従来SIMから何が変わるのか? 「eSIM」の正体を知る(3/3 ページ)
日本でも「iPad Pro(9.7型)」や「dtab Compact d-01J」など、eSIM対応機が増えている。そもそも「eSIM」とは何か。eSIMの狙いや将来性について基礎情報を紹介していきたい。
コンシューマー分野でeSIMはどう活用される?
一方でM2Mとは異なるシナリオがコンシューマー分野だ。前述のようにeSIMはデータ通信を前提とした仕組みであり、スマートフォンなどでの利用を想定していない。そのため、当面のターゲットはタブレットまたはウェアラブルということになる。
ただ、タブレットとウェアラブルでは契約手順が異なり、プル型でユーザー自らが契約情報を入手する点は同様だが、ウェアラブル単体では契約が行えないため、一度スマートフォンやタブレットなどの別のデバイスにペアリングさせた後、そこを通じてウェアラブル内のプロファイルの書き換えを行う形となる。SamsungのGear S2はeSIMを内蔵したウェアラブルデバイスで、この仕組みを通じて契約情報書き換えが行われる。
では、eSIMを使って実際にどのようなサービスが利用できるかといえば、直近での注目はやはり冒頭に挙げたMicrosoftの事例だろう。同社ではまだAlways Connected PCによるサービスの詳細を発表していないが、「既存の契約プランを使ってのPCからデータ通信利用」「On The Goによる必要に応じての適時契約」の2種類をサポートするとしている。特に後者については、Windows Store経由でのデータ通信プラン購入が可能になるなど、海外移動の多い旅行者にとっては大きなメリットとなる可能性が高い。
一方で前者の「既存の契約プランの流用」については、NTTドコモのeSIMサービスにあるように、セカンドデバイスやファミリープランでのデバイス追加といった用途において、ここにAlways Connected PC対応デバイスを組み込む形態を想定していると考えられる。Always Connected PCがどれだけ便利になるかは、対応デバイスや携帯キャリアの対応にかかっており、今後のサービス拡充に期待したい部分でもある。
下記は、SIMカード最大手でeSIMソリューションも提供するGemalto(ジェムアルト)の顧客リストだが、左上にMicrosoftの名前がある点に注目したい。そして地図上に見える携帯キャリアの名前の多くは、MicrosoftがCOMPUTEXで紹介したスライドと重複しており、今回のAlways Connected PCの実現にあたってGemaltoのソリューションが使われていることの証左にもなっている。
GemaltoとMicrosoftのリストともに、日本ではKDDIの名前があることが確認でき、おそらくAlways Connected PCは日本国内ではKDDIのネットワークを利用することになるとみられる。NTTドコモの動向が気になるが、同社が現在提供しているeSIMソリューションはGiesecke & Devrient(G&D)製であり、このあたりの差異がMicrosoftのリストにドコモの名前がなかった理由の1つではないかと推測している。
コンシューマー分野でeSIMが使いやすいかは、人によって意見が分かれるところかもしれない。「海外に行ったら現地に行ってSIMを購入して差し替えたほうがシンプルで分かりやすい」という人もいれば、「煩わしいのでオンラインで適時契約情報を切り替えるようにしてほしい」とeSIMを肯定する人もいるだろう。いずれにせよ、eSIMを便利と感じられるかは契約作業の簡易さやプランの柔軟性による部分が大きく、実際にサービスイン後にあらためて評価したいところだ。
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