MVNOと消費者保護ルール:MVNOの深イイ話(1/3 ページ)
改正された電気通信事業法が施行されて、約1年がたちました。電気通信事業法の消費者保護ルールがMVNOにはどのように適用されているか、MVNOにとっての今後の課題は何か、皆さんにお伝えしようと思います。
2015年5月に改正された電気通信事業法が2016年5月に施行されてから、約1年が経過しました。改正の目的は、電気通信サービスのユーザーが安心して利用できるICT環境を整備することで、消費者保護ルールに関わる改正点も多数盛り込まれています。
今回は、このように進化する電気通信事業法の消費者保護ルールがMVNOに対してどのように適用されているか、MVNOにとっての今後の課題は何か、皆さんにお伝えしようと思います。
改正事業法の消費者保護とMVNO
2015年5月に改正された電気通信事業法の消費者保護に関する大きな変更点は、
- 書面の交付・初期契約解除制度の導入
- 不実告知・事実不告知の禁止
- 勧誘継続行為の禁止
- 代理店に対する指導などの措置
の4点です。順番に見ていきましょう。
1.書面の交付・初期契約解除制度の導入
書面の交付は、契約内容がよく理解されないままに契約すると、後に高額な料金負担が生じる、解約したいのに解約がスムーズに行えない、などのトラブルが生じかねないことから、契約の内容を印刷した紙を発行して手渡すことを義務付けたものです。
ユーザーからの要望があれば、オンラインでの契約内容の表示やPDF形式での送付なども許容されますが、ユーザーが望めば印刷された紙での発行・交付を行わなくてはいけません。主要な通信サービスはほぼ対象となっているルールであり、MVNO各社も法令に基づいた書面の発行・交付を行っています。
もう1つの「初期契約解除」とは、いわゆるクーリングオフに近い制度であり、契約書面の受領後8日以内であれば、理由を問わず一方的に契約を解除できる制度です。初期契約解除が行われた場合、違約金やその他損害賠償を事業者が請求することはできません。なお、事務手数料、初期契約解除までの期間に利用したサービスの対価や、工事費などについては請求できます。
この初期契約解除制度はMVNOも対象となりますが、MVNOの場合は総務省の告示により「期間拘束のある」かつ「データ通信専用サービス」に限られています。期間拘束のないサービスは一般に違約金がなく、いつでも解除可能であること、音声通話可能なSIMカードについてはMNPによるキャッシュバック目当ての乱用が懸念されることから、初期契約解除の対象からは除外されています。
2.不実告知・事実不告知の禁止
不実告知の禁止・事実不告知の禁止は、「誤った情報を伝えて勧誘してはいけない」「正しい情報をあえて隠して勧誘してはいけない」ことを指します。例えば、事実でないにもかかわらず「マンションの管理組合の決議で当マンションの全ての住戸は光回線を○○に乗り換えることになった」というような勧誘を行うことは、不実告知に該当しますし、契約拘束期間や違約金の存在を隠して勧誘することは事実不告知に該当します。
これは民法や消費者契約法といった他の法令で既に定められている、いわば当たり前のルールで、違反者は、電気通信事業法を所管する総務大臣による業務改善命令や行政指導の対象となります。当然、これらの規律はMVNOにも適用となります。
3.勧誘継続行為の禁止
勧誘継続行為の禁止は、消費者が勧誘を断った場合、事業者はその消費者に対して勧誘を続けてはいけないというもので、主に電話や訪問販売といった勧誘方法を対象としたものです。一部のMVNOでは、電話による勧誘や訪問販売といった手法での勧誘しているケースがあるようですが、このルールもMVNOに対して適用されており、消費者が一度勧誘を断ったら、その後MVNOが勧誘を継続することは禁止となります。
4.代理店に対する指導などの措置
代理店に対する指導などの措置とは、代理店の業務が正しく行われるよう、電気通信事業者に監督や指導を義務付けたものです。例えば不実告知・事実不告知の禁止や、勧誘継続行為の禁止などについては、例え携帯ショップやその他販売店(代理店)が勝手に行った場合でも、電気通信事業者の責任が免れるものではない、ということを意味します。
この代理店の指導義務も、MVNOに適用されます。代理店が経営する店舗を持つMVNOや、電話勧誘などの販売方法のために代理店と契約しているMVNOは、その勧誘方法やその他業務が適正に行われていることを監督・指導しなければなりません。
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