新しい競争軸に?――3キャリアの長期ユーザー向け優遇施策を比較する:石野純也のMobile Eye(5月30日〜6月10日)(2/2 ページ)
ドコモ、KDDI、ソフトバンク3社の長期ユーザー向けの優遇施策が出そろった。こうした施策が新たな競争軸になろうとしている。今回の連載では、それぞれの優遇プログラムの違いを比較していきたい。
Yahoo!JAPANとの連携を打ち出すソフトバンク
ポイントを軸にしたauと、家族を軸にした直接割引を提供するドコモに対し、ソフトバンクはTポイントを利用した、Yahoo!JAPANとの連携を打ち出している。同社は5月25日に、長期契約ユーザーに向けた特典を発表した。
ソフトバンクの特典は、Yahoo!JAPANで使える、1万5000円分のTポイントがもらえるというものだ。Tポイントは2年間に分けて支給され、月々にすると500円分。月額利用料との選択制となっており、こちらの場合は200円になる。Yahoo!JAPANで買い物をするなら、Tポイントを選んだ方がお得になるというわけだ。
ドコモやauと同様、2年契約の更新時にも、ポイントがもらえる。こちらの特徴はドコモに近く、共通ポイントとして利用できるTポイントが3000円分付与されることになる。
ただし、この長期利用者特典は、2016年の秋から提供される予定で、現時点での詳細は未定。対象になる継続契約年数や、Tポイントの有効期間などは、発表されていない。適用条件として、データ定額パックもしくはフラット型のパケット定額サービスへの加入が挙げられているが、データ容量の少ないプランを選んだ際にどうなるのかなども不明だ。
ソフトバンクの詳細な条件が出そろっていないため、厳密な比較はできないが、長期契約ユーザーへの優遇施策には、それぞれのキャリアの置かれた状況が色濃く反映されている。家族でユーザーを固め、流出を防ぐ方針のドコモは、契約年数以外にシェアパックに重みをつけてきた。
対するauは、au WALLETを軸にしたau経済圏の拡大を進めている。この戦略の下では、長期利用者に対してポイントを付与するのは、自然な考え方といえるだろう。ソフトバンクが、Tポイントや傘下のYahoo!JAPANと連動するのも、戦略として理解しやすい。料金体系がほぼ同じで「協調的寡占」などと言われてきた大手3キャリアだが、総務省の要請に対しては、各社のカラーを反映させてきた格好だ。
一方で、「お客さまのご加入しているプランや年数によって(割引額が)違うので、一概には比較できない」(田中氏)というように、横並びでの比較はしづらくなってしまった。
例えば、auユーザーは16年以上だと最大10%の還元を受けられるが、ドコモの15年以上のユーザーは、データSパックだと約17%、データMパックだと16%、データLパックだと約12%の割引になる。シェアパックの割引率は11%前後。比較軸をパーセンテージにそろえてみるとドコモの割引率が高いことは分かるが、もともとの料金体系も異なるため単純な比較は意味がない。
もっとも、長期契約ユーザーへの優遇は、適用されるまでに時間がかかるものだ。これによって、加入者の獲得合戦になるというようなことにはならず、既存ユーザーとしては、自分が適用される割引や特典さえ知っておけば十分だ。
ただ、これらの割引施策は、各キャリアが、長期契約ユーザーをどのように捉えているのかの、モノサシにはなる。その意味では、“実質0円”が禁止され、MNPでの流動性が低くなった時代の、新たな競争の形といえるのかもしれない。3社の発表を受け、今後、今のキャリアと付き合い続けるのかどうかを一考してみる価値はありそうだ。
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