毎朝見てたはずなのに……知らない間に変わっていた駅の“アレ” 制作会社「気付かれなくていいんです」(2/2 ページ)
社会の変化で需要が拡大
近年ではフリーフォントや凝ったデザインのフォントも増え、雑誌で特集が組まれるほど。そんな中であえて「読みやすい文字」を作り、駅などに広めているのはなぜか――園田さんによると、その背景には「日本社会の高齢化」があるという。
「読みやすい文字はこれまで、金融や医薬品など、読み間違いが人生を左右しかねない現場で必要とされてきました。しかし、高齢化によってその需要が社会全体に広がってきています」(園田さん)
また、2020年に開かれる東京五輪・パラリンピックも、同社がユニバーサルデザインフォントに注力する一因になっている。増加する訪日客向けに多言語表記が求められるようになり、「誰にでも読みやすい文字」の需要が日本語に限られなくなったからだ。
モリサワはすでに中国語の簡体字や、韓国語(ハングル)のユニバーサルデザインフォントを販売している。新たに、画数の多いアジア圏言語のフォント制作も検討しているという。
本音は「変化に気付かないで」 せっかく作ったのに、なぜ?
だが、いくら読みやすくなったとはいえ、フォントの違いに気付く人はそう多くはないだろう。実際モリサワでも「気付いた人から反響をもらうことはほとんどない」という。ならばなぜ、新しい文字の普及に取り組み続けるのか。
「人は無意識でも文字を“読みにくい”と感じると、足を遠ざけることがあります。読みやすい文字の普及は、そうした文字に関わるネガティブな側面を潰すこと。文字を通して社会貢献するという、モリサワの意義そのものです」(園田さん)
数あるフォントの中でもユニバーサルデザインフォントは、モリサワの自信作。弱視の人でも読みやすいようヒアリングを重ねてその意見を反映したり、「読みやすさ」が自己満足にならないよう実証実験を行ったりと、さまざまな工夫を凝らしている。
しかし、そうした数々の工夫を含めて「本当は、文字の変化なんて気付かれなくていいんです」と園田さんは笑う。
「読みやすい文字というのはストンと頭に入ってきて、どこが変わったとか何が違うとか、そういうことは気にされないものなんです。だからむしろ、気付かれては困る」(園田さん)
こうして今日もどこかで、文字は「ユニバーサルデザイン」に置き換わっている。それこそ私たちの気付かぬうちに、街中が2020年に向けてアップデートしていくのかもしれない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
トランプ政権のサックス氏、AI「ペース調整」論に苦言 「規制がなければできないふりをやめろ」
-
2
なぜ酒蔵の許諾なしに? 「VTuberコラボ日本酒」騒動、主催者が経緯説明 仲介者による調整で「準備進んでいると認識」
-
3
「食事量は1日1200kcal以下、でも肥満」な人を14日間追跡調査 痩せない理由は……米コロンビア大などの研究
-
4
「悪用されそう」─―メルカリ「限定公開」機能、SNSで物議 同社に対策を聞いた
-
5
本物そっくり“AI生成レシート“が経費精算の脅威に マネフォ「自力で見破るのは難しい」 企業はどう備える?
-
6
映画「バックルームズ」が怖くなかったマンガ家、基になったネット都市伝説にハマって本作の楽しみ方を理解する
-
7
AnthropicのアモデイCEO、AI開発の「ペース調整」訴えるエッセイ公開 アルトマン氏とマスク氏も賛同
-
8
農水省の“クソダサ”ポスター話題 「AIよりよっぽど良い」の声も 担当者に狙いを聞いた
-
9
松本デジタル相、24.6万件漏えい可能性について説明 「既知の脆弱性を対応前に悪用」
-
10
「ペンギンを返して」→「3匹全部採用して」 批判殺到のSuica新キャラ、ファンアートが空気を変えた? SNSの声
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR