日本のスマホシェア4位に――2016年にHuaweiが躍進した理由:石野純也のMobile Eye(12月5日〜16日)(3/3 ページ)
2014年にSIMフリー市場への本格参入を果たし、徐々に存在感を高めてきたHuawei。スマートフォンメーカー全体の中で4位につけるなど、シェアも急上昇している。Huaweiはなぜここまで躍進できたのだろうか?
順風満帆なHuaweiだが、シェア拡大には課題も残る
SIMフリー市場にターゲットを絞り、日本でのシェアを拡大してきたHuaweiだが、もう一段のステップアップを図るには課題も残る。市場が拡大しているとはいえ、規模の上では大手キャリアの販路はまだまだ大きい。ソフトバンクやY!mobileなど、Huaweiのスマートフォンを扱うキャリアも出てきているが、上位3社と肩を並べるには、ドコモやauへの展開も必要になりそうだ。
この問いに対し、呉氏はUQ mobileで販売の始まった「HUAWEI P9 lite PREMIUM」を挙げ、「キャリア向けの販売でも化学反応が起きている」と語る。SIMロックフリースマートフォンで培ったブランド力を生かし、大手キャリアにもアプローチするというわけだ。UQ mobileはあくまでKDDI傘下のMVNOで、厳密には大手キャリアとはいえないが、P9やHonor 8の存在感が高まれば、Huaweiにとってチャンスが生まれる。実際、かつてY!mobileが「P8 lite」を「LUMIERE」として販売したこともあった。
ブランド戦略についても課題がある。日本ではPシリーズ、Mateシリーズに加え、Honorシリーズを販売している。ミッドレンジではP9の派生機であるP9 liteに加え、廉価モデルのYシリーズやGRシリーズなども取り扱っており、ブランドが乱立している。グローバルでは、他にも2016年9月に開催されたIFAで、ミッドハイモデルの新シリーズである「nova」を立ち上げたばかりだ。一言で言えば、ブランドが乱立している。
AppleであればiPhone、SamsungであればGalaxy、ソニーであればXperiaと、スマートフォンは1社1ブランドが基本。スペックの高低や特徴は、ブランド名の後のアルファベットや数値などで表すのが一般的だ。これによってユーザーは一目でどのクラスの端末かが分かり、メーカーにとっても効率よくブランドを周知させていくことが可能になる。翻ってHuaweiのラインアップを見ると、むしろその逆になっていることが分かる。
関係者の話を聞くと、この原因は、Huaweiの端末企画の方法にありそうだ。先に挙げたように、MateシリーズはGalaxy Note対抗として生まれた。同様にHonorシリーズも、中国で急伸していたXiaomiのシェアを奪う製品として誕生した経緯がある。新ブランドのnovaは、グローバルでシェアを急拡大しているOPPOやVivoをけん制する狙いがあるという。ライバルを意識しすぎるあまり、ブランドの数が肥大化しているというわけだ。販売数を伸ばしている今はこのままでいいのかもしれないが、どこかで方針を転換する必要が出てくるだろう。
日本市場に関しては、おサイフケータイや防水など、比較的ニーズの高い機能をきちんと取り込めていないのも課題になる。呉氏は、かつてドコモから発売された「Ascend D2」を挙げ、「防水、おサイフケータイ、ワンセグに対応していた」と、技術的な障壁はないことを語っていた。一方で、Huaweiの端末がコストパフォーマンスに優れているのは、グローバルモデルからカスタマイズを最小限に抑えているからでもある。このよさを殺さず、日本向けの独自仕様を満たせるかは未知数だ。2017年のHuaweiには、単純な機能進化だけでなく、ローカライズに一歩踏み込むことにも期待したい。
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