ちょっと昔のInnovative Tech
“推し”への距離感を間違える「推しすぎ問題」を分析 健全な推し方とは? BTSやVTuberの事例から考える(2/3 ページ)
Aは自身のSNSで「あなたのことを応援している」と書かれた手紙を読むことに恐怖や不安を感じると吐露した。彼女はこの状況を「歪み」と表現し、それを取り除くためにファンレターの受け取りを中止したのである。この決定は、ファンとの健全な距離感を保ち、長期的に活動を続けるための自衛策だったといえる。
次に、同じくVTuberのBの事例を見てみよう。Bは20年8月に活動を休止し、同年11月30日をもって活動を完全に終了した。この背景には、一部の過激なファンによる行動があった。
具体的には「私の言う事を聞いておけばよかったのに」「ここはこうしないと」「チャンネル登録者数を伸ばすためにここいったほうがいい」などの細かい指示や要求を突きつけるファンや、コラボ配信の際に他の出演者に対して「うちのBをお願いします」と過度に干渉するファンの存在があった。
さらに、Bが注意しても「反抗期なんだね、私がいないとダメなんだから」と言い放つファンもいた。これらの行動に対し、Bは最終的に「お前が好きなのは脳内でつくりあげた都合のいい理想のおれか? 日々色んなゲームをして楽しんでいるおれか?」と苦言を呈し、ファンに適切な距離感を保つよう訴えた。この事例は、ファンの理想や期待が度を越すと、推しの活動そのものを脅かす可能性があることを如実に示している。
「少し休みたいと考えることすら悪いことなのでは」 BTSの事例
最後に、世界的に人気のK-POPグループ「BTS」の事例を取り上げる。13年のデビュー以来、BTSは立て続けに記録を打ち立て、世界的な成功を収めてきた。しかし、22年6月、BTSはグループとしての一時活動休止を発表した。
この決定の背景には、成功がもたらした複雑な問題があった。メンバーのRMは活動休止の理由を説明する中で、グループのアイデンティティーの喪失感や、韓国の芸能ビジネスがアーティストに突きつける厳しい要求について言及し「K-popマシーン」と呼ばれる韓国の芸能界のシステムに対する懸念を表明。絶え間ない創作と活動の要求がアーティストに与える負担の大きさを指摘した。
BTSのメンバーたちは、ファンからの期待に応え続けることの難しさも吐露した。「少し休みたいと考えることすら悪いことなのではないかと思うようになった」という発言は、ファンの期待が彼らに与える心理的プレッシャーの大きさを物語っている。
この状況は、アーティストとファンの関係性の難しさを浮き彫りにしている。ファンの支持や期待は、アーティストの成功には不可欠だが、それが度を越すと、アーティストの創造性や精神的健康を脅かす要因となりうる。
BTSの事例は、世界的な成功を収めたアーティストであっても、あるいはそれゆえに、ファンの期待と自身のアイデンティティーの間でバランスを取ることの困難さを示している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Innovative Tech
2019年にスタートした本連載「Innovative Tech」は、世界中の幅広い分野から最先端の研究論文を独自視点で厳選、解説している。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
陸自が「イオンモール熊本」内部をドローン撮影 防衛省が映像公開
-
2
熊本「通れた道」マップ、トヨタが公開 ホンダも「通行実績情報マップ」
-
3
TSMC熊本工場、段階的に通常操業へ 熊本の地震で一時中断、従業員の無事確認 台湾報道
-
4
PayPayアプリで熊本地震への寄付が可能に 最短3ステップ・1円から
-
5
「Xが情報収集に役立たない……」熊本地震で不満の声続出 「Twitterを返して」
-
6
熊本で非常時Wi-Fi「00000JAPAN」発動中 KDDIが無料開放、他社ユーザーも利用可
-
7
「痺れるほどにミスを繰り返す」Gemini 3.6 Flashは変わった? 公開から1週間、当初のおバカ回答を今検証する
-
8
農水省の“クソダサ”ポスター話題 「AIよりよっぽど良い」の声も 担当者に狙いを聞いた
-
9
Anthropicのミュトス、暗号アルゴリズムの新たな攻撃法を発見――耐量子署名「HAWK」の強度を半減
-
10
イオンモール熊本内部の様子も──自衛隊や警察庁、救助活動の動画・写真をSNSで積極発信
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR