といった問いへの答えも出てくると思います(笑)
―― 2012年までの春商戦はプロダクト先行での競争でしたが、2013年の春商戦ではコンテンツサービスも新たな争点になっていく、という見方でしょうか。
加藤氏 “ドコモならではのサービス”が前面に出ていく形にしたいと考えています。
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