小寺信良のIT大作戦

議事録も資料もAIが作るなら、人間は何をする? AIエージェントへ舵を切る「Plaud」を試す(1/2 ページ)

 ビジネスシーンにおいて最も活用されているAIサービスが、「文字起こし」ではないだろうか。ビジネスの現場では、物事を進めるのは人と人の話し合いだが、その記録を残すためには文章化は必須である。その元になるのが録音の書き起こしとなる。

 1~2年前まではまだβ版として無料で使えるサービスも幾つかあったが、現在はほとんどが正式サービスとしてローンチしたことで有料化された。中には文字起こし機能がワークスペース的なサービスに統合されるなど、文字起こしを機軸にビジネスツール化する傾向が強まっている。

 AIボイスレコーダーとして知られる米Plaudは、文字起こしAIサービスとハードウェアを一体化させたビジネスを展開している。グローバルの累計ユーザー数は300万人を突破しており、会話の記録とAI活用が一部の先進的なユーザーだけでなく、仕事における「当たり前」になりつつある。個人的にも初代モデルを使用しており、現在全ての取材をPlaudで乗り切っている。

Plaudはグローバルの累計ユーザー数は300万人を突破(発表会資料より)

 PLAUDは10月21日に新製品発表会を開催し、ハードウェア新製品2モデルと、新世代の「Plaud Intelligence」を発表した。これまでPlaudは個人ベースでの購入・利用が主体であったが、昨今ビジネス利用が急速に拡大し、法人での一括導入なども行われているという。

 また昨今AIもエージェント化の傾向が強まり、自然言語による指示で複数の連続したタスクを自動的にこなすようになっている。このような動きを捉え、単なる文字起こしツールからビジネスサポート製品へと転身しようという動きにみえる。

 今回は新製品「Plaud One」のサンプルをご提供いただいているので、すでにサービスインしているPlaud Intelligenceと合わせて、Plaudの最新エコシステムで何ができるのかを試してみたい。

「今の最先端AIの水準」をビジネスマンに提供する「Plaud Intelligence」

 これまでPlaudで文字起こしを行う手順としては、レコーダーで録音したのち、それをスマホアプリのPlaudに転送すると、連動してクラウドへ自動的にアップロードされる。そこでサマリーのテンプレートやAIエンジンの選択を行い、文字起こしとサマリー化を実行させるという手順を踏んでいた。

 完成したサマリーはクラウド上のPlaudサービスに残るが、ローカルで利用するには自分でさまざまなフォーマットにダウンロードする必要があった。効果は高いが、手数が多かったのは事実である。

 これがPlaud Intelligenceになると、録音データのアップロードから書き起こし、サマリー化まで自動的に行う。これまで文字起こしの記録は、単に日付順にリストがずらっと並ぶだけだったが、会話の時系列やイベント、プロジェクト、顧客ごとに整理できる。またこうした情報に応じて、「Plaud Agent」が「PowerPoint」、ドキュメント、Webページを作成する。Plaud Intelligenceが全体の動作プラットフォーム、Plaud Agentが実働部隊ということのようだ。

録音記録はカレンダーとしても管理できる

 こうしたAIによる成果物は「アーティファクト」と呼ばれる。作成した資料や要点は、「Slack」などのメッセージアプリで送信したり、カレンダーにスケジュールとして入力したり、「Notion」のようなサービスと連携して関係者と共有する。相手方クライアントへの議事録送付なども可能だ。

 これらは勝手に行われるわけではなく、「スキル」と呼ばれる自動化アクションを選択して実行させるという手順を踏む。途中途中で確認が求められるので、ユーザーが必要な選択を行うことで、自動化によるミスを防止するというスタイルになっている。

多くの「スキル」が提供される

 今回はオンラインで対談収録した内容をベースに、「コンテンツパック」というスキルを使って、複数の成果物を同時に制作してみた。対談という内容を読み取って、サマリーとしてMarkdownファイルを作成するとともに、字幕データとして.srtファイルを作成してくれた。SRTファイルは動画編集ソフトに読み込むと、タイムコードと連動したタイミングで、字幕として表示される。

「昨日の録音」といったラフな指示でもちゃんと動く
「結果をメールで送って」という指示には、ユーザーの応答を待つ

 発表会では商談終了後の自動処理や、毎朝カレンダーを確認して当日の商談準備を行う例が紹介された。こうした定型業務をルーティン化し、条件に応じて自動実行できる。また利用を重ねていくと、ユーザーの文体や相手に応じたメッセージの傾向などがメモリに蓄積され、個人の仕事の進め方に合わせてAIが進化すると説明された。

 なんでも自動化してしまうわけではなく、Plaudの特徴であった豊富な要約テンプレートを指定することができる。筆者も自分専用の「記者会見用」テンプレートを作っているので、こうしたものも利用できる。

 10月21日の夜に公開されたアップデートでは、スキル動作とファイル転送といった機能は動作しているようだ。それ以降の機能は、今後順次公開されるという。

イヤフォン型として登場した、「Plaud One」

 発表会の目玉となったのが、新しいレコーダーのPlaud Oneである。見た目は普通の完全ワイヤレスイヤフォンとケースだが、イヤフォン部分は通話やオンライン会議を、ケースは対面の会話を録音するレコーダーとなっている。ケースには4つのマイクが仕込まれており、最大5メートルの範囲の会話を集音できる。

イヤフォン型レコーダーの「Plaud One」
ケース側にも録音や再生機能を備える

 10月21日から事前登録が始まっており、価格は4万4000円(税込)となっている。発売日は未定だが、年内の発売を予定している。日本では数量限定での販売となるが、具体的な数は示されなかった。ちなみに普通にスマホとBluetooth接続してのワイヤレスイヤフォンとしても機能する。ノイズキャンセリング機能を搭載し、音楽とかも普通に聴ける。

 ユニークなのは、ケース内にeSIMを内蔵しており、スマートフォンとの接続なしに直接録音ファイルをクラウドにアップロードする点だ。eSIMは契約も不要で、買った時点ですぐに通信できる状態になっている。Plaudサービスへのアクセス専用回線となっており、通信料金は不要だ。世界80以上の国・地域で利用可能だという。日本ではどのキャリアにつながるかは非公開となっているが、おそらく自動的にキャリアを切り替えるタイプのeSIMだと思われる。

eSIMが内蔵されており、通信できる状態で手元に届く

 Plaud Oneは、それ自体が直接Plaud Agentに接続できる。ケースのエージェントボタンを長押しして、「今日の会議をまとめて、チーム向けのフォローアップを作成して」としゃべるだけで、動作を実行する。エージェントは当日の複数の会話を確認し、決定事項や対応事項を整理してフォローアップ文を作成する。

イヤフォンケースからAIエージェントに指示できる

 イヤフォンでは、「Hey Plaud」と呼びかけると、エージェントが起動できる。「次の会議についてブリーフィングして」と指示すると、過去の通話や関連情報を集め、会議前の概要をイヤフォン経由で読み上げる。パソコンやスマホで一生懸命操作することなく、会議の準備ができるわけだ。

 ただ現時点では、Plaud Oneとエージェントの連携機能は動作していない。まだ発売前なので、仕方がないところである。

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