小寺信良のIT大作戦
カメラとディスプレイ搭載のAIグラス、「Rokid スマートAIグラス」を試してみた(4/5 ページ)
日常使いには限界が
一方で、日常的な使い方と言われると、はたと困る。例えば「VisionAI」はカメラに写った花を知りたい時には役に立つが、そんなにいつもいつも花の名前を知りたいわけではない。
また日常生活でそんなに山ほどわからないことがあるかというと、そういうこともない……というかそんなにわからないことだらけなら日常生活ができてないだろうということである。例えば急に海外で暮らすことになった、現地語が全然読めない、みたいなケースでは役に立つとは思うが、それは自分にとっての日常生活から離れたということである。
AIグラスでは「AIを日常のものへ」というコンセプトが重要視されるが、日常生活はこれまでもAIなしで回っている。そして日常生活の中心は、主に人間のフィジカルな活動で構成される。手足を持たないAIをそこに足しても、結局動き回れるのは人間しかいないので、余計なことが増えるだけである。家電をAIでコントロールできるようになればまた違うのかもしれないが、それはスマートスピーカーがやろうとしたものの、普及率は大きくない。
もう一つの難点は、グラス上に表示された文字は、人間が動き回っているときには読めないということである。頭部の動きに文字がくっついてくるので、歩きながら、あるいは片付けしながらといった動き回っている状態では、テキストがグラグラして読めない。歩きながら本が読めないのと同じ話である。
むしろそうした使い方をするなら、ディスプレイの文字に頼らず音声読み上げを聞き取ったほうがいい。ただ音声は、重要な部分をもう一度確認したい時に不便である。文字ならその場にとどまっているので、もう一度読むことが可能だが、音声は消えてなくなってしまう。
目と耳から入れる情報の種類をどのように使い分けるのか、そこはまだ完全な解が見つかっていないと感じる。
現時点でのカメラの存在
AIグラスで問題となっているカメラ機能は、写真を撮るためにボタンを押すというアクションがあり、カメラ横にLEDが点灯するので、撮影の有無が把握できる。また動画に関してはLEDが点きっぱなしになるので、録画されているのが相手方にもわかる。Rokidの場合、動画の連続撮影時間は10分に制限されている。
無断撮影は、それを嫌う人々から強制排除や出入り禁止といった強い抵抗に遭うということは想像に難くない。無用なトラブルを避けるために、飲食店や撮影が禁止されているショップなどではAIグラスを外すなど、社会的なコンセンサスが得られるまでは使用者側で配慮したほうがいいだろう。
カメラの用途としては、今のところ写真や動画を撮るとか、ものの名前を教えてくれるほか、紙の論文を写して要約させるといった機能がある。カメラはAIの目として必要とされているが、本格的な脅威はこれからだろう。
例えば顔を見ただけで名前が出てくるみたいな機能を実現するためには、背後に顔のデータベースがなければならないわけだが、そうした顔と名前が紐づけられたデータベースを所有するのは、マイナンバーを所管する官公庁か、Facebookのような実名顔出しSNSを運営するMetaのような一部企業に限られる。
RokidはそうしたSNSを運用しておらず、そうした機能を実現するなら何らかの顔データベースと接続しなければならない。そうした機能の実現性がもっとも高いのはMetaだろうが、Facebook等SNSでの利用規定とAIの利用規定は別になっているので、そのままそれが接続されるわけではない、と思いたい。
一方でAIグラスで撮影した顔に関しては、AI側での利用規定に限られるので、学習に使われる可能性はある。とにかく、カメラ付きAIグラスと何らかの顔データベースが接続される時が、一番警戒すべき瞬間だろう。
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小寺信良のIT大作戦
ベテランのテクノロジーライターである小寺信良さんがIT分野全般にわたって考察する。
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