ドコモ系MVNOへの“流出“を防ぎたい――KVE菱岡社長に聞く、「UQ mobile」誕生の背景と戦略:MVNOに聞く(2/2 ページ)
モバイル通信サービスを提供しているMVNOのほとんどが、ドコモから回線を借りている。そんな中、KDDIが子会社の「KDDIバリューイネイブラー」を設立し、MVNOとして「UQ mobile」の提供を開始した。今回はこのUQ mobileの戦略を聞いた。
iPhoneが動く、動かないはすごく大きい
―― 「LG G3 Beat」と「KC-01」の2機種を出されましたが、セット販売とSIM単体、どちらが多いのかを教えてください。
菱岡氏 やはりSIM単体の方が多いですね。ただ、中には、端末を後で買いたいという方も出てきています。
―― 新規、MNPなどの比率はいかがですか。
菱岡氏 他社から乗り換えられる方もいますが、まだ数的にはそこまで多くありません。新規の方、これはおそらく2台目ですが、そちらが多くなっています。auからの乗り換えという形だとMNPになりますが、比率自体が極端に多いわけではありません。
―― 地域や年齢層については、どうなっていますか。
菱岡氏 全国サービスではありますが、やはり関東が多いですね。これは、若い人が多いからというのもあると思います。
―― MVNO各社に聞くと20代が少ないところも多いようですが。
菱岡氏 うちも、30代、40代の方が多いですね。20代の方は、ブランド志向もあって、使っている端末に対して「何それ?」と言われたくないというのもあるのではないでしょうか。だからこそ、iPhoneがあんなに売れているのだと思いますが……。逆に、SIMロックが解除されるようになり、そういう中にブランド的な端末があれば、回線がどこかは分からないのでチャンスはあると思います。
―― とはいえ、iOSで通信ができないのは痛いですね。
菱岡氏 iPhoneが動く、動かないはすごく大きいですからね。原因は、まだよく分かりません。iOS 7以下だと動作したり、8にすると動かなかったりで、複雑な状況で困っています。
―― KVEはKDDIの子会社ということもあるので、親会社を通じてAppleに要望を出すということもできるのではないでしょうか。
菱岡氏 それは言い続けています。お客様のニーズがあるところにサービスがあるので、何とかしてほしい。ただ、我々でできることがあれば努力しないといけないのですが、そういう問題でもないようで……。
―― 今後、端末はどのようにしていくおつもりですか。
菱岡氏 auのように、春夏秋冬と何回も出すことはさすがにできません。ただ、年1回、2回ぐらいやることはあるかもしれません。端末については、継続して出していくつもりです。中古端末が世の中にあるのでそちらに任せてほったらかしにしておく、というわけにもいきませんからね。
接続料は安くしてもらえるよう交渉していく
―― KVEはKDDIの子会社ですが、現状の接続料に対して、思うところはありますか。
菱岡氏 本当に高いので、「はよう安くせい」と交渉をしていく予定です。
―― 接続料の算定式がある中で、交渉で下がるものでしょうか。
菱岡氏 ネットワークを作ったときのコストと、トラフィックで割高になっている状況があります。もちろん算出根拠はあり、極端な形は取れないと思いますが、そこは分母のお客様が増えることで、コストもどんどん下がっています。auのスマートフォンのお客様も増えているので、下げる余地はあると思いますし、交渉はしていきます。
―― KDDIの子会社ということで、販路としてauショップを使う可能性はあるのでしょうか。海外ではサブブランドとして、キャリアショップを間借りしている事例もありますが。
菱岡氏 絶対にないとは言わないですが、当面、そういうところではない場所で売っていきます。auのネットワークを使うのは、どこに行ったら買えるのか、故障したらどうすればいいのかという点で、安心感があることは確かです。お客様目線で見ると、そういうところはあった方がいいのかもしれない。ただ、なんでもかんでもおんぶにだっこでは、会社としてもよくありません。まずは販路をしっかり立ち上げると決めた以上、そこをきっちりやっていきます。その上で、お客様の声も高いというのであれば、考えなければいけないのかもしれませんね。
取材を終えて
au回線を使う2社目のMVNOとして始動したUQ mobile。料金プランなどにはまだまだ改善の余地がある一方で、開始当初からそろえた販売店の数や、回線を即時開通する仕組みなど、ほかのMVNOが見習うべき点も多々ある。こうした競争が活発になることこそが、KVEが市場に参入した意義といえるのかもしれない。
こうした中、KVEに先駆けて参入したケイ・オプティコムのmineoは、この春に向けてサービスを一気に拡充する予定だ。具体的には2月から料金プランを改定したうえで、ターボ機能の提供や、直近3日間での速度制限の撤廃などを予定している。こうしたサービスと比べると、UQ mobileが見劣りすることは事実。同じau回線を使うライバルでもあるmineoにUQ mobileがどう対抗していくのかは、気になるポイントだ。
KDDIの子会社という意味では、auのサブブランドとしての役割にも注目したい。海外では親元であるキャリアが子会社のMVNOのSIMカードを販売する事例もあり、料金や端末、サポートの有無でユーザーのすみ分けもできている。菱岡氏の話を聞く限り、auショップでUQ mobileのSIMカードを展開することは当面なさそうだが、他社がやっていない事例として、直営店などでチャレンジしてみる価値はありそうだ。
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